孵化のヒント
俺が気絶させた女の子は赤髪の美少女だった。だが、俺の好みではない。
「うにゅ」
「目ぇ覚めたか?」
あの後、彼女を落とし穴から引き上げて寝かしておいた。
「誰?」
「君を落とし穴に入れた男」
「!?」
飛び起きて俺から距離を取るようにジリジリと後ろに下がっている。
「なんもしねぇから座んな」
て言われて座る奴ってそうそういないよな。
「殺すならいつでも殺せたさ。それに犯すつもりもないし」
「私に何かしたのか!」
自分の体に変わったところがないかまさぐりだす。
「ふぅ」
「な?なんもしてねぇだろ。さぁ座んな」
「あ、あぁ」
「なんでこんなとこいたんだ」
「あなたこそ。・・・・・・私はクリス。ジェナス迷宮に行くところよ」
「ジェナス、ジェナス・・・あ、邪神迷宮ね。俺はむしろ迷宮から帰るところだな」
「で、名前は?」
「・・・・・・サトー」
嘘は言っていないぞ、嘘は。なんか名前教えちゃいけない感じがする
「ふ~ん、間が気になるけど、嘘じゃなさそうね」
「信じてくれてよかったよ」
「ふんっ。で、あなたはここで何してたのよ」
なんか俺が詰問されてない?
「野営だよ野営。飯食ってたときに君が来たのさ」
「ていうか、落とし穴に閃光玉はひどいわ」
「不用意に近づいたあんたが悪いよ」
「うるさいわね。糸に触ったら変な音が聞こえたから来ただけよ」
「あんた、これが見えるのか?これステルスハンターっていう蜘蛛の糸で出来てるんだけど」
ステルスハンターは中堅どころの蜘蛛の魔獣だ。体はおろか自らの糸まで透明になるのだ。
クリスは、しまったとでも言いたげな顔をした。
「あんた斥候職なのか?」
「違うわ。魔術師よ」
「あぁ魔法使いか」
「魔術師よ」
「どっちでも一緒だろ」
「違うわ。魔法使いは俄共の集まりよ」
「俺としてはどっちでも良い。じゃあ斥候職でもないクリスはなんで透明の糸が見えたんですか」
「魔眼よ」
「まがん?」
「そう、看破の魔眼よ」
説明しよう!魔眼とはこの世界において10万人に1人の割合で持っている特殊な目のことだ。その効果はいろいろあり、看破の他にも鑑定や魅了、予知なんてものもある。
「ふ~ん」
「信じてないわね」
「まぁね」
「じゃあ聞くわ。“脇役A”って初めて見るんだけど、どんな職業なの」
「っ!?なんでそのことを」
「書いてあるわ」
嘘言うな!脇役Aはパーティー脱退で消えたはずじゃ
すぐさま閲覧石を取り出し魔力を流す。目に飛び込んできたステータスには、
◆◆◆
佐藤 慶明 20歳 人間 男
職業:M.脇役A LV.856
S.調理師LV.999・裁縫師LV.999・罠師LV.999・解体師LV.999・薬剤師LV.999・斥候LV.999・従魔師LV.1
MP:2,000,000
筋力:A
魔法力:D
体力:A
忍耐力:B
精神力:A
運:C
職業スキル
調理師<食材鑑定・食材加工・調理道具作成・調理魔法・調理・特別調理>
裁縫師<紡績・機織り・刺繍・被服・特別紡績>
罠師<罠合成・罠創造・罠発見・罠解除・奥の手>
解体師<通常解体・瞬間解体・解体物保存空間・特別解体>
薬剤師<素材鑑定・調合器具作成・調合・瞬間調合・特別調合>
斥候<隠密・気配察知・魔力察知・空間把握・暗殺・奥の手>
従魔師<従魔契約>
称号
異世界より召喚されし者・・・取得経験値と熟練度が3倍。ただし、自分のみ。
脇役A・・・攻撃職系スキルが習得不可能。補助職系スキルの習得率10倍。
料理を極めし者・・・調理師スキルをマスターした証。特別調理が使用可能。
裁縫を極めし者・・・裁縫しスキルをマスターした証。特別紡績が使用可能。
罠を極めし者・・・罠師スキルをマスターした証。奥の手が使用可能。
解体を極めし者・・・解体師スキルをマスターした証。特別解体が使用可能。
調合を極めし者・・・薬剤師スキルをマスターした証。特別調合が使用可能。
斥候を極めし者・・・斥候スキルをマスターした証。奥の手が使用可能
◆◆◆
脇役Aが消えていない!?なぜだ!
「あなたすごいわね。調理師に裁縫師、罠師に解体師、薬剤師に斥候、そして従魔師。しかもその見た目で従魔師と脇役A?以外はレベル最大じゃない。一体何者よ」
くそぉ、俺には主人公は無理だとでも言っているのかぁ!!
「ねぇ、ちょっと」
俺はくじけねぇ!必ずこのイミフ職を解除してやるぜ。
「ねぇ」
「あぁ?」
ガスッ
「あぁ?じゃないわよ」
殴られた。魔術師とか言っておきながら超痛いんですけど・・・
「すんません」
「まったく」
あ、こいつに卵見てもらえばよくね?
「ちょっとこれ見てくんない」
そういって卵を差し出す。
「何よこれ」
「俺の従魔(予定)なんだけど、孵化の方法が分からなくてさ」
「これ本当に卵なの?・・・・・・何なのこれ。見ても『???の卵』としか見えないんだけど」
「だめか」
「孵化条件は夜に暖めてなんかの液体につけるそうよ」
「なんかの液体って何だ?」
「分からないわ。そこは文字が崩れていて読み取れないの」
「ふ~ん、まぁありがと」
なんかの液体かぁ。思いつくだけでも聖水に果実水、海水・・・・・・絞れないな。
「今日はここで寝な。ここ結構安全なんだぜ」
「あなたという危険動物がいるわ」
「安心しろ好みじゃないから」
「その返しもむかつくわね」
「あっそ」
◆◆◆
翌朝、クリスとは別れることになった
「あっちについたら、“思わず満腹亭”っていう酒場にいってみな。酒場の癖してそこら辺の料亭より料理がうまいぜ」
「気が向いたら行ってみるわ」
「おう、じゃあな」
「・・・・・・また」
俺は颯爽と歩き出した。