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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第八章
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裁きを

 不意打ちの攻撃は、フェンネルに当たる事無く玉座に突き刺さる。


「…意外と反応がいいんですね」


 ミラはそう言って手を振るうのと同時に巨大な刃を持つ大剣を出した。

 華奢な身体に似合わない武器に、攻撃から逃れたフェンネルが「ほう」と声を上げた。


「随分、似合わない武器だな」

「こっちの方が威力があるから、ね!」


 ミラは叫ぶと一気に間合いを詰め、フェンネルに斬りかかる。

 いや、斬りかかるというより叩き斬ると言った方が正しい。

 フェンネルに振りかざした刃は床にのめり込み、床を破壊したがフェンネルを斬ることはなかった。


「くっ、素早い!」


 ミラが舌打ちをし、自分がさっきまで立っていた場所を見るとそこにはフェンネルが笑みを浮かべていた。

 大剣を使っていても速さが劣る事など無い。

 ずっと戦いの中に身を投じて来た自分にはわかる。


 ミラは床から大剣を引き抜き肩に担ぐ。


「ちょっと油断してみたい。魔法を使う隙を与えなければ勝てるって思ってたけどそうもいかないみたいね」

「魔法など使わなくても貴様に勝てる」

「さぁ?それはどうかしら?私もあんまり魔法は使わないから」


 ミラはもう一度身を躍らせた。

 あの男は必ず始末しなければならない。

 必ず!


『瞬足の加護よ!』


 普段あまり使わない魔法を自分にかけフェンネルにもう一度、先ほどよりも鋭い一閃を振るう。


「ふんっ!」


 だが、それは金属のぶつかる音で塞がられた。

 フェンネルもまた剣を出しこれを受け止める。


「くっ…!」


 ミラは一歩後退してから、剣を振り抜く。

 その度に受け止められ鍔迫り合いを強いられる。


「前はその程度か?」


 フェンネルは挑発すると、一歩身を引きバランスを崩して倒れかかるミラの腹に回し蹴りを見舞う。


「ぐあっ…」


 その一撃は重く、ミラを吹っ飛ばし壁に身体を叩きつけさせた。


「弱い、あまりにも弱くて正直残念だ。何が魔王が道を誤ったら処罰をするだ。笑わせるな」


 ミラは口の中に滲む血を吐き出しながら、剣を杖代わりに立ち上がる。


「私たち一族は魔族の正義を裏から支えてるのよ」


 ミラはフェンネルに手をかざした。


「自分の主魔法なんて大嫌い」


 誰に言うでも無くポツリとつぶやく。


「でも、世界を救えるなら…」


 その時、フェンネルの足元から凄まじい魔力が溢れ出し一気に彼を包み込む。


「なっ!?」


 フェンネルは驚愕の表情でミラを見つめるが、その顔もすぐに湧き出る魔力によって掻き消された。


「私の主魔法は空気を奪うもの。生命が生きるために必要な空気を奪うなんて魔法、私は大嫌いでしょうがなかった。でも…!」


 ミラは涙をこぼして笑うと叫ぶ。


「この人を殺す事しか出来ない魔法で誰かを…大切な人達を救えるならば私はこの魔法を喜んで使うわっ!」


 どんなに素早く動き自分よりも剣の腕が立つフェンネルでも、絶対にこの魔法には敵わない。

 対象の周りの空気を全て奪い、真空にする魔法。

 魔力の消耗は激しいが、この魔法は確実に仕留められる。



「ははっ…!フハハっ!笑わせるなっ!」

「な!?」


 魔力の渦の中からそんな声が聞こえてくるのと同時にミラの主魔法が弾け飛んだ。

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