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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第一章
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叫び

 シャロンは飛び出してきたコロナに抵抗する間もなく、首を捕まれそのまま押し倒されてしまった。


「げほっ…。コロナ…!」


 首を掴む手にコロナは容赦なく力を込める。


「これ以上、私の邪魔するなっ!」


 さらに込められる手の力。

 シャロンは必死に口を開けて空気を取り込もうともがく。

 コロナの手に自分の手を重ねて爪はを立てた。

 爪はコロナの手の皮膚を突き破り、血を溢れさせるが力は緩まない。


 アンリがそれを見て助けにいこうと駆け出す。

 が、その前に大きな氷の塊が吹っ飛んできた。


「お前にそんな余裕があると思うなっ!」


 エドウィンの叫び声と共に背後から鎌が振り下ろされた。

 アンリは横に飛び退き、回避する。


『堕ちろ!落雷!!』


 アンリの呪文でエドウィンに目掛けて雷が堕ちる。


『雷を包み込め、水』


 エドウィンの声に応じて、頭上に水の玉が現れると雷を吸収し雷を帯びた水の球体となった。


「くれてやる、アンリ」


 エドウィンが指をさすと、水の玉はアンリへと飛んでいきその場で弾けた。


「ぐっ、ぎゃああぁぁぁぁっ!」


 電流がすさまじい勢いで身体を突き抜ける。

 アンリはその場にうずくまり悶え苦しむ。


「弱いな。こんなので本当に…」


 エドウィンは眉を潜めた。

 その刹那、剣の先が顔目掛けて突きだしてきた。


「!?」


 エドウィンが飛び退くのと同時にアンリが飛び起きる。


「…良く立ち上がれるな」

「あいにく、こういう訓練はなれてるんだ」


 軽口を叩いて見たものの身体はかなりダメージを受けている。


 これ以上やれば確実に死ぬ。

 彼女も助けないといけないのにどうする…?


 アンリの背中に冷たい物が流れた。


 シャロンは目に涙をうかべて咳き込みながら、残っている力を振り絞りコロナの顔面を拳で殴り付けた。


「ぎゃっ!」


 短い悲鳴を上げて怯んだ隙に、コロナを押し退けた。

 シャロンはむせながら起き上がりコロナを睨む。


「げほっ、げほっ…!どうして、こんなことを…!そこまでして私を殺したいの!?」

「シャロンだけじゃない」


 コロナはそう言って鼻から流れる血を拭う。


「ヒューディーク村の奴ら全員殺す。私の両親を殺したお前たち全員殺すわ!!魔族になって十六年前の悪夢をもう一度お前らに見せてやる!!!」


 コロナの復讐にぎらつく瞳にシャロンはゾッとする。


「コロナの両親はコロナを置いて出ていったんじゃないの?」

「そんなの嘘に決まってるじゃない!!!私の両親は私を愛してくれてたもの!ほかの村に逃げるっていう選択肢があれば私と一緒に逃げてたわよ!でも、それが出来なかった。なんでだかわかるか!?英雄の娘!!!」


 血を吐くような叫びにシャロンは後ずさり首を横に振る。


「あんたたちに余所者は死ね!って言われ続けたからだよ!!避けられ続けたからだよ!!!こんなことされて、他の村に行ってまた同じことされたらって考えたら逃げることも出来なかった。だから心も体も疲れきった父さんと母さんは、自殺したのよ!私を置いて!!!」

「う、そ…」

「嘘なもんか!!!家で首を括って自殺したのよ!!その時に誓った!絶対に私がこの村の奴等を全員殺してやるって!!!あんた達の望み通り本当に魔族になって八つ裂きにしてやる!!!全員殺してやる!!!」


 コロナが強く地面を踏みしめた瞬間、シャロンの足元から土で出来た手が現れ足首を掴んだ。

 コロナの主魔法だ。

 そのままシャロンはバランスを崩し、その場に尻餅をつく。


「父さんと母さんの苦しみはこんなんじゃない…。殺してやる。それにあんたはいつも私と一緒にいたけど、本当は周りにいい子だと思われたくて一緒にいたんでしょ?」

「ち、違う…!」

「私、知ってるのよ?周りの大人が私といるシャロンを見て優しいとか、心が広いだとか言ってるのを。それが聞きたくて一緒にいたんでしょ!?」

「違う!私は本当にコロナが心配で…、」

「綺麗事はもうたくさん!!!私はあんたの評価を上げる道具じゃない!死ねぇええええぇっ!」


 コロナが持っていたナイフをシャロンの目掛けて振り下ろす。

 あと少しで届く、そんな時。

 一陣の風がコロナを襲いぶっ飛ばした。

 シャロンは驚いて振り返った。

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