24・乱臣賊子 後編
「ラオが生きていればねえ」
私は想像してみるが、魔王軍がより精強になり、人間たちの被害が拡大しただろうという以上のことは考えられなかった。ガイに負けたくらいなので、勇者ラインかクレナによって倒されるかもしれない。
そこでふと疑問が湧いたが、ガイに倒されたというラオ。そのラオに負けたというハイテ。しかしハイテは手の付けられない迷惑な悪魔。何か矛盾を感じる。
誰に倒された、という事実関係から考えるとハイテはガイより実力が下ということになってしまうのだ。どうもそんなはずはないと思える。ルイの話からは、ハイテの脅威はガイのそれよりも上に感じられたのだ。果たして本当にラオはハイテを倒したのだろうか?
「ハイテやユイのことはこのくらいか」
ホウが一度話を切った。
確かにラオやハイテといった昔の悪魔のことを考えていても仕方がないと思える。ユエは一人だけ生き残っているが、精神操作を受けていたというのでは。たぶん、これ以上の情報を得ても生かす機会がないだろう。
「次は、クレナの魔法のことにしよう。おそらくだがお前たちが見たのは、複合魔法だな」
「複合?」
また聞いたことのない単語が出てきた。私はおうむ返しにする。
知っているかどうかとブルータに目を向けてみるが、彼女は完全にうなだれてしまっていた。寝ているのだ。夢の世界に旅立っている。大事な話をしているのに、とは思うが疲れているだろうから起こすわけにもいかない。霧の衣装があるから風邪をひく心配なんかはないだろう。
私たちは話を中断し、ブルータを寝かせることにした。冷たい地面の上にシートを広げてその上へ寝かせる。深い眠りについているらしく、ホウが抱えても彼女は目を覚まさなかった。フーナと並んで眠ったかたちになっている。
「ブルータには私から話をしておくから、続きをお願い」
一仕事終えたホウに促すと、彼女は深い溜息を吐いて、倒木に腰かけなおす。
「まず大前提として、通常、魔法は一度に一つしか練り上げられない。片手で『爆炎の呪文』を練りながら、もう片方の手で『凍結矢の呪文』を用意するなんてことは無理なことだ」
「まあ、普通はそうね」
間違ってはいないが、最近崩れてきつつある定説だ。四天王のリンは同時に同種の魔法を三つも練り上げることが可能で、それを『束ね撃ち』と称している。私はそれを口にした。
「でもリンは同時に魔法を使っているでしょ。同時にいくつかの魔法を練るのはやってやれないことじゃない、ってことがわかってる」
「非常に難しいが論理的には可能ということだ。そういう話になると、さっき大前提で話した『爆炎の呪文』と『凍結矢の呪文』の同時行使も、実のところ完全に不可能というわけでもない」
「無理だから」
どう考えたってそんなことは無理だ。断言してもいい。魔力の操作がどうのこうのという問題ではないのである。魔法は、魔力を精神と反応させて練り上げるものだ。人間や妖精あるいは魔族など、生物の精神がそれぞれ一つしかない以上、二つ以上の魔力を精神に近づけたら、あきらかに混乱が生じる。そうなったら望みの魔法なんかに変えられるわけがない。魔力で疲労を溜めるだけの結果に終わること請け合いだ。
リンのように同種の魔法を複数というならまだなんとかなるような気もするが、異種の魔法を複数なんて、絶対に無理だ。
「しかし、実際それをやってのけたのがいるから困る。それがお前の見た女勇者クレナだ。魔王軍側にはこれを成し遂げた悪魔はいない。何十年か前にはいたがな、すでに死んでいる」
「確かに見たけど。本当にあれは一人で二つの魔法を使ったの? しかもそれをなんか合体させてたみたいに見えたけど」
「私も自分の目で見たからいうが、そうとしか思えない。しかも同時にそれを放つのではなく、奴は二つの魔法を合成させて使うことができるようだ」
「それが、複合魔法?」
つまり二つの魔法を合体させて、未知の魔法をつくりあげるということらしい。ここまでくるともう何が何だかわからない。
「そういうことだ。リンの『束ね撃ち』は三つ同時だが、クレナの『複合魔法』は二つ。しかし異なる魔法を合成してくるせいか、その威力はそれぞれ同時に放った時よりも非常に大きくなっている。『束ね撃ち』より少ないからといって軽く見てはいけないだろう。私にはどちらもできそうにないし、馬鹿げた威力であることは間違いない。おそらくあれをまともに食らったら、命がないな」
「比べる先がおかしいんじゃない?」
リンの『束ね撃ち』と比較している段階で、どれほどの破壊力があるかは知れる。そういえば以前ルイが洞穴を破壊したときにすさまじい威力を見せたが、あれはただ反応させる魔力を上乗せしたことによるものだ。あの程度なら術者の技量ということで納得ができる。が、クレナが放とうとしていたあの魔法はそういう次元にない。私たちは覚悟を決めるヒマもなく、「あっ、死んだ」と確信したほどだった。
それに加えて、その恐怖の一撃をさえ軽く受け止めてみせた勇者ラインもいるのだ。
これはつまり、仮にブルータや私が『複合魔法』を習得したとしても、それでもって勇者ラインを打ち倒せないということになる。明らかに規格外すぎる。
むろん四天王のホウやリンも十分すぎるほど常識から逸脱した強さをもっている。しかし勇者たちはさらにその上をいっているということだ。
「魔王軍は負けるんじゃない?」
このぶんでは、四天王のシャンに対するフォンハの死の予告も当たる可能性が高い。確かシャンは強力な攻撃で影だけ残して消えるんだっけか。
「さあな。今のところはわからない」
「わからないって、そんな。ホウだって魔王軍の四天王でしょ? それもいちばん情報を持ってる諜報部。戦況分析とかないの」
「予断を許さない状況だということは間違いない。確かに勇者たちは考えられないほどの強さをもってきているが、魔王軍にはまだ四天王が二人残っているからな。リンは一人で戦況をひっくり返せるだけの力を持っているし、シャンの策略がうまく決まれば勇者たちも追い込まれるかもしれん」
自分のことを早くも魔王軍の戦力から外して考えているあたり、ホウはどちらにも味方する気がないようだった。
「それに、蹴散らされているとはいえ魔王軍にはお前たちにも匹敵するほどの戦力がごろごろいる。勇者たちがそのすべてを無視して、四天王とだけ戦えると思っているのならそれは間違いだ。これは正々堂々と一騎打ちができる試合じゃなく、戦争なんだからな」
「そうなんだけどさ、どんな大軍が出てきてもクレナの複合魔法一発でその全軍が消し飛ぶってことは考えられないかな。私が今どう考えてみても、魔王軍が負けるイメージしかないんだけど」
「そのためにシャンがいるんだ。たぶんやつは何か有効な手立てを考えるだろう。クレナの魔法についてはずいぶん前から報告を上げているから、無対策ということはないはずだ。例の障壁を起動したのも、案外その対策のための時間稼ぎなのかもしれない」
私は四天王のシャンについては詳しく知らないので、彼がどれほどの英知をもっているかは知らない。レイティの記憶でも治療用の『虫』を開発したり、ブルータやルイを改造したりといったことしかしていないのだ。戦略的なところも彼に一任されているのだろうが、勇者たちの力の前にせっかく支配した町を取り返されているので、あまり優秀という感じがしなかった。
ただ、魔王軍四天王の筆頭であるリンの実力は証明されている。ホウと戦っているところしか見ていないが、あれは確かに凄まじい力だった。たぶん、勇者たちの力に比べても劣らないだろう。『至高の呪文』の強さも確かだ。あれが三つも同時に飛んでくるとなれば、『複合魔法』の力を超えてもおかしくない。あるいは、勇者ラインを塵芥に変えてしまえる。
リンと二人がかりでいけば勇者たちを倒せる、と以前ホウが言っていたのを思い出す。今考えてみるとそれは確かにあたっているわけだ。リン一人でも十分に倒せる可能性があるのに、それにホウが加勢すれば大丈夫だと思える。的確な分析だったのだ。
ここでホウが抜けてしまうとリン一人になってしまうわけで、魔王軍としては手痛い。それでもシャンという四天王がまだ残っているので、ホウは勇者が勝つとは言わずにいる。そんなところだろうか?
「戦力的な分析だけならこのくらいだが、地勢やら兵站を考えるともう少し変わってくるかもしれないな。人間たちだって軍隊をもっているわけだし、新しい勇者が出てこないとも限らない」
「そうだろうけど。ところでシャンってそんなに強いの?」
ふとした疑問をぶつけてみる。
「わかっているとは思うがやっこさんは頭のほうが得意だ。自分で直接戦うなんてことはまずないが、そうしたとしても生半可な相手では五秒もたたないうちに転がされるだろう。フェリテとロナが二人がかりで行ってもたぶん、同じことだ。奴も四天王の一人として恥じないだけの戦力だといえる」
「そ、そう」
参謀部といえども、決して戦闘能力的に穴ではないということか。特にすさまじい魔力をもっているとか、そういうことはないように思えるが。
「以前、”魔王の声”が四天王が集まっている場で質問をしたことがある。いわく、人間たちを二つにするにはどうすればいいか? そういう質問だった」
「うん?」
唐突に昔話が始まって、私は首をかしげる。何か今の話と関係があるのだろうか。
「そのときの四天王は、どう答えたかという話だ。魔王の声が質問した以上、質問に対して質問をすることは許されない。四天王はそれぞれの解釈で答えるしかなかった。お前ならどう答えたかな」
「人間たちを二つにするには? うーん、男女で一組にして子供ができるのを待つとか」
「ずいぶん長期的だな」
ホウは薄く笑ったが、私にはそれ以上の答えを思いつけないので仕方がない。
「まずガイがこたえた。『俺の手刀で横なぎにすれば、真っ二つだ』この答えに魔王の声は頷いたが、満足はしていないようにみえた」
「単純に気持ち悪いからじゃない?」
四天王でも最も暴虐な性格のガイらしい答えだといえる。
「それで、次にリンが『どれほどの軍勢であろうと、自分の魔法なら二つに割れるだろう』とこたえた。ガイは単純に目の前の敵に対しての返答だったが、リンは軍勢を相手に考えたわけだ」
「少しは大局的になったわけね」
「まだ魔王の声は満足げでなかった。そこで私が『人間たちといえど一枚岩でないので、思想や宗教によって二つに色分けできる』と伝えた」
「さすが」
私は少し感心した。前の二人に比べてずいぶん平和な答えだったからだ。
「最後にシャンが言った。『人間たちのところへ、勇者となるべき若者を送り込もう』とか、そんなことを。『模範的な行動をとらせて人々から勇者として期待を集めさせれば、人間たちは信仰は真っ二つだ』と説明がされて、魔王の声は満足した」
「参謀らしい答えね」
「そうだな。だがこの上なく悪魔らしい答えでもある。裏切りが前提だからな。同時に、奴が世界の半分の人間の支持を得ている勇者を相手にしても、勝てるという確信があるからこそいえることだ」
「半分?」
それって、今の勇者ラインと何が違うのだろうか。だって、今いる勇者はラインとクレナの二人。それぞれが期待の魔法を受けているとして、半分ずつ。これだとシャンが勇者ラインに勝てるということになってしまわないだろうか。
私はそれを訊いてみたが、勇者ラインは別格だといわれた。
「ラインとクレナはただ単純に期待の魔法を受けて強化されただけじゃない。元々から別次元の力をもってる化け物だ。ほとんど無名のときからガイの別動隊を壊滅させ、北のドラゴンを虐殺した。あいつらは支援魔法どうこうという段階にない」
「ふぅん」
「奴は別として、ひとまずシャンは世界の半分の期待を集めた勇者が相手でも勝てるということだ。それを四天王も魔王の声も疑っていない」
魔王軍の戦力も決して勇者たちに劣るものではない、ということらしい。ホウが予断を許さないといっていた意味がわかった。
「質問の答えはこのくらいでいいか?」
「ちょ、ちょっと待ってよ。肝心なところを忘れてるじゃない、ホウはこれからどうするの。魔王軍を抜けるって言ってたけどそんなことして平気なわけ?」
話を打ち切ろうとするホウに、あわてて食い下がる。彼女は、ついとこちらに顔を向けて軽く首を振った。
「平気ではないが、お前たちこそどうする気なんだ」
質問をしたのに、質問で返されてしまった。
「そういわれても、さっき言った通りなんだけど。とにかくフーナの治療をしなきゃいけなかったから、山林都市を目指してた」
「だが、あの子の傷は治した」
「うん。そうなっちゃったのよ。でもこのまま連れてはいけないでしょ」
「あの子を大切にするならそうだが、そのへんのことはひとまずおいておこう。お前たちは何をしたいんだ?」
「お母さんに会うために、本部に入ります」いつの間にかブルータが顔を上げている。「これは、絶対に曲げられません」
さっきまでほとんど寝ていたのに。ずっと話していたので、うるさくて起きてしまったのかもしれない。
私はホウを見やった。四天王のホウは口元を翼の先で隠し、くつくつと笑う。ブルータを馬鹿にしているのではなく、状況を楽しんでいるときの笑い方だ。少し笑ってから、すぐに真剣な顔に戻った。
「そこまで覚悟があるなら、結界を突破することをもう少し真剣に考えたらどうだ」
「勇者があれを砕くか、そうでなきゃすごい魔道具を手に入れるしかないんでしょう。その傀儡の玉じゃ無理だっていうけど」私が横から口を出す。
ホウはあきれたように件の魔道具を見つめる。傀儡の玉は背嚢の上に置いたままだ。
「たぶん、そのアドラという半魔族は魔力を集めるだけの魔道具をもう一つ持っていたんだろう。そいつでもって、その傀儡の玉を利用していた考えられる。そうでなければ、一つの町のすべての住民の無意識に命令を組み込むのは難しい」
「その魔道具を見つけてくれば結界を壊せますか」
「お前たちの話から判断すると、そいつはもう勇者たちが持っていってしまっているな」
全くおっしゃる通りだ。となると、近いうちに勇者たちは結界を割ってしまうだろう。そのまま快進撃を続けて、魔王軍の本部を破壊することになるかもしれない。
「それでも私は、本部へ行くんです」
「ずいぶん確信があるようだが、どうして本部に母親がいると思っている」
かたくななブルータに、ホウが目を向けた。特に嘲り笑うような色はなかった。本当にただ訊いているだけのようだ。
「それは」私が以前聞いた理由を言おうとする。
「私はブルータに訊いている」ホウが私を止めた。もう黙るしかなかった。
ブルータは少し言いづらそうにしたが、ホウは促すような目を向けたままだ。私も黙っているので、しばらく火の燃える音しかしなかった。
「なんとなくですが」
ようやくブルータが口を開いた。
「お母さんが、そこにいる気がします。助けてほしいと、私に呼びかけている気がするのです」
「そんな曖昧なことで命をかけていいと?」
少し、ホウの表情が崩れた。それを隠すようにさっと翼を上げて口元を隠したが、私には彼女の笑みが見える。
「ずっと、そういう予感がしてます。変なことを言ってると思われるかもしれませんが、私には確信できてます」
それは思い込みじゃないか、と私は思う。
もうそこしか探すところがないから、最後の望みをかけていくだけのこと。それを、そこに行きさえすれば母親に会えると思い込んでしまったゆえのものだ。自分で自分を暗示にかけてしまっているに過ぎない。
けれども誰がそれを彼女に説明できるだろうか。私はその勇気を持たない。母親を探すことなんてあきらめて、どこか魔王軍の目につかないところで好きな花でも育ててのんびり暮らす。そうできたらどんなにいいかと思うけれど、彼女の壊れかかった心では母親以外に執着をもてないのだ。探すことをあきらめてしまったら、あの牢獄にいたころの死を望む彼女が残るだけ。
私は今までに、レイティの記憶も含めて心からブルータの笑ったところを見たことがない。涙を流しているところも! ルイや私と話しているところがせいぜい、一番楽しそうにしていたといえるところなのだ。ただ話していただけというのが。
「そうか。では教えるが、お前の母親のイフィーはハイテに襲われ、ガイに殺された。そこは間違いないので、魔王軍本部に行っても生前の母親と会えるとは思わないほうがいい」
イフィー。それが、ブルータの求める母親の名前らしい。
どうしてホウがそんなことを知っているのだろうか? 私は不思議に思ったが、疑問を挟む暇もなく彼女の話は続いた。
「ただ、ガイは見境なく暴れていたわけじゃない。”魔王の声”の命令に従って、人間たちの間から有用な意識を集めていた。ラオをつかうという話もあったが、ガイに殺されてしまったからな」
「有用な、意識……」
ブルータが目を丸くしている。ホウが頷く。
「そうだ。ありていにいえば、魂魄を。魂だ」
「そんなの何に使うって?」思わず私も口をはさんだ。「魂なんていったって、死んじゃってるんでしょう」
「いや」
ホウは軽く首を振り、小さな声でこたえる。
「集められていたのは、魔法を扱える者の魂だ。その精神は、魔力を魔法へと変換できる。”魔王の声”がいうにはそれをもって、大量の魔力から”魔王”を顕現させるのに使うらしい」
「それってつまり、人間たちの魂をつかって魔王を復活させるってこと?」
「そういうことになる」
いつの時代の魔法よ、それは。
私は思わず生贄や血なまぐさい儀式が使われていた時代の魔術を思い起こして顔をしかめてしまった。
「だが、魔王はまだ顕現してはいない。その存在を感知できるのは”魔王の声”だけだ」
うん、そう。そのへんのことはレイティの記憶でも知ることができた。要するにガイによって集められた魂は、まだ使われていない可能性があるということだろうか?
「だから魔王軍本部の最奥にある”魔王の声”の間に入れば、イフィーの魂もあるかもしれないな。彼女が助けを求めているというのなら、封印をたたき割って、魂のあるべきところにいかせてほしいということだろう」
「それ」
ブルータが目を見開き、這いつくばるような格好でホウに近づいた。そうして、鬼気迫るような声で言う。
「本当のことですか、ホウさま」
「たぶんな。私が予想できる範囲では可能性の高いことだ。お前たちの話が全部本当なら」
「わかりました。私は、魔王軍本部の”魔王の声”の間を目指します」
「ちょっと」
思わず私は渋ったような声を上げてしまう。簡単に決心するのはいいけれど、それはものすごく難しいことなのではないかと思えたからだ。
「これってもしかして、魔王軍に対して完全に弓引くってことじゃない?」
「まあそうだな。イフィーの魂を開放するとなると、魔王の復活は遠のく。魔王軍のすべてを敵に回すことになるだろう」
「全軍?」
「何をいまさら、当然だろう。”魔王の声”の思惑はどうあれ、魔王の復活は全ての悪魔たちが望むことだ」
「すべてって、ホウも含まれてるの」
「お前たちの命に優先するほどじゃないがな」
ううん。私はうめいて、顔をしかめた。




