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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第六章
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目的の場所へ

 アンリはグリノリアの案内でファラの生け贄にされる者の牢獄へと急ぐ。

 

 

 きっとそこにシャロンがいるはずだ。

 早く助け出さなければ。


 そんなことを考えていると、曲がり角で他のドワーフがいないか確認していたグリノリアがこちらを見て不思議そうな顔をしていた。


「ん?なんかあったか?」

「あ、特には無いんだけど…。やっぱり魔法ってすごいんだなって。…アンリの茶色かった瞳が今は私たちと同じ灰色だから」


 グリノリアの言葉にアンリは苦笑した。


「魔法で何でも出来るって訳じゃないけどな」


 ジオーグでもこうやって目を黄色に変えて自分が魔族であると示した。

 まさか、ここでドワーフに変装するとは思わなかったが。


「でも、便利だよね。…まあ、一時的に誤魔化せるくらいだからなるべく皆がいないところを通らないとね」


 そう言いながら、グリノリアは周りに誰もいないことを確認してからアンリの手を引いて細い通路へと入る。


「少し遠回りだけど、この道はあんまり使わないからここから行こう」

「わかった」


 とにかく無事でいてくれればいい。

 あんな状態で牢獄に入れられてしまったら様態が急変してもおかしくはない。


「…シャロン、無事でいろよな」


 アンリは不安そうに呟いた。





 同時刻、ドワーフの男二人が、生け贄が収容されている牢獄へと見回りのために向かっていた。

 

「あーぁ、見回りなんかめんどくせぇーな。一週間前に捕らえた魔族は魔族の癖に全然逃げようとしないし、見回る必要なんか無いんじゃないか?」

「まぁまぁ、そう言わずに。定期的に見回るって皆で決めたじゃないですか」

「皆って言ってもお偉いさん方がな。こういうのは全部下っ端がやるはめになるんだ。たまには上がやりゃあいいのに」


 先輩ドワーフの言葉に若いドワーフは反応に困って取り合えず、苦笑する。


「でもさっき捕まえた人間だって死にかけてたし、生け贄が死んでしまってはファラも怒ってしまうんじゃないんですか?」

「だからって病気の奴を死なすなって言う方が難しいだろ」

「まあ、そうですけどね「ひ、ぎゃあああああっ!」


 会話を遮るように女の悲鳴が牢屋の方から上がる。

 二人は顔をみあわせると、慌てて牢屋へと走り出す。

 牢屋の前まで来ると中で魔族の女が苦しそうにのたうち回る姿が目に飛び込んだ。


「おい!どうした!?」



 若いドワーフが叫ぶが魔族はただのたうち回るだけでなにも答えない。

 そこから少し離れたところには、人間の女がうつ伏せに倒れピクリとも動いていない。


 まさかなにか恐ろしい病気だったのか!?


 若いドワーフは直ぐに持っていた鍵で牢を開け放つ。


「おい!何してる!?」

「助けるんですよ!!神様の捧げ物がこれ以上死んだら俺らに被害があるかもしれないんですよ!?」


 若いドワーフの剣幕に先輩ドワーフはため息をつき、頷くと二人で牢の中へと飛び込む。

 魔族に駆け寄り、若いドワーフは助け起こそうと身を屈めた刹那「おい!」と、先輩ドワーフの怒声に驚いて横を向くと、さっきまで倒れていた女が立ち上がり自分に向かって拳を突き出しているところだった。

 驚いて瞬きをした次の瞬間には視界一杯に拳が迫ってきたと思った瞬間、若いドワーフは強い衝撃と共に意識を失った。


 シャロンは渾身の力でドワーフをぶん殴ると、怯んで立ちすくんでいるもう一人のドワーフに間髪入れずに回し蹴りを食らわせた。

 ドワーフは壁に叩きつけられそのまま気絶をした。

 そこまで見届けると、シャロンは肩の力を抜いてため息をつく。


「う、うまくいった…」

「お見事!いやぁ、かっこよかったよ」

「ありがとう…」


 魔法が使えなくなったときの為にアンリに格闘技を少し教えてもらっておいてよかった。


「よし!アンリを探さないと!!レラお願い!」

「はいはい、魔力を探せばいいんだよね?じゃ、あたしに着いてきてね」

「わかった!」


 シャロンは頷くとレラと共に牢獄から抜け出すとアンリの魔力を頼りに走り出した。

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