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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第一章
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抵抗

「じゃあ、エドウィン様。お願いします」


 コロナの言葉にエドウィンは頷くと、鎌を取りだしてシャロンの前に立った。


「では、儀式を始めるか」


 エドウィンの言葉にシャロンは目を閉じる。


 戦わなきゃ…。


 シャロンはぎゅっと手を握りしめた。



 このまま死ぬなんて嫌だ。まだ、やりたいことがたくさんあるんだ!!



 カッと目を見開いたシャロンは己の主魔法である雷を放った。

 それに驚き、エドウィンが飛び退けた。


「わ、私は守護者になりたくて魔法を習ってるのよ!舐めないで!!!」


 シャロンはありったけの勇気を振り絞り怒鳴るとユエルスをブレスレットから弓に変えた。

 それを見てコロナは笑う。


「それって、シャロンの魔具?かっこいいね。シャロンが死んだらそれちょーだい?」


 その言葉にシャロンは奥歯を噛み締めた。


「コロナにこれを渡すわけにはいかない。これは私の大切な物だから!」


 弓を構えるシャロン。

 エドウィンはめんどくさそうにコロナを見る。

 コロナは楽しそうに首をかしげる。


「さて、どうしましょうか?」

「黙らせるしかないだろう」

「そうですね」


 二人の会話にゾッとするシャロン。


 二人で戦う気なんだ。

 コロナは本当に自分を殺す気なんだ…。

 目に涙が滲む。

 でも、死にたくなんかない。


 その思いに反応するかのように指輪の石が輝き雷の弓矢が装填される。

 シャロンは小さく息を吐き出すと、エドウィンに向かって弓を放つ。

 それが合図のように、二人が動き出す。

 コロナは短刀を取り出すと、シャロンに向かって走り出す。




 コロナに怪我をさせないようにしなきゃ…!



『木の根よ、動きを封じ込め!!』


 シャロンの呪文によって木の根が、コロナの足元から地面を割って突き出ると動きを拘束する。


 これで大人しくしてくれれば…。


『目障りよ。燃え盛る炎によって灰になりなさい』


 シャロンの願いも虚しく、木の根はコロナによって灰に変えられてしまった。


「…そんな、どうして…」


 どうして、自分と戦うの?


「余所見してる余裕がお前にあるのか?」

「!?…っ!」


 シャロンはハッとして後ろを振り返ると、エドウィンが今まさに鎌を降り下ろそうとしている所だった。


『氷よ!壁を作りなさい!!』


 とっさに氷で壁を作ったお陰て、エドウィンの攻撃はなんとか免れた。

 しかし、とっさに作った氷の壁はエドウィンの鎌によって粉々に砕かれた。



 どうしよう…!



 どうすれば勝てるのか全然わからない。

 シャロンがそんなことを考えている間にも、二人の攻撃の手は緩まない。


『木の葉よ!その女を斬り刻みなさい』


 コロナの冷たい声に応じて、木の葉が風もなく舞い上がり一枚一枚が鋭い刃の如くシャロンの皮膚を切り裂く。


「…っ!」


 振り払うことも出来ずに、その場に座り込むシャロンにエドウィンは手を翳す。

 すると、手から氷の塊が出てきてシャロンの胸部に放たれた。

 ろくに避けることが出来なかったシャロンはその場に叩きつけられ血を吐き出す。


「もう終わり?」


 ぐったりと横たわるシャロンを靴の先で突っつきながらコロナが声をかける。


「やっと大人しくなったか」


 エドウィンは鎌をブンッと一振りすると構えた。


「始めるぞ」

「はいっ!」


 シャロンは辛そうに息を吐きながら、涙を溢す。


 殺されちゃう、死にたくないし、どうしてこうなってしまったのかコロナに問い質したい。


 ずっと親友だったじゃないか。

 辛いとき支え会っていたじゃないか…。

 それも全部独りよがりだったの…?


「な、んで…。やだ、死にたくな、い…。コロナ…」


 そして、シャロンは目を閉じた。

 暗闇の中でブンッと鎌が空を斬る音が響く。



 ああ、死ぬ。



 シャロンはなす術もなく、死を受け入れる覚悟をした。

 鎌がそろそろ首に到達するであろうその刹那、キィィンっと金属が固いものに当たる音が辺りに鳴り響く。

 シャロンが驚いて目を開けるのと、同時に身体がフワリと浮いた。


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