軍事国家ウォーリス
予約投稿使ってみました。
慶明視点に戻ります。
ノゾミが意識を失ってからぴったり3ヶ月。俺は今、ウォーリスという国に来ていた。
この国は軍事方面が有名で国教として戦神を崇めているのだ。
ノゾミは戦神の守護が使命のようだからここに来れば何かが分かるかも知れないと思ってきた。
「ノゾミ、大丈夫か」
少し大きめの鞄にノゾミを入れていて揺らさないように気をつけながら胸に抱いている。
ノゾミはあれから時が止まったように眠っている。一応、嘴を少し開けて流動食をちょっとずつ入れているけど。見た目に何の変化もないし、時折本当に時間が止まってるんじゃないかと思う。
国に入ること自体は、結構簡単でギルドカード見せてバックの中身を申告したら問題なしで通過できた。
「あの高い建物が神殿か教会かだろう。てか、この国の道はまるで迷路だな。」
まるでではなく本当に迷路だ。上空から見ればその奇怪さが分かる。大型の魔物には意味がないが小型の魔物にはなかなかの効果を発揮するのだ。しかも対人間用としても考えられている。
「くそっ全然辿り付けねぇ。近づいたと思ったらいつの間にか遠ざかってる」
しかも人っ子一人見かけない。いや、おっさん二人みっけ。
「おい、小僧。ちょっとおいさん達にお金貸してくれねぇか?いつか返すからよう。い・つ・か」
「ばっか、おめぇ。それで返したことねぇじゃねぇか」
「がははっ、そういえばそうだな。まぁいいじゃねぇか。で、さっさと金出しな」
丁度良い。こいつらに案内してもらおう。
ノゾミの入っている鞄をゆっくりと地面に降ろす。
「あ!」
唐突におっさん二人の後ろを指差す。
「「え?」」
わぁお、マンガみたいな完璧な反応。ありがとうございます。
「なんもねぇじゃねぇか!」
振り返った二人の顔面にポーチから取り出した胡椒をかける。
「「うわっ!」」
ひるんだ瞬間にステルスハンターの糸を二人の首に巻き付ける。一応、1本の糸でしておいた。別々に逃げる、とかやられたら面倒だし。
「なにすんだてめぇ!ぶっ殺す」
「こんのクソ餓鬼ぃ」
「おいおっさん動くと首が飛んじゃうかもよ」
糸を軽く引っ張り存在感をアピールする。まぁ見えないんですけどね。
「おいなんだこれ」
「おいおい、やべぇぞこいつ」
「動くなっつってんだろ。ちょっと神殿か教会に案内してくれればいいから」
「お、お前、“ウォーリアー”か」
ウォーリアー?戦士って意味じゃなさそうだが・・・・・・。
「ちげぇよ。てか、さっさと案内しろっての。あ、二人を1本で繋いでるから片方が逃げたらもう片方も死ぬからね」
「わ、わかりました」
「た、助けてくれ」
「うるせぇな、ほら行けって」
ノゾミの入っている鞄を肩にかける。揺れるので中が心配だ。
おっさん二人でタイミングを合わせて1,2,1,2とかやってる。そこまできつくしてないから歩調が別々になっても大丈夫なんだけど。
「ねぇ右のおっさん」
「な、なんでしょう」
「ウォーリアーってなんだ」
「そんなことも知らね、知らないんですかい」
「ここには初めて来たもんでな」
「え~と、簡単に言うとウォーリアーってのは戦神様の加護を頂いた神殿騎士のことで、その全員が異常に強い」
「へぇ~どのくらいだ」
「以前、オーリ様と戦った時は1対10で引き分けたらしい」
1対10・・・・・・それは強いのか?てかオーリって誰だ!
「オーリって誰?」
「・・・・・・お前さん、聖槍の勇者様も知らんのかい」
この口調が素か。まぁどうでもいいけど。へぇ~、聖槍の勇者ってオーリって名前なんだ。名前までは知らなかった。どんな字書くんだろ。
「知らん」
「オーリ様はな、あのジェナス迷宮68層まで行ったすごい御方なんだぞ。腰まであるあの艶やかな長い黒髪を颯爽と揺らし敵に突撃していく姿は絵になって売られているほどだ」
はいはい、勇者に対するリスペクトね。・・・・・・オーリって女なのか。他国の勇者事情なんて教えてもらえなかったしなぁ。
「オーリは女なのか?」
「様を付けろ様を。そうだぞ、女性だ。オーリ様のちょうど手にすっぽり収まるような胸が今のウォーリス女性の美しさの判断基準の1つになっているんだ」
「へぇ~」
正直そこはどうでもいい。てか、こいつ立場分かってんのか?
「この前、神殿の白壁にもオーリ様の立ち姿が彫られたんだ」
「ふぅ~ん。で、そのオーリ様とやらはどこにいるんだ?」
「それがさ、68層のボスを倒した瞬間消えちまったって話だ。今、神殿騎士やらウォーリアーやらが探し回ってんだと。早く見つかるといいなぁ」
そんなリスペクトしてんならお前も探せよ。しかも左の奴さっきから、うんうんと頭縦に振ってるだけじゃね。
そういえば、優斗達は何層まで行ったかな。クリスと会ってたりして。
◆◆◆
歩いて30分ほどでさっき遠目に見た高い建物の前に来た。白い壁にいろいろな彫刻が彫ってあってとても綺麗だ。
「こ、ここだ。ここが神殿だ」
「嘘じゃねぇ。ホントだ。信じてくれ」
「まぁ嘘でも大通りに出られたからいいけどね。ちょっと糸外すから動かないでね。動いたら飛ぶから」
もはや何がと言わなくても分かっているのか顔が真っ青だ。
「ここまでありがとな」
糸を外し二人に2000シェルずつ渡す。一応、ガイド代だ。脅したわけではない雇ったのだよ。
「よし、いくかノゾミ」
鞄を再び胸に抱え神殿の門を叩こうとした。でもその前に門が開き始めた。
「うっそ、自動ドアか。・・・・・・そんなわけないか」
気配察知を使うとあちら側で誰かが開門装置を作動させていた。そして目の前にも一人。
「お待ちしておりました」
純白の礼服に身を包み異様な威圧感を醸し出すスキンヘッドのイケメンがいた。




