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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第六章
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ソラ

【君は無茶ばかりするのね】


 優しい声と共に冷たい手が頬を撫でる感覚に、アンリが目を覚ますと自分を覗き込む、青空を思わせる美しい瞳と目が合った。

 以前、どこかで会った気がする。


「あんたは確か…」


 まだはっきりしない思考を巡らせ記憶の糸を手繰り、ようやく思い出す。

 リラースタンで死にかけた時に出会った少女だ。

 てことは…。


「俺はまた死にかけたのか」


 アンリが起き上がってため息をつくと、少女は長く白い髪を左右に振ってそれを否定した。


【違うわ。ただの過労と魔力の使いすぎね】

「なんだ…お前は死神だと思ってたから、死にかけたのかと思った」

【失礼ね。死神だなんて初めて言われたわ】


 少女はプクーッと頬を膨らませる。

 アンリは苦笑すると「ごめん」と謝り周りを見回す。


「やっぱりここは相変わらず真っ暗なんだな」

【ええ。だってここは、意識の底の底だもの。ここには光は届かない】

「こんな所にお前はずっといるのか?」

【まさか、ここは君の意識の中よ?私はずっとここにいるわけじゃないけど…。そうね、でも私がいる所もここと似た様な所ね】

「寂しくないのか?」

【どれくらここにいるかわからないけど、さすがに慣れたわ。最初から人なんて来ないもの。…君は別だけどね。この前ので私達には繋がりができたみたい】


 少女はクスクス笑うと手を叩いた。


【そういえば、望みは見つかった?アンリ・ローレンス?】


 その質問に“またか”とアンリは内心うんざりしたが、顔には出さずに肩を竦めた。


「そんなこと言われても、すぐに見つからないよ」

【決めておいてって言ったのに】

「理不尽だな。…あ、でも一つだけ決めた事があるんだ」

【何?】

「あんたの名前」

【私の、名前…?】


 鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をする少女にアンリは満面の笑みを浮かべた。


「そう、名前が無いと呼ぶのが大変だろ?だから“ソラ“なんてどうだ?」

【ソラ?…なんで?】

「その瞳が青空みたいに綺麗だから」


 唖然とする少女にアンリは不安そうな顔をする。


「気に入らないか?」


 少女は呆れた様な顔をして首を横に振る。


【…安直過ぎて、呆れてるの。でも、まあ…うん、ソラでいいわ】


 少女…ソラは泣きそうな顔して笑う。


【こんな私に名前をつけるなんて、あの人と同じね】

「え?」


 ソラの言葉を聞き返そうとしたが、突然視界が白くぼやけてきた。


「あの人って一体…」

【さあ、もう目を覚ます時間よ。君には待ってる人がいるんだから】


 その一言で、完全にアンリの視界が真っ白に染まった。

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