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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第六章
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穢れ

 黒い物体に近づいて気づいた。

 あれは、腐敗した魔力の塊だ。

 だから、シャロンにはわからなかったのだ。


「何であんなものがこんなところにあるんだ?」


 腐敗した魔力が漂ってる何て話聞いたことない。

 魔族が魔力を集めてるのと何か関係があるのだろうか?


 アンリが物思いに耽っていると、掴んでいたシャロンの手がスルリと己の手から放れた。

 驚いて立ち止まり振り返ると、シャロンが倒れていた。


「シャロン!?どうした!?大丈夫か?」


 慌てて駆け寄り、抱き上げるとシャロンは苦しそうに息をしながら苦笑した。


「…ごめん、なんか…足に力が入らなくて…。しかも目眩までするし…」


 シャロンの額に触れるとかなり熱い。


「熱があるみたいだな。立てるか?」

「う…ん、多分ね」


 シャロンはアンリに手を貸してもらいながら、ゆっくり立ち上がるが直ぐにその場に崩れ倒れた。

 アンリはもう一度、立たせると直ぐに倒れる前にシャロンを背負った。


「よし、安全な場所までちょっとこの体勢は辛いと思うけど我慢してくれよな?」

「ごめん…」


 アンリは頷いて歩き出す。

 あの魔力の気配が無くなるところまで行かないと。

 移動している間、背中越しに感じるシャロンの熱がどんどん上がっていくのがよくわかる。

 きっと、あの腐敗した魔力のせいだ。


 もっと強くシャロンを引き留めていれば…!


 アンリは悔しそうに唇を噛んだ。

 しばらくして、小さな洞穴を見つけたアンリはその中へと入り安全を確認してからシャロンをその場に寝かせた。


「大丈夫か?」

「うん…。ごめんね、アンリ…。ちゃんと忠告を聞いてたら、こんなことにはならなかった…のに」


 アンリは首を横に振って、シャロンの額を優しく撫でた。


「俺の方こそ、ごめんな」


 シャロンはゆっくり頷くと、目をとろんとさせてそれから直ぐに眠りについた。

 アンリは洞穴に守りの魔法をかけると、シャロンの為に薬草集めに向かう。


 洞穴に帰ってくると、直ぐに魔法薬をつくりシャロンが目を覚ました時に飲めるように準備をし、汲んできた水を器に移してタオルを濡らすと、それを額に乗せた。

 

「シャロンの魔力が穢れ始めてる…」


 シャロンが急に体調を崩したのはそのせいだ。

 さっき、腐敗した魔力を飲み込んでしまったのだろう。


「穢れた魔力を浄化するなんて聞いたこと無いしな…」


 アンリはシャロンが持っていた魔族の本をパラパラ捲りながらぼやく。


 こんなとき、治癒魔法を覚えていればシャロンを助けてやれるのに。

 意地なんかはらないで師匠に教えてもらえばよかった。


「…アンリ…?」


 不意に声をかけられ、アンリが顔をあげるとうるんだ目でシャロンがこちらを見ていた。


「どうだ?具合は…って、悪いよな。薬作ったんだ。飲めばきっと楽になるから」


 シャロンは身体を起こして薬を受けとるとそれを一気に飲み干した。


「…苦い」


 ポツリと文句を言ってシャロンは再び横になった。

 アンリは苦笑して、シャロンの手を取る。


「シャロン、お前の中の魔力が穢れ始めてる。このままユエルスを着けてると、ユエルスまで穢れて使えなくなるから少しの間預かってるな」


 コクりとシャロンが頷くのを確認してから、アンリはユエルスの指輪とブレスレットを外した。


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