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お金を数えられない遺伝子

地道な遺伝子とデータの関連付け研究のさなかあるエポックがおきた。



クレジットカードの支払いを滞らせカード利用ができなくなっていた信販会社の信用が低い層に対して、ある特定の遺伝子検査と引き換えに支払い猶予を延長するという実験的サービスがおこなわれた。




ほどなくして、カード破産に近いものほど数値認知や空間認知に関わる遺伝子の変異率が一般の比率に比べ極めて高いことがわかった。



クレジットカード会社はこれを新たなリスク評価の材料とし、わずかな投資で得た遺伝子情報は返済履歴キャッシュヒストリーとは別の角度で不確実性算定の算出根拠とした。




そこから数値認知にかかわる遺伝子があるかないかという、その人の特性は、会計のようなお金勘定する業務へ適性もしくは不適性として判断できるのではないかという仮説が立てられた。




職業適性検査はそんなレベルから試みられた。



算数が9歳児水準で止まってしまうのは学習や努力が足りないからなのか?



それとも学習や努力を過剰に要求する要因があるのか?



その要因はどれほどの程度の影響があり、どこまでが遺伝子によるもので、どこからが環境によるものなのか?





特定一つの遺伝子が発現する機能が人間一個体の職業や社会的役割を決定するわけではない。



数値認知ができても、欲にながされるような報酬依存傾向が強く非誠実な気質でプラスとなれば会社の会計を粉飾してしまう可能性がある。



それではお金を任せる仕事には不適となる。



しかし、評価項目を際限なく増やしすぎてしまうと職業の適正としては診断ができなくなってしまう。



そこで、単純な職業ではなく、職業に必要とおもわれる技能、つまり職能として解析をし、その職能にたいして重み付けをしたうえで評価することで適性をみるようになった。




職業安定所時代はおおよそ400種類で運用されていた職業分類は職能安定時代になって、現在は細目まで含めると800万種を超えるほどに細分化された、一人あたり数百億にものぼる遺伝子の組み合わせを加重平均評価し職能適性として評価する。



職業ごとに求められる能力は求人や離職が発生するたびに都度変わりこれらの情報を収集し自動最適化アルゴリズムにより評価値が決定される。



職業をとりまく産業構造、環境因子の影響度の変化、新たな遺伝子の発見、これらを勘案して毎日評価がかわりるので


「今現在」どのような評価になっているのかは、もはや人間にはアルゴリズムから算出される計算結果としてのみしか観測できなくなっていた。





このようにして職業斡旋をしていた特別行政法人の業務は職業斡旋よりも、2つの業務がメインとなることになった。



ひとつは、どのような能力を後天的に獲得したかを世間に対して公平に担保するための資格試験課。



そしてもうひとつは、個人の資質としてどのような適性があるかを遺伝子を検査し案内する遺伝適性検査課だ。


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