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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第六章
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ミルク

「じゃあ、二人は下がってて。ここからはあたしの仕事だからね」


 レラは二人の前に出ると、パンっと力強く両手の平を打ち鳴らし手から鍵の形をした杖を取り出した。

 鍵の装飾部分には青い宝石が埋め込まれている。


「…全く、しばらく見ないうちに大きく太っちゃって」


 レラは軽口を叩くと杖をくるりと回して、目を閉じて呪文を詠唱し始めた。

 その言葉は普段使っている言葉ではないことに気づいたシャロンが首を傾げる。


「あれ…この言葉って…」

「ルーク語だ。ほら、シャロンの腕輪と指輪にもルーク語が刻まれてるだろ?…今では殆ど詠唱では使われないけど、ルーク語は古えの魔法に使うときの言葉だったんだ。俺も初めて聞いた」


 アンリは少しだけ興奮気味に説明をして、レラの後ろ姿を見守る。

 レラが呪文を唱える度に、装飾の宝石が輝きが増していく。

 そして、より一層輝きが強くなるとレラは閉じていた目を開き杖の鍵の部分を地面に突き刺した。


『来い、パラディス…!』


 唱え終わった刹那、空気が震え出したと思うと空間が裂け中からフワフワとした毛を持ち合わせる巨大な生き物が現れた。

 その生き物の一番の特徴はなんと言ってもその豚の鼻だ。


「あれティー!?デカくなってるし!」

「知ってるのか?」

「私、あの子に助けてもらったの」

「違うよ、あの子はティーの母親」


 召喚し終えたレラが訂正をしながらこちらに来ると、シャロンにティーが乗った手を差し出した。


「ほら」

「きゅー!」


 ティーはシャロンの頭の上に飛び乗ると、楽しそうに跳ね始める。


「ちょっと、髪の毛乱れるから!」

「こいつが助けてくれたのか。ありがとうな」

「きゅん!」


 アンリの言葉にティーが胸を張って偉そうに飛び跳ねる。


「ブォォォォォォン!」


 朗らかな空気に包まれていたその場を、ティーの母親であるパラディスの咆哮でピシリと引き締まる。


「ミルクがご立腹だ。悪いね、後はよろしく頼むよ」

「「ミルク!?」」


 二人が唖然とする中、ミルクと呼ばれたパラディスは大きな声で咆哮を上げると“淀み”へと突っ込んでいくと物凄い勢いで鼻から吸い上げていく。


「あれを食べて大丈夫なのか?」

「大丈夫。パラディスはああやって“淀み”を浄化してくれてるんだよ」

「て言うか、名前がミルクなの!?ミルクって感じじゃないよね!?」


 シャロンの言葉が聞こえてたのか、ミルクがギロッと睨んできたが直ぐにそっぽを向いて“淀み”を喰らい続ける。


「あの子は親父がミルクってつけたんだ。で、ティーは母親がミルクだからティーにしたんだって」

「ミルクとティー…」

「ミルクティーね」


 アンリとシャロンが呆れた顔をする中、レラだけがゲラゲラ笑っている。


「本当にうちの親父センスないよねー!」


 名前で馬鹿にされながらもミルクはひたすら“淀み”を食っていく。

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