大量殺戮
※主人公の強さに修正を入れることにしました。ドラキルヤーンの紡糸関連も修正しています。
少し遠出の依頼を受け傷心旅行にきていた。受付もカリナさんのいない時間帯を狙った。
依頼は、糸の補充もかねてステルスハンターの番(Bランク相当)の討伐だ。
「ふぅ、蜘蛛には悪いが、八つ当たりをさせてもらう」
今日は俺の一番強力な武器で戦うぜ。ステルスハンターは基本透明なので常に魔力察知を使いながら歩を進める。
30分ほど進むと視界は良好なのに10メートル先に見えない敵を察知。すぐに戦闘態勢に入る。
「俺のおもちゃになってくれ」
両手で短剣を4本ずつ計8本投げる。短剣には糸がついていて、その糸はグローブに内蔵された糸巻き器につながっている。
糸を操作し短剣でステルスハンターの足を2本切断する。
「何もないところからいきなり血が噴き出すのはホラーだよな」
さらに糸を使ってもう2本切断する。
そう、何を隠そうこの糸!なんと、ドラゴンも鱗ごと切り刻めるのだ。ただし、若い奴だけ。
この糸の原料は、ドラゴンイーターという物騒きわまりない蜘蛛からとれる。その蜘蛛は、生涯50メートル程の糸1本しか使わず生活する。その糸は細く、柔軟で強靱。更には魔力伝導率約240%。更に主食の空飛ぶドラゴンを仕留められるよう糸自体が空中に浮く性質を持っている。
指でなぞろう物なら少し動かした瞬間、指が切り飛ぶことだろう。
しかも、『特別紡績』を使って更に強靱になるように編んでいるのだ。成体から作れる量はたったの4メートル。今あるのは両手併せて120メートル。製作期間2年の最高傑作だ。
ちなみにこれを持っていることは優斗達には秘密だ。
「これでしまいだ」
糸を縦横無尽に動かし蜘蛛をバラバラにする。
俺は糸の操作よりも使った後の巻き取りに一番注意をしている。この糸は特別製のグローブと糸巻き器以外に触れてしまうと切断してしまうのだ。一度、巻き取りをミスって俺の耳がサヨナラした時は、死ぬかと思った。
「ふぅ『通常解体』」
解体師の良いところは敵がどんなに損傷しててもドロップ品がゲット出来るってところだな。
「お、魔石大きいじゃねぇか。こりゃ報酬上乗せしてもらわないとな」
糸玉もゲットした。紡ぐのは後にしよう。
「あと1体か。よし、さっさと終わらせるぞ」
◆◆◆
「よぅし、依頼達成」
最初の1匹を倒してから2日経ってやっともう1匹を見つけた。森の中で戦ったのだが、ドラキルヤーン(武器の名前)を使ったので周辺の木々まで軒並み伐採してしまった。解体して収納しておきました。
ドッォーン
「なんだ。『気配察知』『魔力察知』」
100メートル程森の奥に敵反応があった。魔力もなかなかの物だ。
急いで向かった先には、見るも無惨な村の残骸があった。死体の大半が撲殺されている。多分、ゴブリンかそこらだろ。
「でも、この壊れッぷりは、ゴブリンじゃ無理だぞ」
オーガ、もしかしたら王種がいるかもしれないな。
足跡をたどりながらステルスハンターの糸を伸ばし、周りを探る。
「いた。この先に集団200。200!?」
嘘だろおい。どうする、俺。近場のギルドまで全力で走って2日。その間にここら辺の村が、あらかた潰されるだろう。それを許容できる俺ではない。
「やってやんよ。待ってな、雑魚共」
偵察用の糸をしまい、ドラキルヤーンを構える。
「いくぜぇ!」
ゴブリンを糸で瞬殺していく。切断した感触がほとんど無いのが驚きだ。
短剣は基本的に攻撃用じゃないが、刺さったときはそこを支点にして糸の動きの変える。
ドラキルヤーンの攻撃範囲は俺を中心に半径15メートルの球。それが今の限界だ。
気配察知を連続起動しながら敵影を確認していく。
「・・・・・・84、92、100。ゴブリン終了」
100近いゴブリンの壁を抜けると次はオークの壁。この時点で俺は囲まれている。
「好都合だ」
踊るように糸を操作しオークを始末していく。『死の円舞』とでも名付けようかな。
「ちっ上位種が大量じゃねぇか。これは王種確定だな」
俺のドラキルヤーンに敵う奴は、いない!
「ていていていてぇーい」
残るはオーガ上位種&王種8体。ここまで1時間もかかってない。俺、強くね?
「滅殺」
一気に敵の首を切り飛ばす。とは行かず片足を切り落とされた王種が一体だけ残っていた。
そのキングオーガは顔面が引きつりをおこしていた。これは、強力な麻痺毒を受けた後に残る症状だ。
「そうか。お前、あの時、逃がした1匹だったか」
近づきとどめを刺そうと糸を動かした瞬間、光の一線がオーガキングの首を貫いた。
空からキラッキラのイケメンが降りてきた。
「大丈夫だったか、君。俺は勇者。助けに来たよ」
そうか、今分かった。脇役Aってこういう職業なのか。
ドラキルヤーン・・・ドラゴンをキルできる(殺せる)ヤーン(紡ぎ糸)。安直ですみません。