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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第七章
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宿

 そんなシャロンの楽しみは一瞬で砕かれる事になる。


「…あう、リースポートの宿が全部埋まってるだなんて」


 二人は早速、片っ端からリースポートの宿を回ってみたのだが全て満室で泊まれる宿が無かったのだ。

 アンリは最後に回った宿の入口前の階段に座り込むと苦笑した。


「よく考えてみれば、一日一往復の魔導船に乗るためにこのリースポートにみんな留まってるんだもんな…。宿が埋まってて当然だよな」


 シャロンはアンリの隣に座るとため息をついた。


「ねぇ、王都に渡るのを諦めてさ、このまま回り道をして行った方が速いんじゃない?」

「残念だけど、一週間待っても王都を渡った方が速いんだよ。ここの地形はほら…こう鍵穴みたいな形になってて…」


 アンリはそう言って鞄から地図を取り出して広げるとシャロンに見せてやる。

 陸はまるで鍵穴の縁のように広がっていてグランファルーゼンは丸くなった部分の中央に浮かんでいる形になっていた。


「ここを突っ切らないと三週間は山道を歩かないと。途中、街とか村とか幾つかあるけど相当キツイよ?」

「はう…。ふかふかの布団…熱々のお風呂…」


 呪文のように未練がましく呟いた後、渋々頷いた。


「そうね、ここで王都に行くのを待った方が楽だね…。うん」

「ま、まぁ、毎日誰かが王都に渡るんだから宿に空きだってすぐに出来るから一週間野宿ではないよ!」


 アンリの言葉にシャロンは少し考えて頷いた。


「そうだよね!よし!明日もここに来よう!」


 シャロンは元気よくそう言うと立ち上がってアンリに手を差し出した。


「じゃあ、アンリ!海に行こう!海!!せっかく来たんだもん!楽しまなきゃ!」


 階段をぴょんぴょんと軽快に降りていくシャロンをアンリは微笑みながら見つめる。

 呪いの事とか魔族の事とか厄介な事ばっかりだが、旅を楽しむようになったシャロンを見ると心が暖かくなるような気がした。


「アンリー!早く!!」

「今行く!」


 アンリは立ち上がると急かしてくるシャロンの元へと駆け下りて行く。


「海に行く前に買い物してからな」

「えー」

「お昼も買わないとお腹空いてるだろ?」

「よし、買い物からだね!」

「調子いいなぁ」


 二人は与えられた一週間という自由な時間を楽しむために市場へと足を運ぶ。

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