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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第七章
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出会い

 リースポートから出て二人の元に戻る道中、前にシャロンが羨ましがっていた白い屋敷の前で男が屋敷に背を向けしゃがみ込んで何かをしているのが目に入った。

 あまりにも真剣なので、興味が湧いたアンリは男に気づかれないようにそっと背後に回り覗き込んでみた。

 そして、首を傾げる。


 男は絵を描いていた。


 だが、その絵はお世辞にも上手とは言えない。

 かろうじて、風景画だとわかるが配置などがめちゃくちゃでこれなら小さな子供が描いた方が上手だろう。


「んー…」


 アンリが小さく唸り声を上げた瞬間、男の肩がビクリと震えた。


「だ、誰!?」


 男は叫び声をあげてアンリの方を振り返った。


「ご、ごめん!驚かせるつもりじゃなかったんだけど…」


 アンリは慌てて謝ったが、男の目の焦点が合ってないのに気づき再び首を傾げた。


「お前…目が…」


 そう言いかけてアンリは首を横に振った。


「あぁ、そんな事より本当にごめん。何してるのか気になっただけなんだ。驚かせて悪かった」


 必死に謝るアンリに男は警戒を解いたように肩の力を抜くと、ふわりと笑った。


「こっちも、ごめん。大声なんか出して。…気づいてると思うけど僕、目が見えないから予想外の事があるとすごく驚いちゃって」

「いや、本当ごめん。…絵を描いてるんだな」


 男が許してくれてホッとしたアンリは隣に腰を下ろして再び絵を覗き込んだ。


「海の絵、でいいんだよな?」


 アンリの言葉に男は苦笑して頷く。


「その声。絵が酷いんだね」

「あ、いや!そ、そうじゃなくて!」


 再び慌てふためくアンリに男はクスクス笑う。


「素直に感想言ってもらえて嬉しいんだ。みんな気を使って上手だとか言うからね。…僕の名前はライン・ステア」

「俺はアンリ・ローレンス」

「じゃあ、アンリって呼ばせてもらうね。…やっぱり視力を失って絵を描くのは大変だね」


 ラインはそう言って見えないのに自分の描いた絵をジッと見つめてため息をついた。

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