表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第七章
171/187

最後に

 ラインが大人しくなった事にアンリに感謝する。

 これでラインにちゃんと歌を聴いてもらえる、後は癒しの歌を歌いあげるだけだ。


 歌うごとに身体の中の魔力が失われ泡に変わっていくのがわかる。

 本当にもう最後なのだと、実感した。


 それでも、ティアは歌うことをやめない。


 どんなに苦しくたって怖くたって、全てはラインの光を取り戻すために歌い続ける。


 歌うティアの目から一筋の涙が零れ落ちた。


 

 ごめんなさい、父様。家族を捨てて。


 ごめんなさい、姉様。願いを踏みにじって。


 ごめんなさい、アンリ。こんな事を頼んで。


 ごめんなさい、シャロン。騙すような事をして。


 ごめんなさい、ライン。せっかく目が見えなくても前向きに生きようとしていたのに、その決意を踏みにじって。


 ごめんなさい、こんなわがままな私で。



 ティアは目を開き、アンリに支えられるラインを見て微笑んだ。



 ごめんなさい…。


 その刹那、喉から泡がせり上がってくるのを感じて噎せたがすぐに歌を続ける。

 身体がもう限界だと悲鳴をあげていた。


 お願い、もう少しだけ…!


 必死に願うが無情にも魔力はもう尽きかけている。


 後少しで歌い終わるのに…!


 ガクン、足の力が抜け砂浜に崩れ落ちるが歌はやめない。


 お願いだから、歌わせて…っ!


 もう、足も手も感覚が無い。

 身体の中でプチプチ泡が弾けるような感覚だけが神経を支配していた。

 ついには視界も霞んできた。

 完全に泡になってしまう前に彼を見たいと、ラインに視線を合わせると辛うじてラインの顔を捉えることができた。

     ・・・・・

 ピタリと目が合った。


 ティアはそれに気づいて思わず歌を止めてしまったがもう構わなかった。

 ラインにまた光を見せることが出来たのだから。


「よか、った」


 ティアは泣き笑いをしながらそう呟くと、そのまま後ろへと倒れていく。


 そして、ティアはゆっくりと瞼を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ