決断
すみません。起きたら0時過ぎていました。
※変更しました。
「8の視線」→「4人の視線」
「ソフィィィィィ!!!」
黒いレーザーに貫かれたソフィーは、糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。
デッドリーゲイズは再び目を閉じ微動だにしなくなった。
ユーリとキリアは魂が抜けたように座り込み、仲間意識の薄いレティシアですら体が硬直している。
僕がソフィーに近寄ろうとしたとき、
「ユウト、待ちなさい!今はボスに専念よ!」
「でも」
「ソフィーが無駄死になるでしょ!さっさと倒すわよ」
「・・・・・・分かった。ユーリ、キリア、悲しむのは後だ!」
行き先をソフィーからボスに変更。聖剣の一撃を食らわせる。
「くらえぇぇ!」
「ユウト!」
「分かってる!」
目玉がゆっくりとこちらを向く。
「次は失敗しない!」
オーラが出た瞬間、最短距離を通って攻撃範囲外に逃げる。
10秒たって死の空間が消え、また攻撃に移る。皆、八つ当たりのように攻撃をしていた。
ボスに攻撃(15秒)→オーラ出現(5秒)→ボスが攻撃(10秒)
このサイクルをひたすらにこなす。
30分くらい立った時、デッドリーゲイズは死んだ。
ボスの死体には、目もくれずソフィーに駆け寄る。
レーザーに貫かれたはずの胸には傷一つ無く、ただその鼓動だけが止まっていた。
僕は力なく座り込み、ユーリは嗚咽を漏らし、レティシアは立ちすくむ。
「おい、ソフィー。起きてよ。ソフィー」
僕の隣でキリアがしきりにソフィーの体を揺すっていた。
◆◆◆
ソフィーを布にくるみ無限収納空間に入れ街へと帰還した。
ソフィーの葬儀は、街の外れで行った。遺髪を切り取り、遺体はユーリが『天葬』という浄化魔法で焼いた。
白い炎で焼かれたソフィーは、細かい光の粒へと変わり空に上っていった。
宿屋に帰った僕たちは一言もしゃべらずそれぞれの部屋に入っていった。
ソフィーと付き合いの短いリリスは、精神的ダメージが比較的軽いようだった。
いつもは一緒に食べるご飯も個別で食べ、誰とも会話することはしなかった。
悲しさを紛らわそうと早く就寝しようとしていた時に部屋の扉がノックされた。
「誰?」
「私よ。リリスよ」
「どうぞ、入っていいよ」
「ユウト、ちょっといい?」
「何?」
「今日ソフィーが死んだのは、あなたのせいよ」
優しげな口調から飛び出したその言葉に僕の時間は一瞬止まった。
「でも、こういうことは迷宮を進む上で必ずある事よ」
「分かってる。分かってるけど・・・・・・」
「その思いを抱いているのは、ユウトだけじゃなく迷宮で親しい仲間を亡くした人たち全員よ」
「だったら」
仲間を亡くしてしまうぐらいなら迷宮攻略なんて辞めてしまおう、そう言おうとした。
「それでも、みんな自分の目的のために迷宮攻略を続けるのよ」
「自分の、目的のために・・・・・・」
「そうよ。ユウトも邪神を倒すっていう目的があるんでしょ。だったらソフィーの死を無駄にしないようにもう一度迷宮に入るべきよ」
「・・・・・・」
分かった。もう一度挑戦しよう!とは言えなかった。
「よく考えてみてね」
そう言い残してリリスは部屋を出て行った。
頭の中では、迷宮攻略を続けるか続けないか、その2つの選択肢がぐるぐると回っていた。
何時間経ったのだろう。もう草木も寝静まり辺りは闇黒に包まれていた。
「ユウト、起きてるか?妾だ。」
「うん、起きてるよ」
「入るぞ」
「うん」
そぉっと扉を開け入ってきたレティシアの目は少し赤かった。
「妾はユウトが好きじゃぞ」
「・・・・・・」
突然の言葉に何も返すことが出来ない。
「ユウトといると楽しい。一緒にいると心がワクワクする。だから一緒についてきた」
そういえば、そうだった。一緒に旅をすることになった時、確かにレティシアはそう言った。
「でも最近はつまらん。サトーがパーティーを抜けてやることがいっぱいで、ユウトもちっとも妾達のことを考えておらん」
「・・・・・・」
なにも返せなかった。実際その通りだった。
「こんなにつまらん旅はしても意味なぞ無い」
「意味はある!」
ソフィーが死んだことを意味がないと言われたような気がした。
「いや、意味は無い。ソフィーには悪いが、これはいいきっかけじゃ。この旅、やり直さんか?」
「・・・・・・どういう意味」
「もう一度、初めから、サトーに頼らず、妾達の力だけで、旅をするのじゃ」
レティシアの瞳は何かを決心したように力強く光っていた。
「妾も何かやるぞ。攻撃は大雑把じゃが、手先は器用なんじゃよ」
暗に裁縫を請け負う、といっていた。
「一度、考えてみてほしい」
そう言って、レティシアは去っていった。
◆◆◆
朝、僕はみんなを集めた。
「みんな、聞いて欲しい。これからのことだ」
4人の視線が僕を貫く。
「僕はもう一度旅をやり直そうと思う」




