出航
魔導船の中はかなり混雑していたが、アンリはシャロンの手を引きなんとか階段を登り甲板の上に出るとラインとティアが見えるところまで移動した。
「ティア!!ライン!」
二人の姿を確認すると、シャロンが大きな声を上げて手を振る。
二人も見送りの大勢の客たちに紛れないよう、大きく手を振りシャロンに答えた。
「元気で!!」
ティアの言葉にアンリも手を振って応えた。
それと同時に魔導船が震え出す。
「いよいよ、出発だな」
アンリの少し興奮した声にシャロンも頷いた。
「ドキドキするね」
「あぁ」
二人は顔を見合わせて笑う。
「シャロン!!!!」
不意にティアの声では無い自分を呼ぶ女性の声が聞こえ、シャロンが驚いて下を見る。
そこには息を切らせながら、ティアとラインの隣に並ぶティアの姉であるルチルの姿があった。
ルチルは乱れる勢いをなんとか整えると、大きく息を吸う。
「ありがとぉぉぉぉっ!私の…、私の大切な妹を救ってくれて!!!」
「…!」
予想外の言葉にシャロンが言葉を詰まらせる。
「たった…一人しかいない妹を助けてくれてありがとう!!」
ルチルの言葉と同時に魔導船がゆっくりと上昇しだした。
「それから酷いこと言ってごめんなさい!!今度来た時は、貴方達二人を心から歓迎するわ!!!」
肩を震わせて涙を流しているシャロンの肩をアンリが優しく掴む。
「シャロン」
「わかってる」
シャロンは涙を拭うと笑った。
「私の方こそ貴女を傷つけてごめんなさい!!!また来ますね!」
三人が見えなくなるまでアンリとシャロンは手を振り続けた。