目覚め
ソラの声に導かれて、アンリはゆっくり目を覚ました。
「…う、眩しい」
部屋に灯された炎の光に目を眩ませながら、アンリは小さく不満を漏らす。
そんなアンリの声に、ベッドの横で魔族について書かれている本を読んでいたシャロンがホッとしたような表情をすると椅子から立ち上がりベッドの上にいるアンリの顔を覗き込んだ。
「アンリ…やっと目を覚ました」
「シャロン…ごめん、また迷惑かけたな」
その言葉にシャロンは首を横に振ると、再び椅子に腰掛けた。
「そんなこと無いわよ。レラの話だと魔力の使いすぎと過労だって。…アンリ、私の看病とかでろくに休めなかったから当然よね。私の方こそ迷惑かけてごめんね。それから、ありがとう」
「いや、さっきも言ったけどシャロンが無事で本当に良かった」
アンリは身体を起こすと、シャロンと目線を合わせて笑う。
シャロンが倒れた時は本当にどうなるかと思ったが、元気になって本当に良かった。
「うん、レラのお陰ね。…ところで私たちがドワーフに囲まれてたのはさっきの話じゃ無いのよ?」
「ん?というと?」
「あれから二日時間が経過してる」
その言葉にアンリは目を丸くした。
「俺はまたそんなに寝てたのか!?」
「うん、レラの話だと魔力の回復に手間取ったみたい。魔力を回復する時って魔族は無意識に土地の魔力を吸収したりとかするみたいなんだけど、ここの土地は魔力が少なくなって来てるから時間が掛かったんだろうって」
「そう、なのか…」
急ぐ旅なのに何度も眠り込んでしまって、シャロンの足を引っ張ってしまっている気がする。
そう思うと、憂鬱な気になってアンリは重い溜息をついた。
「大丈夫?具合まだ、悪い?」
心配そうに聞いてくるシャロンにアンリは首を横に振った。
「大丈夫、具合はいいよ」
そんな時、扉叩く音と共に扉が開きレラとグリノリアが中に入ってきた。
「アンリ!?目が覚めたのね!」
グリノリアは嬉しそうに言うと、アンリの前まで来てその手を握りしめる。
「貴方が私の背中を押してくれたから、みんなの気持ちを変えることが出来たわ。ありがとう」
「俺は何にもしてない。頑張ったのはグリノリアだろ?」
「そんな事無いわ」
グリノリアの感謝の気持ちにアンリは少し照れくさそうに笑うと、部屋を眺めた。
「ここはドワーフ達が暮らす部屋なのか?」
土を削って作られた簡素な造りの部屋。
グリノリアは頷く。
「はい、ここは私たちの居住区だもの。この部屋はお客様用よ?ベッドの寝心地いいでしょう?まるで地面の上に寝てるみたいで!」
グリノリアの言う通り、ベッドなのにゴツゴツしていて地面に直接寝ているようだった。
…正直言って、寝心地は最悪に悪い。
「そうだな」
素直にそんな事も言えないので、アンリは笑って誤魔化すことにした。
それに気づいているのか、レラはニヤニヤ笑っているがシャロンの手に握られている本を見て直ぐに表情を引き締めた。
「アンリ、回復して良かった。…それで、アンリとシャロンに話があるんだよねぇ。それも真面目な話」
アンリとシャロンは顔を見合わせると、心当たりが無いと首をかしげてレラの方を見た。