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老人は一人契約者を失いながらも笑っている。
老人は崩れていく二つの黒い十字架を見つめていた。
「少年は生きた人間では絶対に切り離せないはずの『悪意』と『憎しみ』を一時的とはいえ切り離し、契約を破棄なされた」
老人は光り輝く二つの白い十字架を見つめていた。
「少女は生きた人間では絶対に手に入れる事のできない純粋な『愛』と『善意』を手に入れて見せた」
老人は笑った。
「絶対……なんてものは無いのですね。こうしてこの兄妹は絶対に無理だと思っていた事をやってみせた……人間は無限の可能性を秘めている……人間は無理な事だってやってのけてみせる……」
老人はまだ笑っている。
「だからこそ人間は面白い」
こうして二人の兄妹の物語は終点を迎えた。
それが偶然の結果だったのか必然の結果だったのかは分からない。
だが、人間の願いは、思いは時として限界を超える事もある。
これでこの兄妹の物語は簡潔です。
もしかしたら感情の契約者をシリーズ化するかもしれませんが……それは私の執筆速度とかいろいろ問題があるんですよね……。
最後にここまで読んでくださったかたありがとうございました。