孵化
鳥の名前を、漢字からカタカナへ変更しました。
今日は依頼は受けず卵の検証をすることにした。
集めたのは、神水(聖水の上位互換)、聖水、海水、純水、真水、魔力水、蒸留酒、スライムの粘液、オーガ・オーク・ゴブリンの精液と血液、ステルスハンターの体液、赤竜の血液。
精液なんてかけたくないが、やり方が分からない以上、検証するしかない。
「先に精液終わらせるか」
まぁ予想していましたが光りません。更には模様の変動さえない。
「くそぉ、匂いが取れねぇ」
魔物の血液・体液の類は全滅だった。唯一、模様の変動があった赤竜の血液はチェックだ。
光ったのは、光が強い順に神水、魔力水、聖水。神水と魔力水は同程度だったので、おそらく魔力は別で与えなければいけないのだと推測する。
「一応、文章には為ったな。『満月の夜に膨大な魔力を与えながら暖めた神水に浸せ』」
なんで孵化のさせ方が書いてあるんだよ!!
てか、神水超高いんだぞ!たった200ccで10万シェルすんだぞ!この卵浸すのにざっと4~5リットルはほしい。ってことは、200万シェルぐらい?
「俺の貯金が・・・・・・。くっここは冒険だ。金ならいくらでも貯められる。やってやんよぉー!おらぁー!」
ドンドンドン、うっせぇーぞ!
「あ、すいません」
これが噂の壁ドンか。ちょっとビックリした。
満月の周期はもうそろそろ。ってか今日じゃね?やべぇ神水買わねぇと
◆◆◆
くぅっ、3リットルしか用意できなかった。
「寸胴鍋でごまかそう」
一応、街を出て小高い丘の上に来ていた。即席キッチンを作り、神水を温める。
「よし、こんぐらいだろう。問題は卵が浸かるかだな」
卵を取り出し魔力を注ぎ込む。俺の持つ魔力は200万。これだけはあのパーティー内で最も高い。それでも少し不安だったのでブースト用の魔石、魔力100万分(500万シェル)を用意しました。
魔力を入れ始めた時点で光り出した。魔力のパスが切れないように寸胴鍋に入れる。ギリギリ浸かりきった。
「後は魔力を込めるだけかな」
魔石からの魔力供給を全開にして卵に注ぎまくる。鍋の中を見ると、卵の模様が動き少しずつ模様が消えていっていた。
「模様が消えきると孵化するのかな」
魔石分を使い切り自分の魔力も80万を切ったとき、器を満たしたような感覚がした。でも、全力で魔力を流していた俺はいきなり止めることが出来ない。
「しまっ」
これは、どの生物にも言えることだが、それぞれが固有の魔力の器を持ち、それを超えて魔力を持つことはない(ブーストは例外)。では、器を超えるとどうなるか。
その答えは、既に多くの研究者が体験している。暴走するのだ、魔力が。そしてその周辺は今のところ9割の確率で消し飛ぶ。
「やべぇ。これはやべぇ。俺死ぬかも」
卵は鍋を消し飛ばし光の塊として空に浮いていた。試しに魔力察知を使ったら、感知範囲の4分の1を埋め尽くす反応だった。
この魔力の量だ。丘どころか半径50メートルぐらいは消し飛んでしまう。
「やれるだけやってみるか」
もう一度、魔力のパスを繋ぎ、卵の魔力に干渉する。遠隔操作で卵内の魔力を練りその量を減らしていく。
魔力は練ると魔法の威力が上昇するが体積が減るという研究結果が発表されていたはず。
「くぅ、魔力が足りねぇ」
魔力を使い果たしたが、その代わり卵の暴走も収めることが出来た。
ピキ、ピキピキピキ
「おぉ遂に生まれるか」
卵を割り出てきたのは、真っ黒な鳥。
「クァァ」
周囲を確認するように頭を揺らす。俺をじっと見つめもう一度、クァァとなく。
「これは、あれか。え~っと、あ、刷り込み」
その鳥は外に出るのに邪魔な殻壊しに奮闘していた。閲覧石を取り出しステータスを見ようとした。
「あぁ俺、もう魔力無かったんだ。」
種族が気になるなぁと思いつつ名前を決める。
「クーとかじゃダメだよな。もうちょっとしっかりした名前を」
うんうんと悩んでいる間に鳥は殻を壊し終わったようでヨチヨチとこちらに歩いてくる。
「よし、決まった。お前は“ノゾミ”だ」
満月からとったが少々安直すぎたかな?
「クァァアア」
う、よく分からないが気に入ったと言うことにしておこう。