出合い
アンリは目眩がして目を押さえると、シャロンの方を見る。
「起こして悪い」
「うん、別にいいけど…その子誰?」
シャロンはアンリとチコの両方を見比べながら尋ねた。
「この子は…「あたしの名前はチコ・ナターシャ!あんたたち盗賊を討伐しに来たのよ!」
アンリの言葉を遮ってチコが叫ぶように名のる
シャロンは目を丸くした後、アンリの顔を見た。
「え?この子、何?」
「多分、馬鹿なんだと思う」
「あー、そっか」
シャロンは納得したように頷く。
「ちょっと!さっきから何なの!?」
キーッとチコは唸り始める。
「もう!あんたたち二人とも殺してやるんだか「てめぇ!この野郎!!待てって言っただろうが!!」
その言葉と同時にチコの頭に拳が振り降ろされた。
「いったぁぁぁい!!」
チコは悲鳴をあげてうずくまる。
「全く、こいつは…」
自分の拳を擦りながら、仁王立ちでチコを見下ろすのは焚き火の明かりでもわかる目立つ赤毛の少年。
また変な奴来た…!
アンリとシャロンは同時に同じことを思う。
変なものを見るような目で見ている二人に気づいた赤毛の少年は人の良さそうな笑みを浮かべた。
「悪かったな。チコが迷惑かけたみたいで。焚き火が見えるって言ったら、盗賊だって飛び出して行っちまったんだ。怪我しなかったか?」
少年はそう言った後、血まみれのアンリの右腕を見てサッと顔が青ざめる。
「チコ!何怪我を負わせてんだよ!しかも結構深いじゃねーか!!」
「ち、違うよ!あたしじゃないってば!って聞いてるの!?シエラ!」
シエラと呼ばれた少年はあわあわすると、落ち着こうと深呼吸する。
「よ、よし!俺らの馬車に行こう!近くに止めてあるんだ!俺らの仲間に回復魔法ができる奴が居るんだ」
「い、いや…これは…」
訂正しようとしたが、シエラが全く話を聞こうとしないので、アンリはため息をつくとシャロンをそっと地面に立たせた。
「チコ!座長の所に行って、訳を説明してこい!」
「だから、あたしは無実だって!!」
抗議の声を上げたが、シエラに睨まれるとチコは肩を竦めて森の中へと姿を消した。
「本当にすまなかったな。歩けるか?」
シエラの言葉にアンリは頷く。
「俺は平気。だけどシャロンが…」
アンリは心配そうにシャロンの足元を見る。
「なんだ、お前も怪我してるのか?」
「え?あぁ、大丈夫!もう痛くないし!」
シャロンは慌てて、葉っぱで作った包帯を外すと靴に履き替える。
ずっと、歩いてたらまた靴擦れができるだろうが葉っぱよりはましだろう。
「じゃあ、行こう」
シエラに促され、アンリとシャロンは彼らの馬車へと向かう。