魔力を頼りに
「まだ着かないのか?」
アンリの質問にグリノリアは頷いた。
「牢は奥の方だから…。それに見つからないように進んでるとどうしても遠回りになっちゃうし」
グリノリアは用心深く周囲の通路を見ながらそう言って近くの壁にかかっていたローブを手に取るとアンリに差し出した。
「これを着て。ここから先は少し人通りがあるの。それを着てフードを被ればそれなりにドワーフに見えるでしょ?」
アンリは言われるがままにローブを身に纏いフードを被ると土の匂いがふわりとした。
作業中に着ている物なのだろう。
裾が解れボロボロになっている。
「これがなくなってドワーフ困らないか?」
「大丈夫。ドワーフってそこら辺に物を置いて誰の物でも勝手に使っちゃうの。自分の工具さえあれば問題無いのよ…さ、こっちよ」
グリノリアに促され突き当たりの道を右に曲がると直ぐにアンリはハッとした顔をして立ち止まる。
それに気づいたグリノリアも立ち止まると怪訝そうな顔をした。
「…アンリ?どうかした?」
アンリは視線を宙に漂わせて、何かを探す。
「感じるんだ…。シャロンの魔力を…あっちだ!」
アンリは突き当たりを左の方へと走り出す。
「待って!そっちは牢とは逆方向よ!待ってってば!!…もう!」
グリノリアは地団駄を踏むとアンリを追いかける。
―その頃、シャロンはレラの案内でアンリの元へと急いでいた。
「こっちの方からかなり強い魔力を感じるねぇ」
「ドワーフは魔力なんて無いからきっとアンリよ!!」
シャロンは嬉しそうに言うと早く行こうと、レラの背中を軽く叩く。
「早く早く!見つかっちゃう!」
「さっきから何人か会ってるけど片っ端から気絶してるじゃんー」
「そりゃあ、そうだけど…」
シャロンは肩を竦める。
「ま、あんたの事気に入っちゃったから最後まで付き合うよ」
「レラって結構いい人ね」
「よく言われる」
ニヤッと笑うと通路の奥にある模様が掘られた門を指をさす。
「ほら、あそこにアンリはいる」
「本当!?」
「間違いない。あそこから魔力を感じる」
シャロンはレラの手を掴むと指差された場所へと走り門の中へと飛び込び、中のものを見て固まる。
「なに…これ…」
「ありゃりゃ…間違えたかな?」
二人の目の前には巨大な祭壇があり、祭壇の頂上には大きな魔石が飾られていた。