疑問
「シャロン…大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないです。私はどうなるんですか?魔族になんてなっちゃったらお母さんも村の人もきっと私の事を嫌いになる…!」
そんなの嫌…!
「落ち着いてください。話にはまだ続きがあるんです」
アンネの言葉にシャロンは涙を拭い、希望に満ちた顔で見つめる。
「なんですか?もしかして呪いを解く方法とかあるんですか?」
「いいえ。ただ、シャロンの呪いはエドウィンがかけようとしたものよりも少し軽くなっているのです。アンリのおかげで」
アンリという名前にシャロンは眉を潜めた。
「どういうことですか?」
「アンリが貴女の呪いを緩和してくれたのです。…呪いの共有魔法、だそうです。魔族にしか使えないとか言っていました」
「呪いの共有魔法…?」
「ええ。共有したことによってシャロンは半魔族にそして、アンリは元々半魔族なので魔族になるのだそうです」
アンネは唇を噛みしめた。
「全ては私の責任です。アンリの訓練で魔力を使わなければエドウィンと少しは対等に戦えた筈なのに…。貴女にもアンリにも重いものを背負わせてしまいました。ごめんなさい」
「…」
シャロンは無言で目を閉じた。
何て言えばいいのかわからなかった。
わからなかったから、シャロンはアンネを抱き締めた。
「…今はいろんなことがありすぎて何て言えばいいのかわからないです。でも、師匠を私は恨んでなんかいません。だから自分を責めないでください」
「ありがとう…」
アンネも抱き返して、かすれた声で礼を言う。
しばらく抱き合った後、シャロンは放れると深呼吸した。
とにかく今は気持ちを切り替えなきゃ。
弱音は全部、胸の中に押し込む。
そして、シャロンはずっと疑問に感じていたことを聞いた。
「師匠、どうしてアンリは私の呪いを半分、受けてくれたのでしょう?」
あったこともない、見ず知らずの自分に命まで賭けて戦ってくれたのにも関わらず、呪いまで受けてくれた。
なんで、そこまでしてくれるのかわからなかった。
「それはアンリに聞いた方がいいですね。アンリは湖に居るはずです。行ってきなさい」
「師匠も来てくれますよね?」
いきなりアンリと二人は心細い。
シャロンはすがるような目で見たが、アンネは首を横に振る。
「私はやることがあります。後から行きますから、先に行きなさい」
しばらくアンネの目を見たが、気持ちが変わらなそうなのでシャロンは仕方なくベッドから降りると、アンネに一礼して外へと出るのであった。