表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

Hello Wo***

Hello Words

Hello works

Hello World



「課長、なぜ面談者に直接検査結果を見せちゃまずいんですか?」


「あら?この仕事につくときに研修で習わなかった?」


「個人情報保護のためとは習ったんですが、さきほどの面談者のように、うまく適性を伝えられないヒトも多く、それほど特殊なケースはいままでも見たこともないので本人には直接開示してもいいのではないかと……。」



「そうね民間業者を使えば、自分の適性を直接みることもできるし病気の遺伝子情報活用分野ではいまだにそうしているのも事実。でもね職能検査については、まだ確率統計的に処理されるところが多いのと、遺伝よりも職歴とか学習により獲得する後天的な影響のほうがおおきいの。」



「なら尚更、参考資料として見せちゃってもよくないですか?」



「20年その道でやってきて、『その仕事は向いてません』と書いてある資料わたされても困るでしょ?」



たしかに・・・



「それにこの施設にくるのは平凡な人のほうが多いことも考慮しないと。統計的に非凡な才を持つ人物はここで適正検査をうけるまでもなく比較的早い時期に世に才能として認められていることもおおいし、世間からは引っ張りだこなはずよ。」


「なるほど。」


「だから、他者の感情認知力適性が高いNくんのような人を一旦介して間接的に柔らか~~く、情報を咀嚼したうえで案内する必要あるの。」


「いやぁ! 課長の説明はいつ聞いてもわかりやすいですね。」



「ふふふ。ほめても給与査定には影響しないわよ。」



「自分が新人だったころの上司も課長みたいだったら今ごろもっと仕事できるようになってたかも!」



「だからおだててもムダだってば。」

しかし、課長のアバターは嬉しそうに笑う。


「管理能力に適性がある人でも物理的な限界があるから、新人の面倒まではみれないのはしかたのないことじゃないかしら。新人教育よりはマネジメントにまわってもらったほうが組織としては効率あがるし。それにね・・・私みたいなのでも単純な情報処理能力なら結構あるから。単純に情報処理能力の差よ。」


ごきげんな課長は饒舌だ。




彼女の処理能力は人間の域ではない。

なぜなら彼女は人間ではないからだ。



機密保持が重要な遺伝子情報を扱う施設の管理職という立場を担う人工知性なのである。基本的な処理は施設ごとに設置されているわずか数十万円もしない予備端末により処理される。



この廉価な汎用予備端末ですら全人類の情報処理能力をあわせたものを上回るほどの演算能力がある。クラウド上にいる部長スレッドは全国各地にある課長級予備端末を並列で処理ができ、遺伝子検査課、資格試験検査課などの統合管理能力がある。




「私が人間っぽく会話ができるようになってきたのは、あなたたちの面接を十二分に機械学習させてもらっているおかげよ。」





「ワタシもずいぶんヒトのようにシャベルようになりマシタカ?」



課長はユーモア混じりに旧世代の人工音声のような甲高い声を出しながら、私の画面にドット落ちした旧世代フォントが表示される。




    Hello World








感情増幅表示装置用のカメラは本来は必要ないはずの我々面接官側にもついている。



彼女はこのカメラを通して人間の感情の機微と言語を学び人格と呼ぶにふさわしい振る舞いをするまでに至った。彼女が面接官と話すときにフランクなのは面接官同士が話すところを学習したからだ。



5年前に職能安定所が新設されると決定されたとき厚生労働省の発表ではこの施設では全国で数千人を超す面接官が働いていた。しかし、いまや統計局の発表によるとわずか数十人で運営されているようだ。施設当たり2~3人しかいない計算だ。しかし、中で勤めている分には忙しくなった感はない。


その数千人の差分の仕事はおそらく彼女のようなAIが埋めているに違いない。



私の同僚であった面談官は職業を斡旋するこちら側からあちら側へ席をうつしたものも多いのだろう。


さきほどの面接した者も勤め先の固有名詞がピー音で伏せられたということは、警戒単語リストに乗っているということだ。警戒単語リストに乗るような職場の名称はあまり多くない。彼の前職は我々の関係先だったのかもしれない。



わたしもいつこちら側からあちら側にいくかわからない。今も本当に求められている役割は出社時と退勤時の鍵の開け閉めぐらいだ。



私のような平凡な才しかもたぬものがやる仕事でAIで代替できない仕事などそう多くはない。仕事がなくなれば、わたしもあちら側入りだ。



だったら人工知性にだっておべっかだって使おうじゃないか、なにせわたしの職能適性は空気の読むことだ・・・。



そう、ひとりごとにもならないひとりごとをつぶやきながら感情増幅表示装置用のカメラの前からタブレット型PCを外す。


画面が綺麗なだけで全く売れなかった年代ものの高精細タブレット。

自分のニコニコ顔が繰り返し再生されているのを渋い顔で停止し電源を落とした。


Return Null

Exit

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ