対面
グリノリアと別れた、アンリ達は“淀み”の元へとレラの案内で向かっていた。
本来なら、レラの一族であるノーバディでしかわからない“淀み”の気配を何故か感じ取ることが出来るアンリは背中に冷たい汗を一筋流した。
この先に間違いなく“淀み”はある。
「近いな」
その言葉にレラが感心したように頷くと、アンリの方を見て笑う。
「本当にわかるんだね。貴重な存在だよ」
「そうか?…そんなこと言われたのは初めてだな」
と言っても、他人とこんなに関わる事なんてほとんど無かったからなんだが。
「二人ともすごいねー。私なんか全然わからないよ」
二人の後ろを歩いていたシャロンの言葉にレラはアハハっと笑い声を上げた。
「まぁ、それが普通なんだけどね」
そこでアンリとレラは立ち止まると、真顔でシャロンの方を見る。
「ん?何?」
きょとん、とするシャロンに二人はズビシッと指をさす。
「「絶対、俺より前に出るなよ」」
二人の釘を刺されてぷくーっと頬を膨らませ、反論しようとしたが結局前に出ても足を引っ張るだけなのでやめた。
前科もあるし言っても多分論破されてしまう。
シャロンはため息をついて、渋々頷いた。
「わかったわよっ!大丈夫よ!ちゃーんと後ろにいます!」
「後、俺の目の届く範囲内にいてね」
「くっ…!」
アンリがあまりにも真剣な表情なので、シャロンは悔しそうな顔をするがガックシと項垂れる。
「目の届く範囲内にいます…」
「いやぁ…あんたら本当に面白いわぁ」
レラはそんな事を言いながら、さっきまで向かっていた方向を見てニヤリと笑う。
「…無駄話してたら向こうから来たね」
アンリもそちらの方を見て、思わず吐き気が込み上げてきた。
木々の間からいつの間にか黒くでドロドロしたものがこちらに向かって流れてきていた。
「“淀み”…」
アンリはゴクリと唾を飲み込んだ。