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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第二章
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作戦

 馬車へ戻ると、パンケーキのいい香りが辺りを満たしていた。

 アンリはその匂いを胸一杯に吸い込むと、うっとりとため息をつく。


「パンケーキなんてたまに来る旅人から話を聞いていた位だけど、美味しそうな匂いだな…」

「キナの作るものは何でも美味しいですよ?」


 メイヤーはクスッと笑う。


「お帰り!メイヤー、アンリ!!」


 二人が森から出てきたのに気づいてシエラが駆け寄ってきた。


「うわ!熊じゃん!すげーでかいな!!」


 アンリが担いできた熊を見てシエラは目を輝かせた。


「これは今晩、ミートパイにしてもらわないとな!」

「ミートパイ!!」


 アンリはゴクリと唾を飲み込む。

 ミートパイはアンリの大好物だ。

 アンリたちがそんな話をしていると、一人の青年が近寄ってきて熊を見て満足そうに頷いた。


「これはいいな。いい感じに身がしまってるし」

「キナ!今晩はミートパイにしようぜ!」


 シエラにキナと呼ばれた青年はニカッと笑う。


「だな!今晩は腕によりをかけるぜ!…メイヤー、水ありがとうな」

「いえ、今日は当番ですからお気になさらず」


 メイヤーはバケツをキナに渡す。


「よし、朝ごはんにしよう!アンリ、悪いが熊をこっちまで持ってきてくれないか?」

「わかった」


 アンリはキナと共に食材を積んである馬車へ向かう。


「アンリ!熊を仕留めたんだって?すごいじゃない!」


 そう言って駆け寄ってきたのはチコ。

 その隣にはシャロンもいる。

 シャロンとチコは仲良しになったようで、常に一緒に行動していた。


「違うよ、メイヤーが仕留めたんだ。俺は見てただけ」


 アンリの言葉にチコは顔をしかめる。


「そうなの?シエラが熊を仕留めたって言ってたのに…。全く、シエラの早とちりか。ね?シャロン」

「え、ああ、うん。…そうだ!私、食器並べる手伝いしてくるね」

「え?あ、ちょっと待って!シャロン!!」


 シャロンはチコの制止を聞かずに、足早にその場を離れて行った。


「もう、シャロンってば…。ねえ?アンリ…ってあれ?」


 さっきまで近くにいたのに、アンリもその場から姿を消していた。


「もう、あの二人なんなのよ!」


 チコがぷくーっと頬を膨らませていると、シエラがやって来た。


「どうした、チコ?顔が風船みたいになってんぞ」

「風船じゃない!ていうか熊はメイヤーが仕留めたんじゃない!」

「そうなのか?悪い悪い、アンリが持ってたから。つい」


 シエラは頭を掻きながら笑った。

 そんな、シエラを見てチコは肩を竦める。


「あんたはいつも適当ね…。そんなことはどうでもいいか。ねえ、シャロンとアンリって仲悪いのかな?二人を見てるとお互いなんか、避けてるみたいなんだよね」

「チコもそう思うか?俺もそう思ってる。一緒に旅してるのに仲が悪いなんて…なんか、嫌だよな」


 シエラはそう言うと、チコに笑いかける。


「なあ、俺らで二人の仲を取り持ってやれないかな?」

「え!?仲を取り持つ?」

「うん、やっぱり一緒に旅をするなら楽しい方がいいだろ?アンリってなんか、一人で背負い込んでる気がするし何とかしてやりたいんだ」


 シエラの言葉にチコはちょっと考え込むと頷いた。


「そうだね、アンリには迷惑をかけたしここは借りを返す所だよね!シャロンも大好きだし協力しないわけ無いよ」

「よし、今晩決行な!」

「うん!」


 二人はハイタッチをすると、朝食の席へと戻った。

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