乱入
「間に合ったかしら…?」
肩で息をしながら現れたのは、アンネ。
シャロンはその姿を見て安堵する。
「師匠…」
「話は後です、シャロン」
アンネはそう言ってコロナが気絶しているのを確認してからエドウィンに向き直る。
「エドウィン…どうして貴方がここに…」
アンネに気づいたエドウィンはアンリから距離を取ると、恭しく頭を下げた。
「これはこれは。ヒューディーク村の守護者様。その節はどうも」
顔を上げて不敵に笑う。
「久しいな」
「何しに来たんですか?」
「つれないな、前はあんなに仲良くしたいたのに」
エドウィンの言葉に一瞬、アンネは悲しそうに顔を歪ませると直ぐに無表情になり、アンリに目を向ける。
「アンリ、彼女は私が相手をします。…怪我はその後に治療しましょう。よく頑張りました」
アンリはガクッと膝をつくと弱々しく頷いた。
「エドウィン、話を聞いてきましたね?ここからは私が相手します」
アンネの言葉にエドウィンは鼻で笑う。
「今のお前に私の相手が務まるとは思わないが?魔力が弱ってるのに勝てる訳がないだろう」
「何故…それを…!」
「さぁ?何故だろうな?」
エドウィンの笑みを見て、アンネはサッと顔の血の気が引く。
「まさか…魔族が…!」
「残念だが無駄話はそこまでだ」
エドウィンがそう言って指を鳴らす。
すると、アンネの足元から凍り付き始め腰まで凍ってしまった。
「お前はそこで大人しくていればいい。今日はお前の相手をしに来た訳じゃない」
エドウィンがそう言い放つのと同時にコロナが目を覚ました。
そして、足を凍らされて身動きの取れないアンネと膝をついているアンリを見てコロナは目を輝かせた。
「さすがエドウィン様!全員を倒すなんて!」
コロナは子犬のようにエドウィンの前に駆け寄ると称賛の声をあげた。
「…」
無言のエドウィンに気にせず背を向けコロナはシャロンの方を見る。
「そろそろお別れね、シャロン。私のために死んで…え?」
コロナは目を見開き自分の胸を見る。
胸からは手が突き抜けており、その手には心臓が掴まれていた。
シャロンもその光景を見て絶句する。
「な、んで…エドウィン、様…?私を魔族に…し…てくれるんじゃ…」
コロナはそこまで言うと、ゴボリと口から血の塊を吐き出し絶命した。
エドウィンはつまらなそうに、コロナから手を引き抜く。
コロナの亡骸はぐしゃっとその場に崩れ倒れた。
エドウィンはまだ暖かい心臓を手に持ったままシャロンの方へと歩み寄る。