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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第六章
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苦手

「やっぱり私、アンリと分かり合えないわ!!」


 シャロンの言葉にアンリはムッとすると口を開く。


「わかろうとしてないだろ!そんなこと言うなら、わかろうと努力してるところ見せろよ!」

「何よそれ!?努力してるじゃない!…でもそれだけは無理!!」


 そう言ってシャロンはアンリが持っている瓶を指差した。


「レモンを食べるなんて酸っぱすぎて死ぬ!!」

「だから、大丈夫だって!酸っぱくないから!!」


 アンリはレモンが大量に入った瓶をシャロンに差し出すが、全力で拒否された。


 焦燥の月、一年のうちで一番暑いこの季節は暑さによって体力の消耗が激しく外で活動するにはキツい。

 ジオーグに滞在中、焦燥の月の暑さを考えてアンリは暑さでバテないようレモンの蜂蜜漬けを作ってきたのだがシャロンに拒まれ今に至る。

 かれこれ、十分言い争いを繰り広げていた。


「とにかく、疲れも取れるから食べてみろって!」

「蜂蜜に漬けたって酸っぱいものは酸っぱいわよ!私、酸っぱいの苦手…んぐっ!」


 シャロンが大口を開けた瞬間、アンリは輪切りにされたレモンを口の中へと押し込んだ。

 吐き出すに吐き出せずシャロンは眉間にシワを寄せ、目に涙を溜めてそれを咀嚼する。

 しかし、そのうち顔の表情が柔らかくなっていくのを見てアンリはニヤリと笑みを浮かべた。


「不味いか?」


 シャロンはそんなアンリを軽く睨み付けた後、レモンを飲み下した。


「…しい」

「え?」


 聞こえてるくせに…!


 聞こえないフリをするアンリにシャロンは悔しそうな顔をする。


「あー!もう!美味しいですっ!!私が悪かったわ!ごめんなさい!」


 やけになって言うシャロンにアンリは楽しそうに笑い声をあげると頷いた。


「素直でよろしい。喜んでもらえてよかった」


 アンリは器を手に取るとそこに細かく砕いた氷を魔法で出して、レモンの蜂蜜漬けをかけた。


「…なにそれ?」

「ん?前に焦燥の月に旅人がヒューディーク村に来たことがあって、その時に俺の家に泊めたんだけどお礼にってこれを教えてもらったんだ」


 レモンの蜂蜜漬けをかけた氷にスプーンをさしてシャロンに渡した。

 シャロンはそれを受けとるとゴクリと唾を飲み下してから、スプーンで掬うと早速口の中へと運ぶ。

 蜂蜜の甘さでレモンの酸っぱさが和らぎ、氷の冷たさのお陰で暑さがスッーと消えていく。


「はぁ…、美味しい…!」


 幸せそうな顔をするシャロンを満足そうに見たあと、アンリも自分の分を作って氷を頬張る。


「やっぱり、焦燥の月はこれだよなぁ…痛っ!」


 嬉しそうに食べていたのに、突然頭を押さえて苦しそうな顔をするアンリにシャロンが慌てて肩に手を乗せた。


「大丈夫?」

「これを一気に食べると頭が痛くなるの忘れてた…」


 シャロンはキョトンとした後、すぐに声を出して笑い出す。


「笑い事じゃないって…」

「だって…!」


 笑いを堪えようとすると余計に笑いが込み上げてしまって我慢ができない。

 その間、アンリに睨まれていたがシャロンは気にすることなく笑い声をあげ続けるとふと、アンリの腕の包帯が解けかけているの気づいた。


「アンリ、包帯が解けかける。巻き直してあげるよ」


 シャロンは立ち上がって近くの川に行くと水を汲み再びアンリの隣に座ると、慣れた手つきで包帯を解きタオルを濡らしてアンリの火傷の後を綺麗に拭いていく。


「結構よくなったね。あれほどの火傷を四日でここまで回復させちゃうなんて、ファリスさんの魔法薬すごいね」

「さすがだよな。後二日で完全に治るんじゃないか?」


 シャロンは同意して頷くと、魔法薬を手に取りアンリの腕に塗りそれから包帯を綺麗に巻いてやった。


「これでよしっと」

「おー…、上手に巻けるようになったな」

「ふふん、頑張ったもんね」


 シャロンは得意気に笑った。



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