最期
信じられなかった。
空気を全て奪う魔法だ、喋ることはおろか呼吸だって絶対に出来ない。
もちろん、他の魔法を打ち消すことだって出来ない。
…はずなのに、この男はやってのけた。
「残念だったな、私に魔法は通じない」
「通じない…?」
この男が一体何を言っているのか、わからない。
この世界に魔法が通じない者などいるはずが…。
そこまで考えて、ミラはある考えに思い至る。
「あなた…まさか…」
「やっと気づいたか?」
フェンネルは鼻で笑うと、動き出す。
「遅かったな、気づくのが!!」
フェンネルが一瞬でミラとの間合いを詰める。
魔法も使っていない者が出せる様な速さなどではない。
ミラが応戦しようと、身構えるがフェンネルの速さに対応できずフェンネルの拳が顎下に入り軽々と吹っ飛ばされた。
「うぐっ…」
床に叩きつけられた衝撃で手から大剣が離れる。
「ふん、自分の剣で最期を迎えるのも悪くないだろう」
フェンネルはそう言って大剣を拾い上げると、ミラの頭を鷲掴みにして無理矢理立たせた。
「なぁ、ミラ・ノーバディ?」
「…っ!」
フェンネルのその声と共にミラは目を大きく見開いた。




