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「んー、魔力はあの魔石から感じる…ってことは、探す魔力の対象を間違えたみたい」
レラは申し訳なさそうな顔をした。
「ごめん」
「ううん、アンリと会ったことないんだもの。仕方ないわ。気を取り直してもう一度探そう」
シャロンは笑ってそう言うと引き返そうと、祭壇に背を向け顔を引きつらせた。
シャロンの異変にレラは不思議そうな顔をして、自分も振り返り納得した。
そこにはいつの間にか多くのドワーフが入って来た入り口を塞ぐように並んで立っていた。
「さっきの奴ら仲間にあたし達が脱走したのを知らせちゃったか…」
レラの言葉を聞きながらシャロンは険しい顔をすると一歩前に出る。
「シャロン?」
「…」
レラの問いかけにシャロンは答えない。
その代わりにドワーフ達のリーダーだと思われる人物が声をあげた。
「ここに逃げ込むとは…。やはりファラ様はお前らを御求めのようだ。…今ここで儀式を行う!!捕らえよ!!」
その一言でドワーフ達が一斉にシャロン達へと走り込んできた。
「邪魔するな!!」
シャロンが怒鳴るのと同時にドワーフ達の前に雷が落ちる。
それはシャロンの主魔法だ。
「レラ、ここは私が何とかする。だから、貴女は逃げて?ここまで貴女を巻き込めないわ」
シャロンはそう言って雷に驚き、立ち尽くすドワーフ達にもう一度威嚇のための雷を落とした。
「行って、レラ!!」
シャロンはレラを見ずに叫ぶと、雷のショックから立ち直りこちらに向かってくるドワーフと戦うために自分も彼らに向かって走り出す。
そんなシャロンを見てレラはため息をついた。
「全く…」
レラはドワーフに囲まれ魔法と体術で応戦するシャロンの近くまで来ると、ドワーフを押し退けて彼女の腕を掴んだ。
「えっ?ちょ、ちょっと!!」
突然の事に驚くシャロンに構わず、レラはシャロンの前に立つと手をドワーフ達の方へと広げた。
「あたしがいいって言うまで動かないでねー」
レラがそう言うのと同時に突然、ドワーフ達が地面に倒れ込んだ。
その光景にシャロンは息を飲む。
皆、上から何かに押さえつけられているようで立とうともがくが全く立てずに、少し身を起こすと地面に再び張り付いてしまう。
その威力は自分の身体の重みに耐えられずに地面にヒビが入るほどだ。
「これって…」
「ん、あたしの主魔法。重力操作があたしの魔法なんだ」
レラは額に汗を浮かべならちょっと、得意気に笑った。
「だから、言ったでしょ?あんたが気に入っちゃったってさー!」