幸せ探し
幸せ探し
麦茶 大好
どうして。その思いは常に頭の中に。
どうして誰も私を見ようとしないのだろう。どうして父と母は。どうしてお兄ちゃんは――。
太陽がその姿を主張するかのように、熱い日差しが街には降り注いでいた。真昼の街の道路。その道端に少女は佇んで地面を見ている。そこにいるのが当たり前のように誰も彼女の事を気にしない。その扱いは道端に佇んでいる木の隣を通りすぎる時に良く似ている。
少女は動かない。ただじっと佇んでいる。何かを待っているのだろうか。動くという行為を忘れてしまったのだろうか。
少女は動かない。その視線は灰色のコンクリートの地面に縫い付けられているようだ。視線の先を一匹の蟻が通り過ぎたが、しかし、少女の視線は揺るがない。
頭上の蒼穹の存在に彼女は気づいているのだろうか。雲もなく晴渡った清々しい晴天に。
道端に佇むタンポポの花に彼女は気づいているだろうか。まっすぐに太陽を仰ぎ見るその黄色の顔に。
いや、気が付いてなどいないだろう。彼らもまた道端の木と同様、当たり前にそこにあるものなのだから。そして、彼らも彼女になど目を向けない。
その悲嘆を湛えた姿から私は目をそらす事ができない。誰も目を向けないその少女、私が視線を外してしまったら消えてしまう気がして。
握り締めたその拳は一体何を伝えたいのだろう。食いしばった歯に籠められた感情は何の為。
私は少女から目をそらす事ができない。その肩に籠められた力は只只静かに悔しさに堪えているようで。
少女は動かない、だから彼女は私に気がつく事ができない。もし彼女が前を見たら直ぐ目の前に私はいるというのに。
通り過ぎる人々は私達に目もくれない。それは彼らにとって当たり前すぎて見えていない光景だから。
だから、私は声をかけた。
「こんにちは。貴女はどうして悩んでいるの?」怖がらせないように私は必死に笑顔を作る「もし良かったら何か手伝えることはないかな。」
私の拙い言葉でも彼女の視線に縫われた糸を解く事はできたようだ。少女はゆっくりと顔をあげ私の瞳をとらえた。彼女の瞳に映った私はどんな姿をしているのだろうか。
「あなたは」久しぶりに言葉を発したのか少女の言葉は弱弱しく、途切れ途切れだ「あなたは何。」
あなたは何と少女は言った。なるほど、正しい表現だ。
「私はずっと貴女を見ていた者だよ。何を深刻に悩んでいるのだい? 道端の少女。」
道端の少女は見られていた事に驚いたのか目を大きく見開いた。
けれどそんな事実は気休めに過ぎない。地面を見つめていたその時、彼女は一人だった。私もまたタンポポ達と変わりはしない。決して道端の少女の孤独を消し去る力はないだろう。
「探し物をしているの」
「これはこれは」私は驚き、つい声が大きくなる「虚無の地面を見つめて何を探しているのかな。」
「じゃあ」純粋な瞳で少女は私を観察する「じゃあ空を見たら神様は見つかるの。前を見たら見つかる? 左右をみたら見つかる? 後ろと言われても私の視線から後ろは逃げていくわ。だから只地面をみているの。何もないから見つけ易い気がして。」
「なるほど。」
実に聡明な少女だ。だが、どこを見たとして彼女が探す神様等、居はしないのかもしれない。いやそれどころか万能な存在は何処にもいないだろう。だからといってこの少女を放っておくことなど出来はしない。
私にも出来る事はある。せめて、せめて彼女のその目にその真実を見せてあげることは出来る。
その時彼女の視線は今度は何処を視るのだろう。その視線は何を捉えるのだろうか。
だけれど、その時も私は、私は少女から目を逸らすことはできないだろう。
「探した神様は見つかったかい?」
なるべく優しく話しかけるように心がける。彼女のその孤独を拭いとれるように。
「まだ」道端の少女の視線は再び地面を捉える「まだ見つからないの。」
また少女は動かない。視線は地面を捉えたままで。
「なら、探しにいかないかい? どこかにいるかもしれないよ。」
少女は視線を私に移した。その瞳に期待にも希望にも似た思いを私は見た。
「さぁ、探しにいこう。」
私は少女に手を差し伸べる。手を取ってくれるか、不安だったが少女は私の手をしっかりと握った。
「何処に行くの。」
何処に行くのか、それはまだ決めていなかった。ふと空を仰ぎ見る。雲はない。その青々とした虚空はキャンバスに描いた蒼のようだ。
目の前には心に様々な色を抱えた少女。彼女のキャンバスに滅茶苦茶な色を描きこんだのは何なのか。それが私には気になった。
「君は何処から来たの?」
その質問に少女は戸惑ったようだが、少し考えるとうなずく。
「私の家にいくのね。」
私はうなずく。少女は疑いもなく手を引いて私を先導し始めた。しかし、その歩調は緩慢だ。
なるほど、彼女の家で何かあったようだ。私は何もいわず彼女についていった。手を引かれながら。
フローリングの床、流しにガスコンロ。台所だ。木造のテーブルに椅子もそこにはあった。しかし、椅子は倒れ、フローリングの床は今はその独特の木の匂いはない。
そんな場所で工藤 聖徒はナイフを握っていた。その鋭利な刃物は今は金属光沢を失っている。変わりにそのナイフのヒルト、刀で言うと鍔の部分から先には鈍い輝きを放つ粘着質の赤い液体が付いている。その液体は今もナイフの切っ先から滴っている。ぽたり、ぽたりと、滴る液体は彼の足元に小さな溜まりをつくっている。鼻を突くような鉄臭い匂いが辺りには漂っていた。
血だ。
聖徒の視線の先には物言わぬ二体の骸が転がっている。
青年は佇んでいる。まるで最初からこうであるように。足元の血溜まり量から察するにまだそうして佇んで間もないはずだ。しかし、最初から、昔からこうであったかのように彼は佇んでいる。
なぜそう感じるのか、それは聖徒が逃げる事も慌てる事もなく只只そうして静かに何かに耐えるように佇んでいる為である。
その瞳の先には今も血が流れ広がる男女の骸が転がっている。しかし、その血に反応することなく瞳は揺るがない。聖徒は目を細め、歯を食いしばっている。何かに耐えるように。
その姿は先ほどの少女を彷彿とさせる物だ。
その顔には焦りも憎悪も見えない。ここには見えない何かに悲しむかのように目を細めるだけだ。
しばらく、そうして佇んだ後青年は血塗られた手でポケットから携帯電話を取り出した。携帯電話はタッチパネル式の最新型で指で番号を入力するたび、その画面は骸の血で紅く染まる。
入力した番号は簡素に三文字。110。そう聖徒は入力した。ワンコールもないうちに相手は通話に出る。
「人を殺しました。」その声は抑揚が感じられず、どこか事務的な物だった。
少女に連れられた家はそう遠くなかった。外見、なんの問題もない一軒家だ。木造住宅の二階建て。コンクリートの塀でその家は囲われており、そう広くはない庭が確保されている。屋根は瓦張りで、その屋根についた汚れは長い年月そこにあることを語っていた。
だが、その家が放つ沈鬱とした静謐はやはり、何かがあった事を表していた。
ノックする事も、挨拶する事もなく私は扉を開き、玄関に入っていった。その行為を少女は眉を顰め、怪訝そうに観察したが、私が手招きすると不承不承といった足取りで少女も玄関に上がる。
何の変哲もない廊下だ。木造らしくフローリングの床、玄関から上がった先は二階へあがる階段と一階の部屋へと行く廊下がある。私は迷わず一階の廊下を突き進んだ。少女も付かず離れずの距離を距離を保ちつつ私の後についてくる。
三つの扉が廊下にはある、右手に一つ、左手に一つ、正面に一つ。その内、正面の扉が微かに開いている。この静寂の中でまるで、こちらだと招いているように。私はこの先に何かあるということを確信し、足を進める。
扉まで近づくと音が聞こえた。ポタッポタッポタッ……。蛇口を閉め忘れて水でもたまっているかのように水滴が垂れるような音は規則的に耳に響いてくる。
私は中にあるものを確認するためにその微かに開いた正面の扉をゆっくりと開ける。
ギギギギッ。ゆっくり開けたせいだろうか、扉の蝶番が軋む音が沈静した空気に響き渡る。
中には青年がいる。彼はこちらを見ている。その瞳はまるでこの世の絶望を見たかのように澱んでいる。彼の瞳が私を捉える。いや、正確には私の後ろだろうか。私の後ろには言葉を失った少女が佇んでいた。
無理もない。青年の目の前には男女の死体が転がっていた。それも何度もナイフで突いたのか惨い死体だ。ここが少女の家ならば死んでいるのは両親か。
しかし、何故だろうか。少女の瞳はその両親の死体を見ているわけではない。じっと青年の瞳を捉えていた。
両者が見詰め合って数秒間。先に視線を外したのは青年の方だった。青年はその瞳を目も逸らしたくなるような残酷な骸へと向ける。
「見てくれよ日登美。仇取ったぞ。」
私達など眼中にないようだ。私は少女と青年の空間を邪魔しないように一歩横に退き、少女に青年の顔が良く見えるように配慮する。
「そんな事望んでないよ。お兄ちゃん、私はただ……。」
少女は青年を兄と呼んだ。少女の言葉を遮るように青年は言葉を続けた。
「ははは、望んじゃいないか。そうだよな」青年は自らを嘲笑うかのようにうっすらと口元が歪んでいる「何やってるんだ俺は、こんな事しても何にもならないのにな。」
少女は唇を噛み締め、拳を強く握る、何かに耐えるように。視線は床に下がってしまっている。また、神様でも探しているのだろうか。この悲惨な現実を変えてくれる神様を。そんな物どこにもいやしないというのに。
私はため息を一つ吐くと、少女の頭に手を置き、親が子をあやす様に撫でる。すると、徐々に少女の握られた拳の力は抜けていく。
その時、青年はその手に握られた血塗られたナイフを手放した。ナイフは甲高い音を立てるかと思ったが、床に落ちたそれは血にその音が吸い取られ、ゴツン、と鈍い音を立てたのみだった。
「もっと早く気付けてあげられたら、お前を助けてあげる事も出来たなのにな。」
私は少女を右手で撫でながら青年を見た。
彼の瞳は骸を捉えていたが、しかし、何か別の物を見ているように焦点が定まっていない。内に秘める何かを見つめているのだろうか。
その時、ふと私の手が引っ張られる。視線を少女へと移すと、少女は何かを訴えるかのように私を凝視していた。意図を汲み取ろうと私も少女を見つめ返していると、少女は先ほど私達が通った玄関を指差す。
なるほど、と私は頷くと少女の手を引き玄関へと引き返す。玄関の靴脱ぎ場の上に降り立った時、私はもう一度後ろを振り向いた。青年は、じっと耐えるかのように動かず物言わぬ骸達を見つめている。
少女が再び私の手を引いた。一刻も早くここから出て行きたいようだ。私は再び前を見つめると開きっぱなしの玄関扉を潜りぬけ、庭へと出る。
庭に出た少女は私の手を握ったまま、沈鬱そうに地面を見つめる。口元は囁くような小声で言葉を紡いでいた。
耳を澄ますと、微かにだが、少女の声が私の耳へと入ってくる。
どうして――どうして。彼女はずっとその言葉を口元で紡いでいた。
私はそんな少女の姿に哀愁を覚える。彼女の口元がむすぶ世界に対する呪詛の言葉をとめるために私は彼女の頭を撫でる。それが彼女の癒しになるかはわからない。只私は少女の頭を撫でる。只只少女の頭を撫でている。それでも私はやり切れなくなり、言葉をかけた。
「さぁ、神様を探しにいこう。」
そんな物はいないとわかっているのに。
けれど少女は静かに頷いた。
だから、私は手を引いた。それを探しにいくために。
だから、少女は歩いた。神様に会うために。そんな物はいないと、わかっているのに。
遠くでサイレンが聞こえた。音がする方角は先ほど訪れた家の方だ。
私達は今高台に居た。山というには小さすぎ丘としては少し高い見晴し台だ。ここでは街が一望できる。そんな中私はサイレンを聞いた。頭には先ほどの青年の顔が浮かぶ。
少女の顔を横目で見たが、少女は警鐘であるパトカーのサイレンを聞き取れては居ないらしい。顔色を変えずに街を見下ろしている。
地面に生えるビル群、小さな凹凸のように点在する住宅街。見下ろした街並みは普段少女が目にするものではないだろう。彼女はその街という機械の一つの歯車としてあそこには存在していた。機械の一部がその機械の形容する術はない。しかし、彼女は今や機械の一部ではない。こうして機械全体を観察する場所にいるのだ。
「これが君の住んでいた世界だ。」
私は少女の様子を伺いながら街を指差した。この見晴し台からでも街の息遣いが確かに聞こえる。東奔西走する小さな歯車たち、歯車と歯車は噛合い、また大きな体の一部が生えてくる。街とは大きな生き物なのだ。自己再生、自己複製、増殖する生き物。それが街だ。
少女はこの生き物を物憂げな瞳で見つめている。その視線の先には彼女が住んでいた場所がある。
その瞳に籠められた思いはなんだろうか。私にはそれを感じ取る事はできない。
「この世界に神様はいるかい?」
努めて優しく、私は彼女に諭すように質問する。
少女は応えない。
少女の答えを待つ間、私は目を細めて街を見下ろす。街道では小さい子供が犬に石をぶつけて遊んでいる。視線を動かせば集団で物を強奪している青年達、子供の腕にタバコを押し付ける親……。
ふと風がせせら笑うかの様にその存在を音として轟かせ、少女の髪を弄ぶ。すると、その風に呼応するかのように木々もざわめき、街も佇むビル群が嘲笑を発する。
「わかっているわよ、居ないわ、そんな物」幼くして希望を失っている少女が風達の嘲笑に同意するかのように自らをあざ笑う「あはは、居ないわね。神様なんて。天国もないし、地獄もない。あるのはこの世界だけよ。」
石をパンに変え、水をワインに変え、人を救った――そんな救世主はこの世界にはいない。そう希望を持つ事自体が馬鹿らしい。彼女の笑いはそんな意味を含まれているように聞こえる。
居ないと、解りながらも少女は神様を探していたのだ。なら何故彼女は神様を探していたのだろう。神様に会ってどうする気だったのか。そんな疑問が沸いて出た。が、私は彼女のその横顔を見ると、彼女から答えが返ってきたような気がした。
たしかに、万能の神様などいない。だが、しかし本当に彼女が求めるそれはいないと、彼女は思っているのだろうか。
「君は何か勘違いをしているようだ。」
怪訝そうに目を顰めて彼女は私を見る。何を馬鹿なっ、と。
そんな少女に希望を指し示すため今度は私が少女の手を引いた。
一瞬かもしれないし、一時間たったかもしれない。そんな時間の中で私は少女の手を引き、彼女の住んでいた場所に移動した。
連れてこられた場所が自らが住んでいた場所ということに驚いたのか目をパチクリと開いたりとじたりしている。
「さて、探してみようか。」
人通りがまばらなアスファルトの道路を歩く。車もあまり通らない。左右には様々な店が建っている。居酒屋、文房具屋、焼き鳥屋、着物、陶器……。しかし、どの店も客入りは芳しくないようだ。そんな廃れた商店街を少女と私は歩いている。
「何を探すって言うの」不機嫌そうに私の背中を睨みつける「いないのよ、神様なんて。もういいのよ。それが答えだったの。」
違う。私が言いたいのはそんなことじゃない。
商店街は静寂を貫いている。此処に私達しか存在していないように。しかし、そんな事はない。店を覗けば店主はいる。
私は彼を探して目を泳がせる。音は確かにこちらに近づいている。しかし、建物に音は反響し、正確な位置をつかめさせない。そこの曲がり角か、はたまた後方の十字路から現れるか。
耳を済ます。一定間隔に刻む低い重低音が私の耳には聞こえる。車のエンジンが鳴らすその音は確かに、徐々にではあるがこちらに近づいていた。確かであれば前方から彼は来ているようだ。
視線を背中に向ける。距離を開けながらも私の後を少女はついて来ていた。
確かな彼の接近を耳の鼓膜で掴み取った私は足を止めた。視線を前方に移す。そこからは一台のパトカーがこちらに近づいてきている。
私に追いついた少女も前のパトカーに気が付いたようで、目を細め、それを見る。
彼女は見えただろうか、その後部座席に乗る彼に。
「さぁ、君は彼の話を聞くべきだろう?」
私は少女を見る。少女は地面を見ている、彼をみないように。君が見るべきは地面じゃない。それを私は教えたくて少女の手を引いた。
罪を犯した事のない人間はいない。法律のことを言っているわけではない。何か人は後ろめたい事を一度や二度、三度はやっている。だからこそ、警察を見ると距離を取りたくなる。その罪の自覚があるから。
聖徒は制服を端然と着こなした警官達に連れられ、車に乗っていた。手には手錠がある。一切抵抗する様子もなく彼は車の天井を見ていた。後部座席に座っている彼の左右に二人、運転席に一人警官はいる。抵抗したとして敵うわけはない。
罪を犯した身となった今、逆に警察は安穏を呼ぶ。周囲の悪意のない刃から保護してくれているのだから。
そんな事を考えながら聖徒は身をシートに預けていた。窓の外の世界に興味はなかった。その世界には彼の興味を惹くものなどないのだから。
呆然としている聖徒の肩を隣の警察官が叩いた。その警察官は車のドアを開け、外に出ると彼を手招きする。聖徒の目の前には石造りの階段がある、そしてその先には警察署という看板と共に入り口があった。
ああ、そうか、ついたのか。そんな事にも興味を抱かず、聖徒は警察官に連れられる。警察署の床は足音を良く響かせた。コツン、コツンと一定の間隔で数人の足音が鳴り響く。しかし、それ以外の音は署内には聞こえない。姿見えぬ他の国家の番犬達はただ、息を潜めて彼らを観察していた。そんな中、聖徒が案内されたのは動物園の檻のような人に観察される場所だった。その部屋にはデスクチェアが対面するように二つ、そしてその間に仕事場で見かけるデスクが一つあるだけである。部屋に入り、右手を見るとそこにはマジックミラーがあった。その先に飼育員が何人いることか。
警察官に促され、聖徒は扉に向かい合うように椅子に座る。
聖徒の左右には警察官が立ち、その一挙一動を監視している。そして、一番年配の者が聖徒の向かい席に座る。その者の目を聖徒は捕らえ続けた。初老を迎えてはいるが、目じりの皺に負けず、その目は射殺さんばかりの鋭さがある。澄み切った夜空のように濁りの無い瞳だ。その純粋な瞳に聖徒は驚いた。そして、こんな状況になった今となってそんな人物に会うとはと、苦笑をもらす。
「君は工藤 聖徒だね。殺された家族の長男で間違いないかな。いや、君が殺した家族の長男か? まぁ、どちらも一緒の意味だろうが。」
初老の男性はその瞳に違わず温厚に聖徒に話しかける。その声色は人生の苦労がにじんでおり、殺人犯に対してこのような声色で話すのも彼なりの教訓なのだろう。
「はい。間違いないです。」
苦笑を浮かべながら、目の前の男性の瞳を聖徒は見つめ続ける。初老の刑事も何かしら事情があることは気付いているようで、特に急かすことも無く話を進めていく。
「書類によると妹さんが居るはずだね、あの家には姿は見えなかったけれど、どうしたのかな。」
妹の事を触れられ、聖徒は表情を強張らせる。日登美、その名前を反芻し、妹の姿を懐旧する。途端に憎しみが沸き起こってくる。が、それを唾と共に内に飲み込み、平常心を保ち言葉を返した。
「ええ、居ました。今はもう一人ですけれどね。」
聖徒の答えに初老の男性は肩を落とす。そして、ため息をひとつ、吐いた。
「それで?」
「妹がどうなったのか、正確に私は知りません」歯をギリッと、鳴らし、拳を握る「ただ、大体の事はお話できます。それが理由で私は両親を殺したのですから。」
一同は困惑の表情を浮かべる。そして、その疑問を胸に初老の男性が口を開きかけたその時、部屋に若い男性が一人入ってきた。青色の背広を着込んだその姿はさながらドラマの刑事のようだ。と、そんなことを思った聖徒は再び苦笑を口に浮かべた。
若い刑事は初老の刑事に耳打ちで静かに用件を伝える。すると、初老の刑事は瞳を見開き、驚愕を隠そうともせずその顔に浮かべた。用件を伝え終えた赤いネクタイが特徴的の若い刑事は入ってきた時を逆再生するかのような動きで部屋から出て行った。
初老の男性は机に肘を立て、指をくんだ。今までの話を一旦打ち切るように一時の静寂が場を制する。その、空気が変化しようとする雰囲気を加速させたのは初老の刑事の言葉だった。
「君が両親を殺した理由は彼らの犯罪か?」
そうか、あれが見つかったのか。そんな言葉と共に、やっとか、という感情が聖徒の心に巣くった。そして、驚く事も無く、場の進展が当たり前だと言うような態度でうなずいた。
「ええ、そうです。」
「それで、君の妹も……」言い出しにくい事なのか言葉が詰まる「君の妹も、彼らの被害者のわけか。」
一向に進展を見せない刑事の言葉に聖徒は歯がゆさを覚える。
「すべて、日誌に記されていた通りですよ。」
そう聖徒が告げると刑事は何も言わず喉を唸らせたのみだった。
重い沈黙が空気を飲み込む。その沈黙ゆえに刑事はただ口をつぐむが、聖徒にはただ、わずらわしいだけだった。
「だから私は両親を殺した、これでもうお終いでよろしいですか?」
話をやめようとした聖徒を初老の男性は手で制止する。そして、その男性は聖徒の右手に佇む警官にお茶を持ってくるように命令する。命令された警官は敬礼した後、小走りで部屋を出てていった。部屋には何処からかカチカチと時計の音が響いてくる。聖徒の左手に佇む男性の腕時計かもしれないし、目の前の刑事の懐中時計かもしれない。その音が耳に馴染んできた時、扉が開かれ、先ほど消えた警官があらわれた。両手にガラスのコップを持ち、中には幾ばくかの小さな氷が浮かんだ茶色いお茶がはいっていた。
そして、その警官は初老の刑事と聖徒の前にお茶を置く。
お茶は良く冷えているようでガラスの表面には結露が見える。滴る水滴はコップを伝わり、たらり、たらりとデスクに滴っていく。
そのお茶と初老の男性の顔を聖徒は交互に見る。眉を顰め、何か疑うかのように怪訝そうな顔をしていた。その反応は既に慣れているといった様子で特に気にする事もなく初老の男性は鼻を鳴らすとつけっぱなしにしていた聖徒の手錠を身を乗り出してはずす。
「私は警察をやってはいるが、法律が全てだと思ってるわけじゃないよ。そんな思想は裁判官だけで十分だ」手錠を外し終え、再び椅子に深く腰掛ける「事情は大体把握した。」
初老の男性の包みこむような暖かさに気圧され、聖徒は言葉を失う。
初老の男性は目の前のお茶を口を濡らすために少しだけ口をつける。喉が渇いていたのだろうか、彼はコップの縁から口を離すと、極楽極楽といった様子で肺に常駐する酸素を少し口から吐き出す。
「私の経験上犯罪者には二種類いる。」初老の男性は人差し指と中指をたて、聖徒にみせる「己の欲望を成就せんがために法に唾を吐き、犯罪を犯すもの。」
そこで初老の男性は中指を折った。重大なことを言うように一呼吸おいた後、口を開いた。
「そして人のために自ら仮面を被り、矢面に立つものだ。」こんどは人差し指を折る「私が思うに君は後者の人間だ。恥ずかしい話だが、警察というのは万能じゃない。指先の間から零れ落ちる砂粒のように認知できない犯罪が数様々ある。そしてそれによる被害者もな。」
そこで初老の男性は聖徒を見た。そこで状況を読み込めていない聖徒に気が付き苦笑をもらす。
まだ口のつけられていないお茶のコップを指差し、聖徒に微笑みかける。
聖徒は初老の男性の指先を目で追う、そこには氷がすでに解け始め、デスクに小さな湖を創りはじめているコップがあった。飲め、という相手の意図を理解した聖徒は喉は水を欲していないが、一口、お茶を口に含む。しかし、一口と思った量は意外に多く、一度に半分の量が口へと消える。舌に当たる冷気を帯びた溶けかけの固体を咀嚼し、水として嚥下する。気がつかぬ内に砂漠の砂のように乾いていた喉に驚きながらも、何かを口に含んだお陰か、徐々にだが頭の歯車が軋みだす。
「落ち着いたようだね。」初老の刑事は聖徒に微笑みかける「さて、私が言いたい事はそんな不条理な犯罪に巻き込まれ、自らの正義を貫き、悪人を倒した犯罪者も大勢いるということだ。これに対して賛否両論はあるだろ。ただ、私は君のようにそうして犯罪者になってしまった者には敬意を表するよ。法律もまた万能ではない。悪人が法律を作っていないと誰が言えようか? つまり、そういうことだ。人が人を裁ける法などありはしないと誰かが言っていたことを思い出すよ。警察官がこんな事を言っていたら問題かもしれんがな。」
本当に子供のように純粋な人なのだな、と聖徒はそう感じた。
警察という立場上彼の考えでは納得できないことなどいくらでもあっただろう。だが、今もこうして国家の番犬たる警察を立派に努めている。そして見たところによると他の警察からの信頼も厚い。ここまで自らの仕事に向き合う人間は何人いることか。
そこで聖徒は殺す、という短絡的な方法でしか解決を導き出せなかった自らの浅ましさを恥じた。
「君にこんなことを話すのは私は君を否定しているわけではないと知ってもらうためだよ。ただ、矛盾するようだが、私は犯罪者を許さぬ番犬だ。負の連鎖を断ち切るために私は番犬を続けている。そうした殺し合いには終わりなどないからな。鑑みたところ、君は自らを絶対的な正義と信じる狂信者ではない、そうだとしたら君は警察に自首などしなかっただろうからな。だから君になら私の言葉は理解できると思う。自らの罪と悪を省み、数年浮世から隔離された後、新しくまたこの世界を君の瞳で捉えて欲しい。」
この世界は君が思っているような汚い世界ではないから。そう言っているように聖徒は感じた。男性の優しさは荒んだ聖徒の心に染み渡っていく。助けを求めても誰も助けてくれず、全てに見切りをつけて、殺人を犯したはずだった。この世界には優しさなんてものはまやかしなんだと。
しかし、ああ、どうして。――どうして、今になって神様が現れるのだろうか。
聖徒は哀愁を覚えた。こんな人がもしあの時自分の傍にいてくれたら。そんな思いが心には満ちている。そして、他人を拒絶していた心の膿を吐き出すかのようにぽつり、ぽつりと過去を語り始める。この人になら、話してもいいだろう、聖徒はそう感じたから。デスクの上のお茶の氷は既に全てとけきっていた。いまは大粒の涙を流すようにその身についた雫をデスクへと吐き出している。
「私と妹は血の繋がらない年の離れた兄妹でした。私の父の再婚相手の連れ子が妹でした。私は直ぐに社会人となってしまったため、一年に指折るほどしか会っていませんでしたが、とても聡明で健気な笑顔の似合う、私の初めての可愛い妹だったんです……」
初老の刑事はそれをただ相槌をうちながら聞いていた。
一部始終が終わったのち、警察官と聖徒は連れ添ってでていった。が、誰も目も留めぬ二つの人影がそこには残っていた。一人はその視線を先ほどまで聖徒が座っていた席に向けている。じっと、ただ静寂の中瞳でその椅子を捕らえ続けていた。そこにいる何かをまた見ようとするように。
「確かに、万能な神など居はしない」
兄と警察のやり取りを一部始終観察した私達は今、場所を戻り彼に会うために訪れた廃れた商店街にいる。私は一定の歩調で歩みを刻んでいる。その後ろから少女は空を呆然と眺めながらついて来る。
「だが、人を平等に愛し、それを見守る神など居はしないが、只一人だけでも自分を誰よりも思ってくれる人間、自らのペットでもいい、そういう存在は確かに存在する。気がつかないだけでね。」
ふと、後ろから聞こえる足音がやむ。私は少女に合わせ歩みを止めると少女の様子をみようと後ろを振り向いた。
少女は立ち止まり、首だけを動かしてその瞳で彼女の左手にある店を捉えていた。店先の看板には駄菓子屋と書かれている。大きく入り口の引き戸が開け放たれているため中を見ることが出来るが、中に人影は見えない。しかし、木の枠に結霜硝子が嵌められた引き戸には商い中の札がついている。ここも寂れた商店街の一角だろうか。
「昔からお兄ちゃんは此処で鯛焼きを買ってくれたの。前に買ってくれたのは半年前かな。会えるのは一年に五回くらいだった。けど、会えない分いつも存分に私にかまってくれたの。私の我が侭も良く聞いてくれた。」
ここが少女の思い出の場所なのか、そう思うと急にその建物が感慨深く見える。朽ちた木製の店、しかし、その朽ちた素材に刻まれた傷一つ一つに何かしらの思い出が篭っているのかもしれない。
じっと私が駄菓子屋を観察していると、少女は慣れた足取りで私を追い越し、何処かに歩いていく。視線で少女を追い、見失わぬように後についていく。二、三分歩いてたどり着いた場所は道の脇に小さく佇む石造りの階段だった。階段の続くその先を見ようと目で追う。しかし、石造りの階段の左右は翡翠色を体現する木々の葉が繁茂しており、それらに遮られ先を見ることは叶わない。
私がじっとその先を見ようと見上げていると、少女は石造りの階段に腰を下ろす。彼女もまたすわりながら階段の先を見つめ、指差した。
「あの先には神社があるの。初詣はお兄ちゃんといつもあそこでお参りしたの。そして、ここに座って鯛焼きを食べてた。」
目を凝らさずとも石造りの階段は整備が行き届いていない事が見て取れる。階段の角は丸まり、削れてしまっている場所すらある。表面には青々としたコケが点在しており、日に当たらぬその階段はどこか湿気を帯びているようにも見えた。恐らくこの階段の先にある神社もその社の柱は湿気で腐りかけているだろう。
「それしか楽しい思い出が私にはないの。お母さんは何時も私を見ようとはしなかったし、新しいお父さんもまた私の名前すら呼ばなかった。けど、なんでだろう。お兄ちゃんが出来てから一度も自分って不幸って思ったことが無かった。その前は楽しい事なんて知らなかったから生きるってなんなんだろうなって真剣に考えていたけれど、そんな事もなくなったの。それは自分で思うに真剣に私を愛してくれてたからだとおもう。変な意味じゃない、両親の代わりに私を愛してくれていたの。
たぶん、お父さんとお兄ちゃんは仲が悪かった、一度も会話しているところを見たこともないし。私とお兄ちゃんは似たもの同士だったのかな、だから私を一番理解してくれていたんだとおもう。」
少女は階段に座りながら空を見上げている。木々の木漏れ日からから見える輝いた蒼穹。それが彼女の瞳にはうつっているだろう。他愛ないありふれた景色だが、きらきらと輝いた隙間から覗かせる虚空には目を見張る美しさがある。
少女は憑き物が落ちたように清々しい微笑みを浮かべている。初めてみた彼女の微笑み、その光景とこの景色。それは一枚の絵にして取っておきたいほど幽玄だ。
「君が探していたものは万能な神様じゃなかった。只一人、自分を救ってくれる自分だけの神様を探していたんだ。それは君にとっては兄である彼だった。」
何処からか吹いてきた一陣の風が彼女の髪を撫でる。そこには微かにだが鯛焼きの生地と餡の匂いを嗅ぎ取ることができる。風に晒され、木々の梢はゆれ、木漏れ日は移ろう。まるで変わらぬ物などありはしないかのように。
「ええ、そう。そうね。私はこの世界をどうにかして欲しいだとか、運命を変えて欲しいだとか願ってたわけじゃない。ただ、救いが欲しかっただけ。天国には優しさしかないんでしょう? ……けど、天国も神様もいない、それが現実だってわかってはいたのだけれどね。」
少女は立ち上がる。空を見ていた視線を今度はまっすぐ私に向けて。
「ねぇ、でも神様って本当にいないのかしら。」
「ああ、いないよ。」
私はそれに考えもせずに答えた。納得のいかない表情を少女は浮かべたが、特に言及することなく再び歩みを進める。それを不思議に思い、私は少女に声をかける。
「何処に行くんだい?」
少女は歩みを止めずに答える。
「私がいる場所」顔だけを私に向ける「あなたと会った場所っていったほうがいいかな」
なるほど、私は頷き、少女の後を追う。
数分かもしれないし、一時間たったかもしれない。そんな感覚の中私達は場所を移し、その場所へと帰ってきた。少女はまた道端に佇む。しかし、今度は空を見上げて。
「しかし」私は少女の後ろにある場所を見る「しかし、なぜこの端正な住宅街の中、此処だけ何もないのだろうか。」
少女の後ろには誰の手も加えられていない土の地面が露出している一角がある。正方形にその土地は確保されており、まるでここだけ家だけがどこかに移動してしまったかのようだ。草は少女の胸の高さまで伸びている。たいぶ長い間此処は手をつけられていないらしい。子供達が遊ぶ場所として確保されいるのだろうか。
私のふとしたその疑問に少女は視線を私に向け笑って答える。
「ここに私はいるの。ただ、私はここだけじゃなくこの世界の何処にでも点在する、どこにいるのかは私自身にもわからないけれど。」
「ああ、なるほど」相槌を私はうつ「ここに君がいるんだね。」
只少女は私に笑いかけた。そしてまた空を見上げる。
「だから、私はここにいる事にするわ。ここに居ればいつか兄が私を探しに来た時見つけ易いでしょう?」
少女は既にその顔には悲しみを湛えてはいない。兄の思いが彼女の心を救ったのだろうか。それは私にはわからない。ただ、解ることは私の出番はここまでだろうということだ。
そうか、それだけ彼女に言い、私はその場を後にしようとした。まだ、一つ残る疑問を見定めるために。
しかし、後ろから少女に呼び止められる。
「ねぇ、あなたはさっき、神様はいないっていったわよね。」
振り向かずに私は答える。
「ああ、言ったよ。」
「じゃあ、あなたはなんなのかしら。」
「それは」私は少女の方を振り向いて、優しく微笑む「この世界を創った、ただの傍観者さ。」
少女は満足したように微笑みまた空を見上げた。虚空は日輪を称え、雲が彼の姿を隠すを許さない。降り注ぐ温もりは生物か無機物かそれ差別なく平等に包み込む。その温もりに触れた植物は歓声を上げるかのようにその花、葉を彼へと向ける。ふと、私は空を見上げこう思った。万能の神様とは彼の事を言うんじゃないか、と。微笑みをひとつ私は漏らす、そして、また歩みを進めた。
そこは監獄へと送るものを査定する場所。私は少女の兄がいる警察署の屋上にいる。その警察署の最も高い場所、貯水タンクの上に腰をかけ先ほど署内から拝借してきたある日誌を読もうとしている。ここならば彼女が仰ぎ見る空が私にも見え、暖かな春風を感じることもできる。日誌を表、裏と返しその表面を見る。特に文字は書いていないが、そこについた汚れ、そして色あせた褐色が長い年月使われていたことを伝えている。
私は、日誌を開いた。しかし、そこには何も書かれていない。頭をひねり、今度は逆側の表紙を開くと、縦書きでぎっしりと文字が書かれている。どうやら逆側を開いていたようだ。文字を指でなぞり、それを読んでいく。
八月十九日 晴天 三人目
さて、俺は今日からこうして日記をつけると決めた。この日は夏らしく熱かった。三人目の少女は佐藤 巴 十六歳だ。帰宅途中に車で拉致、殴って気絶させ、その内に解剖。例の奴らに売ったら全部で四百万だったな。中身の無くなった皮や肉と骨はまたあそこに埋めた。アイツはまた心臓を焼いて食べていた。何がいいのかよくわからない。本人は美容にいいのだと言っているが。まぁ、協力してくれるあいつには感謝しているさ。三十万ほど聖徒に仕送りしておこう。俺は機嫌がいいからな。
「これは……。」
次のページには佐藤巴と思われる人物の写真が数枚張られている。両面テープで張っているようで、紙は皺にはなっていない。車のシートで寝ている女性の写真。全裸の女性の写真、顔や体中に青い痣が出来ている。次に胴体を縦に切りさいた、女性と思われる写真、首から先はない。
ページを捲るとまた同じような記述がある。三、四ヶ月に一回のペースで女性を襲っていたようだ。私はそれらの記述に全て目を通し、写真を目に焼きつけ、ページを捲っていく。何ページ捲っただろうか、やっと見たかったページに行き着いた。そのページだけは感慨深く、慎重に一字一句を見定めていく。
一月 二十四日 嵐 十人目
記念すべき十人目、俺はふさわしい奴を探していたがいまいちしっくりこなかった、外は雨。雨音に俺がイラついていると、目の前にいつものように洗濯物を部屋に干す我が娘が目に入った。とたん俺の体に衝撃が走った。十人目にコイツ以外に相応しい奴はいないと。名前は、工藤 日登美。俺は我が娘を車に連れて家を飛び出した。空は俺を歓迎してくれているようだった。馬鹿みたいに俺を見つめる娘を殴りつけ、気絶させずに服を切り裂き、体をさいた。うるさかったので舌を引き抜き、口にタオルをつめてやった。さすがは我が娘、臓器は全て美しかった。それをまた奴らに売ったら千五百万にもなった。アイツはまた心臓を食べている。自分の娘の心臓に興奮しているのか何処かいつもより上機嫌だ。死体はまたアソコに埋める。ああ、これで寂しくないだろう我が娘よ。気分がいい。聖徒には五百万ほど送っておいてやろう。
テーマは「ちいさな幸せ」です。
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