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罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第五章
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要石


 しばしの沈黙の後「…終わったのか?」誰かのその一言で、広場が一気に歓声に沸き上がった。

 その歓声を聞きながらホッとしたようにその場に座り込む、ルヴィカにロエールが手を差し出す。


「…ロエール?」

「な、何だよ?早く立てよ」


 驚きながらルヴィカはロエールの手を取ると、立ち上がる。


「ありがとう、ロエール」

「礼を言うのは僕の方だ。あ…ありがとう…助かった…」


 そう言って恥ずかしそうにそっぽを向くロエールにキョトンとした後、ルヴィカは声を出して笑い出した。

 

「何だよ!笑うなよ!!」

「だ、だって…!」


 怒り出すロエールに構わず、笑い声をあげているといつの間にか人々がルヴィカの周りに集まってきて皆が口々にルヴィカを褒め称えた。


「貴方はこの街の英雄よ!」

「あの魔法、凄かったな!!」

「教会を守ったのもルヴィカの魔法か!?」

「いいえ!あれはリスモス様の加護よ」

「リスモス様が我等をお守りくださったのだ!」


「違うわ」


 その一言で、その場が水を打ったかのように静まり返り、その声の主の方振り返った。


「シャロン、大丈夫!?」


 ルヴィカは心配そうに駆け寄った。

 さっき足を痛めたはずのシャロンがしっかりと立って、ルヴィカに微笑んだ。


「ありがとう、私は大丈夫。…皆さんに聞いて欲しいんです!」


 シャロンは声をあげると、震える自分の手を強く握りしめ深呼吸してからその場にいる人々の顔を見回す。

 そこには、人混みをかき分けてこちらへ来たファリスとロナエもいた。


「あの魔法は神様の物ではありません。教会を守った魔法…あれは多分、ルヴィカの父親ルカさんの魔法だと思います」

「ルカの魔法だと…!」


 ロナエの言葉にシャロンは頷いた。


「わ、私は魔力に敏感で教会に昨日、行ったときに気づいたんですけど、この教会の要石…ええと、つまり…」

「建物が崩れないよう、支える役目のある重要な石だ」


 ロナエの説明にシャロンは驚い後、感謝の意を込めて頭を下げた。


「そう、その要石には魔石が使われていたんです。魔石は魔具とか術具に用いられる石なんですけど、魔石の特徴は自分の魔力を込められるんです。…だから、きっとルカさんはその魔石を要石として使うことによって守ろうとしたんじゃないでしょうか。いつか、街が魔物や魔獣…それから、魔族に襲われた時自分が造った建物に逃げてきた人々を、この街を。自分の主魔法である反射の魔法で、敵の魔法の攻撃を弾こうとしたんじゃないでしょうか」


 シャロンの言葉でファリスはルカとの約束を思い出す。


 “ファリスは守護者として街を守れよな。俺は俺で建築家として街を守るからさ”


「なんだ…ルカはずっと守ってたんだね。…あの約束を…」


 ファリスは涙を流して教会を見上げた。


「昨日、ルヴィカに案内してもらったルカさんの造った建物は全て同じ仕掛けが施されてました。…ルヴィカのお父さんは本当にすごい人だったんだね」


 シャロンはそう言って、困惑しているルヴィカの頭を撫でる。


「ごめんなさい、私はもう行かないと…。ファリスさん、ルヴィカ、お世話になりました」

「ちょ、ちょっと待って!シャロン!!」


 ファリスの制止も聞かずに、それだけ言ってシャロンは人混みから脱け出すと全力で走り出した。

 その後をファリスも追い掛けた。

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