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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第一章
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呪い

「私の今回の役目は、人間を魔族にすること。…誰もお前を魔族にするとは言ってない」


 エドウィンはそう言って、シャロンの前に立つ。


「魔族にするならこいつの方が、遥かに面白そうだ」


 エドウィンに見つめられシャロンは石のように固まる。


 目の前で無惨に殺されてしまった…。

 さっきまで話してたのに…。

 この女に殺された…!


「う…ああ…!うわぁぁぁああぁぁああっ!」


 シャロンの絶叫が森にこだまする。


「無様だな」


 エドウィンはそう言い放ってシャロンに手を伸ばす。


 それを見て、アンリはハッとするとボロボロになった身体を無理矢理動かし立ち上がる。


 早くエドウィンを止めなければ…!


 アンリは氷月華を強く握りしめると駆け出した。

 それを見たアンネは自分を拘束する氷を溶かすのをやめて、アンリに向かって手を伸ばす。


『彼に俊足の加護を与えなさい』


 残った魔力を振り絞り、アンリに魔法をかけた。

 身体が急に軽くなった事にアンリは一瞬だけ驚いたが、直ぐに状況をのみ込みエドウィンに向かって飛び上がると剣を高く掲げて振り下げた。


「あぁぁぁぁぁぁっ!」


 渾身の力を込めて振り下ろした剣は、氷の壁によって遮られた。


「くっそ…っ!」


 アンリがギりっと奥歯を噛みしめ、氷を砕こうとさらに力を込める。


「お前の攻撃では私には勝てない」


 エドウィンは振り返らずにそう言うと、シャロンに伸ばしていた手をアンリに向けた。


『目障りだ、吹き飛べ』


 手から放たれた強風によりアンリの身体は宙に舞い、湖の中へと叩き落とされた。

 背後でバシャンとアンリが堕ちる音を聞いた後、エドウィンはシャロンの頭を鷲掴む。


「恨むなら、友を恨め」


 顔を上に向け、無理矢理口を開かせるとコロナの心臓を口の上に掲げた。


「!」


 シャロンはその光景にゾワリと身体が震え上がる。

 エドウィンの手からなんとか逃れようとするが、力が強くて逃れることが出来ない。


 やめて、怖い、嫌だ…!


 口の上にある心臓から滴る血がシャロンの口の中へと流れこむ。


 嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。


 口の中に広がる不快な鉄の味。


 嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!


 さっきまでコロナの中で流れていた血の味。


 嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!!


 シャロンの耳元にエドウィンが唇を近づけた。


『さぁ、他人の運命を贄に生まれ変わるがいい。新たな運命を受け入れよ。我がそれを認めよう』


 刹那、シャロンの心臓が大きく脈打つ。

 カッと目を見開いたシャロンを見てエドウィンは頭を離すと、背を向け歩き出した。


「ひぎぁぁああぁぁぁああああっ!」


 苦しみ悶えるシャロンに目をもくれずに、アンネの前に立つとエドウィンは拘束していた氷を消した。

 アンネはその場に膝をつき、エドウィンを睨む。


「どうしてこんなことを…!」

「全ては自業自得だろう、無様だな」


 エドウィンはそう言ってその場から姿を消した。

 アンネが唇を噛みしめ、シャロンの方を見ると湖に堕ちたアンリが駆け付け抱き起こしているところだった。



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