小瓶の魔人
門を潜ると、二人は言葉を失った。
街に入って最初に視界に飛び込んでくるのは街の中心にある子供が好きそうな童話に出てきそうな美しい城。
その城に続く綺麗に整備された石畳の道。
几帳面に積まれたレンガ造りの建物。
今まで立ち寄った街の比べ物にならないくらい整備された美しい街並みだった。
それと同じ様に目を引くのは通りを埋める人の波と箒に跨って空を飛ぶ大勢の人々。
グランファルーゼンの全てに圧倒され二人は惚けてたたずむ。
「ジオーグの街も綺麗だったけどグランファルーゼンはそれ以上だな…。すごいな」
「ヒューディークみたいな田舎から出てきた私には刺激が強いわ…。異世界に迷い込んだみたい。箒で空を飛ぶなんてどんな原理なのかしら?」
「すごい気になるよな。魔力も他の場所に比べて量も多い。ここは魔族の影響ないのかもな」
周りをキョロキョロ見回していたアンリはやがて視線をシャロンの手元に向けた。
「ところで兵士に渡されたそれってなんだろうな?」
「なんか案内とか言ってたけど…どう使えばいいのかしら?」
シャロンは首を傾げると、瓶の中に水が入ってるのに気づいた。
「瓶の蓋開けてみようか」
そう言ってシャロンはコルクで出来た蓋を引っ張った。
“キュポンッ”と音を立てて蓋が開くと瓶が薄青く光出す。
「お?」
光が収まると、瓶の縁にから上半身を出して小さな少女がこちらを見つめていた。
「初めまして。そして、ようこそ。グランファルーゼンへ。ワタシは人造生命体個体番号八番グランファルーゼン案内係です。街の案内はこの八番にお任せください」
八番と名乗る少女は微笑む。
「人造生命体?」
「前に聞いたことあるな…王都で魔力から人間を作り出す研究をしているって…それか?」
「そうです。私達はまだ未完成品でこの瓶の中に入っている液体の中でしか生きられません。もっと研究が進めば人と同じように生きていける日も来ると思います」
八番はそう言って小さな手を宙に伸ばした。