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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第二章
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夕食

 それから時間は流れ、太陽が地平線に身を沈める頃に馬車は夕食のために停車した。

 キナが団員に指示をしながらテキパキと食事の用意を進めていく。


「トト!そろそろ火からミートパイを出してくれ」

「わかった」


 メイヤーの双子の兄であるトトが火からミートパイを取すと、テーブルの上に置いた。

 すると、匂いにつられてアンリとシエラがテーブルの前にやって来た。


「うまそう!」

「一口つまんじゃダメかな?」


 今にも涎を溢しそうな勢いでミートパイを眺める二人に、拳が降り下ろされた。


「「!?」」


 二人が同時に驚いて振り向くと、そこにはキナが仁王立ちしていた。


「働かざる者食うべからず、だ。さっさと料理の手伝いをしろ!」


 アンリとシエラは顔を見合わせると、慌てて食器を並べる係りへと回る。

 そんな、二人を見てキナは苦笑した。


「全く…。お、そうだミートパイをメイヤーに届けなきゃな」


 キナは焼きたてのミートパイを切り分けると、唸る。


 さて、誰に届けてもらうか。

 双子の兄のトトでもいいが、トトは大の妹好きだからきっとメイヤーのカードに魔力を注ぎ込む作業の邪魔をしてしまうに違いない。

 シエラは絶対、つまみ食いをするに決まってる。

 アンリはそんなことしないだろうが、トトが許さないだろう。

 朝森から二人で仲良さそうに出てきたと言う話を聞いただけで主魔法である火でアンリを黒焦げにしようとしたくらいだ。


「どうしたものか…」


 キナが思案していると、目の前にシャロンが通りかかった。


「あ、シャロンでいいか…。おい、シャロン!」


 突然、呼び止められたシャロンは首をかしげた。


「何?」

「これをメイヤーに届けてほしいんだ。たぶん、魔力をカードに注ぎ込んでると思うから邪魔しないように静かに置いてくるんだぞ?」

「了解!大丈夫よ!任せて」


 シャロンはキナからミートパイを預かりニコッと笑ってメイヤーのいる馬車へと向かった。


 シャロンは馬車の前まで来ると、幌を開いて中の様子を確認する。

 すると、メイヤーが馬車の隅で壁にもたれ掛かって深くうなだれていた。


「メイヤー!?」


 シャロンが驚いてメイヤーに駆け寄ると、規則正しい寝息を立てていた。

 ただ、寝ていただけのようだ。


「なんだ…。よかった」


 シャロンが安堵のため息をつくのと同時にメイヤーが目を覚ました。


「シャロン…?」

「あ、おはよう、メイヤー。作業は終わった?」


 シャロンの質問にメイヤーはゆっくり頷いた。


「終わりました。ちょっと魔力使いすぎて眠いですけど…」


 そう言いながらメイヤーの目はウトウトさせている。


「メイヤー、寝る前に少し食べた方がいいよ?」

「…はい、わかってます…」

「…」

「…」

「…メイヤー?」

「…ぐー」

「寝てるし!」


 シャロンは驚いた後、ため息をつく


「しょうがないか…」


 シャロンは近くにあった毛布をメイヤーに掛けてあげた。


「起きたら食べてね」


 聞こえてるかどうかも怪しいが。

 シャロンが馬車を後にして、テーブルの方へ戻ると、すでに夕食が始まっていた。

 シャロンはチコを見つけるとその隣に座り、配られたミートパイを頬張る。


「シャロン、御苦労様。」

「ありがとう」


 チコにリンゴジュースをコップに注いでもらうと一気に飲み干す。


「ふわー!やっぱり美味しい」

「なんかシャロン、飲み方が親父臭いよ?まあ、そんなことはどうでもいいか。今日の見張り番の順番だけど、最初に私とシャロン。で、その後がシェラとアンリなんだけど、大丈夫かな?」

「うん!全然問題ないよ」


 シャロンが笑って答えるとチコは満足そうに頷く。


「よし、作戦通りね」

「え?何か言った?」

「ううん!こっちの話!気にしないで」


 シャロンは首をかしげたが、それ以上気にする事はなくミートパイを食べた。


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