表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪人たちに夜明けを  作者: 紅月
第五章
103/187

乱入者

 何かが動いた方に視線を向けると、ローエルがナイフを自分に向けて突進してくる姿が目に入った。


「うわぁぁああぁぁっ!!」


 叫び声をあげて突っ込んでくるローエルのナイフを握る手を自分の腹に刺さる直前に掴むと、そのまま地面へと叩きつけて、冷ややかな目でローエルを見下す。


「…目障りだ」

「るさい…!ここで暴れるな!!あの噴水は父様が作ったものだ!壊したら許さないからな!」

「なるほど、お前の父親が作ったのか」


 アンリは頷いて、視線を噴水へと走らせるとニヤリと笑う。

 視界の端に慌ててやって来たファリスとローエルの父親である、ロナエが見えたのだ。

 アンリはローエルに向き直ると、手を噴水の方へと向けた。


「お前も昨日、同じ事をルヴィカに使用としてたよな?」

「え…?」


 ローエルはわけがわからないと、顔をしかめる。


「ルヴィカの父親が作った教会を壊すんだろ?」

「それはあの教会が欠陥だから…!」

「欠陥?どこが?」

「…っ」


 質問に答えることが出来ずに黙り込むローエルにアンリは鼻で笑う。


「答えられないだろ?気に入らないから壊す。お前らの理由なんてそんな程度だろ?…だから、俺も気に入らないから壊す」


 そう言い捨てて、アンリが手から氷の塊を放ち噴水の女神の彫刻を粉砕する光景をローエルはただ、身体を震わせて黙ってみていることしか出来なかった。


「な、なんで…」

「さて、次はお前を消すか。さっきから俺の邪魔をし過ぎ。灰になれよ」


 つまらなそうに言って、ローエルに手をかざす。

 

「ローエル!!」


 アンリが呪文を唱えようとした刹那、ルヴィカがローエルの元へと駆け寄ると二人の間の壁となって立ちはだかった。


『我を邪魔する彼の者を燃やせ!!』

「アンリ!!やめて!!」


 シャロンの制止を聞かず、アンリは手から炎の塊を出すと何の躊躇もなくそれを放った。


「バカ!!な、何やってんだよ!逃げろよ!!」

「いやだ!!おいらお前のこと嫌いだけど、見捨てることの方が大嫌いなんだよ!」


 ルヴィカは怒鳴ると自分を燃やそうと飛んでくる炎の塊を睨む。


 身体の中で何かがうごめき熱を持ち、解き放てと訴えかけてくる。

 自分の中で何が起こっているのか、よくわからないがそれでもこの状況を打破できるのなら…!


 ルヴィカが両手を炎の塊に向けて伸ばすと、身体がうっすらと淡い青い光に包まれ、猛然と自分へと飛んできた炎の塊を弾き返した。


「え?…魔法!?」


 驚愕しながらも自分が弾き返した炎の方に視線を走らせた。

 炎は真っ直ぐ、放った本人であるアンリへと飛んで行く。

 己の炎に包まれる前、ルヴィカと目が合い呆然とした顔でこちらを見る彼にアンリは微笑みを浮かべた。


 そして、アンリは炎に包まれた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ