二人の契約者を手に入れ老人は笑う。
この作品はプロローグ、エピローグ合わせて五話で完結したと思っております。
どうかよろしく願いします。
老人は目の前に立っている少年に話しかけた。
「あなたに『悪意』と『憎しみ』の席を与えましょう。あなたはこの二つの感情の契約者になるのです」
そして老人は一枚の紙を少年に手渡した。それは『契約書』。
「しかしこの二つの感情の契約者になった時、あなたは自分の身近な人間を憎く思う事になるでしょう」
老人は少年に忠告をした。
しかし少年は契約書に迷いなく自分の名前を書き込んでいく。
「よろしい。これであなたは力を手に入れた。自分の存在を世界に認めさせる力を……」
老人がそう言うと、老人の後ろにあった二つの椅子の上に黒い十字架が立てられた。
「この十字架はあなたの契約した証。あなたの心の一部です。
どうか後悔の無い旅を……」
そして老人は笑った。
◇
老人は目の前に立っている少女に話しかけた。
「あなたに『善意』の席を与えましょう。あなたはこの感情の契約者になるのです」
そして老人は一枚の紙を少女に手渡した。それは『契約書』。
少女は契約書に迷いなく自分の名前を書き込んでいく。
「よろしい。これであなたは力を手に入れた。あなたが失った彼にもう一度、救いの手を差し伸べる力を……」
老人がそう言うと、老人の後ろにあった椅子の上に白い十字架が立てられた。
「この十字架はあなたの契約した証。あなたの心の一部です。
どうか後悔の無い旅を……」
そして老人は笑った。
感想などお待ちしております。