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暗殺の青  作者: zan
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17・肝脳塗地 中編

 ブルータは身体能力を強化する魔法を使う。それは、砂漠都市の賢者タゼルから見て盗んだ技術。

 しかしそんな魔法を使った程度で、とてもガイとの実力差は埋まらないだろう。障壁魔法も使いなおすが、おそらく一撃で砕かれるだろう。

 それでも、ブルータは逃げない。とてつもなく怖い顔で、四天王のガイをねめつける。そして、飛び掛った。瞬きをする余裕もないような一瞬で、ガイに肉薄する。怒りに任せた突撃に違いなかった。

 その突進を、ガイは落ち着いて軽くいなす。さらに、反撃に前蹴りを打ち込んでくる。

 だがその蹴りをブルータは回避する。先読みしていたらしい。怒っていはいても、単純な猪突猛進はしないようだ。さすがに、ブルータである。青の暗殺者と呼ばれたのは伊達でない。

 ブルータは間合いを離す。いつまでもくっついていては危険だという判断からだろう。

 しかしガイはそれを追ってくる。魔力を溜めながら、追撃の構えである。

「へっ、何をたくらんでるのかしらねえが、好きにはさせねえよ。とっとと俺に食われちまいな」

 そんな言葉を吐いた次の瞬間、彼はブルータの背後をとっていた。一瞬で、回り込んだのである。ブルータもぼんやりしていたわけではない。ガイの隙をうかがっていたはずだ。それなのに、あっさりと背中をとられている。

 とっさにブルータは『黒翼の呪文』を使おうとして、やめる。魔法の展開よりも、ガイの攻撃が早いと判断したのだ。代わりに右手に握ったナイフを背後に突き出した。だが、勿論ガイの攻撃はその程度でどうなるものでもない。

 ガイの一撃をうけて、ブルータはその場から吹き飛んだ。まるで強風にさらされた紙吹雪のように飛んでいく。ブルータはしばらく空中を飛んでから、地面にたたきつけられる。その場に血しぶきが上がった。

 あばらの折れているブルータはすぐに立ち上がれない。そこへ、ガイは魔法で追撃をかけようとしている。

 私はその魔法を知っていた。

「灰燼の呪文!」

 ホウのオリジナルの魔法。彼女が得意にしている魔法だ。

「そのとおり。奴の専売特許と思ってもらっては困るってわけだ。俺だって結構、魔法には造詣が深いんだぜ? 地獄にいったら吹聴してくれ、四天王のガイは聡明で、大魔法使いにして凶悪な蛮族だってな」

 ニヤリとガイは笑った。私はそれを見て唇をかんだ。

 正直言って、今まで彼のことを単純な力押しの戦士だと思っていたが、違っていたらしい。実際には魔法も扱える超一流の魔法戦士だったのだ。

 ガイが一際強くブルータを睨みつけると、その眼前に赤黒い魔力が収束する。それは圧倒的な速度でブルータを貫き、彼女を痛めつける。『至高の呪文』ほどではないが、強い振動と圧力で破壊対象を攻撃する魔法なのだ。

 常人がこの魔法を受けてしまったら、全身から血を噴出して干物になり、次に振動で破壊される。死体は恐らく粉末になるだろう。それほどの呪文。ブルータは頑丈な半魔族だし、魔法防御の呪文も心得ているので即死はしない。しかし、それほどの衝撃をうけて平然としていられるはずもない。あっという間に霧の衣装が彼女の血で濡れた。

「まだ動くのか」

 ガイが呆れたような声をあげる。その通り、ブルータはまだ諦めずに起き上がろうとしている。その顔にも血が流れ落ちて、頬の辺りまで真赤だ。だが、決して留まろうとはしていない。逆転を狙っている。

「ってことは、まだ俺の魔法を受けてくれるわけだよな。別にいいぜ、全身が腐り落ちた肉片みてえになるまでいたぶってやるよ。フェリテと同じようにしてやってもいい、お前の母親だってそうされたわけだしな」

 へらへらと笑いながら、ガイはブルータに近づいていく。衝撃的な事実を口にしながら。私はそれを知っていたし、レイティの記憶ではガイ自身がブルータにそうやって話していた。それで、人形のような反応しか出来ないブルータをあざ笑っていたのだ。彼らにとって、ブルータは嘲笑の対象なのだ。弱々しく、哀れな半魔族として。

 しかしそれではあまりにも、彼女がかわいそうだ。私はそのままでいてほしくない。だが、死霊の渦巻く空に大地は鮮血で染められたこの場所で、妖精の私に何ができるというのだろうか。何か、秘策はないものか。私はない知恵を絞って考える。そうしなければ、何か考え付かなければ、ブルータは殺されてしまう。

 そのブルータは、どうだ。立ち上がって、気丈にもガイと向かい合っている。全身から血を流し、そして怒りに身を震わせ、宿敵である四天王のガイを殺さんばかりにねめつける。だが、その視線だけでは相手を殺せない。

「どうしたんだ。大好きな母ちゃんのことを言われて怒ったのかよ。かわいいもんだねえ。まあそりゃそうか、子供だもんなあ。まだ母ちゃんのおっぱいが恋しいんだろ。そのお前の母ちゃんのおっぱいはよ、俺の腹ン中だ。とっくに」

 ガイは、右足を踏んだ。その先には、必死に欠けた手足を使って動いているフェリテがいた。背骨を砕かんばかりに踏まれたフェリテの動きが止まる。

「ほらよう、どうしたんだ。お前はレイティを殺して、俺たちに反逆してんじゃねえのかよ。あんとき人形だったお前はやっと抵抗できるようになったんだろうが、さっさと向かってこいよ。どうしたんだ?」

 余裕たっぷりに言い放つガイ。彼は、優しい声色である。乳幼児が大人に立ち向かっているような微笑ましさを感じているに違いない。だが、そこに親愛の情はかけらもなく、彼の場合はその乳幼児を徹底的にいたぶって楽しもうとしているに過ぎないのだ。

 ブルータは一言も発さない。悲鳴どころか呻き声すらもだ。怒りのあまりにも何も言えないのかもしれない。

 私はそれを見ながら、できることを探している。

 フェリテを少しでも治療するか。それとも私も戦闘に参加するか。あくまでもガイを観察して、逆転の手段を探すか。

 精霊使いのバロックに化けて、死霊をなんとかしてみるべきだろうか。妖精である私は精霊にしか干渉できないが、精霊使いのバロックのいうことならある程度死霊たちも聞いてくれるかもしれない。

 そう私が考えた途端、死霊たちが騒いだ。

 咄嗟にブルータを見てみると、彼女は右手を掲げている。そこには魔力が集中されている。非常に強力なものだ。

 どこからそれだけの魔力を集めたのか、私にはわかる。死霊たちからだ。だが、死霊たちがあまりにも協力的過ぎる。ブルータに、進んで自らの苦痛と仮初の命を捧げこんでいるのだ。それが本望とでもいうように。

 察するに、これはブルータがガイに挑んでいるということが死霊たちに伝わっている。ここにいる死霊たちの大半はガイによって殺された人間や魔族だったのだろう。彼を恨むこと甚だしい。となると、ガイを倒すことができるかもしれない、半魔族の魔法使いブルータに期待をして、自分の命を捧げるというのもありえないことではないのだ。

「そいつはすげえな。それで、その魔力をどう使うってンだ? 幻影剣の呪文で俺を切り裂くってのか。だがよ、お前の腕が振り抜かれるより、俺の腕がお前の心臓を抉り出すほうが多分早いぜ」

 それでも、ガイは余裕を崩さない。死霊たちが明らかに敵となってもお構いナシだ。フェリテの身体を踏みつけたまま、悠々とした態度をとっている。

 魔力を集中させながら、ブルータは彼に鋭い目を向けた。

「フェリテさまのお身体から、足をどけてください。踏んでいい方ではありません」

「やだね。こいつはにがさねえよ。俺が直々に楽しんだんだ。まだまだ、死ぬまで楽しませてもらうつもりなんだよ。食いながらやるだけやって、死ぬ間際まで使ってやる、玩具なんでな。まあお前だって見てろよ。てめえだって具合がよけりゃあ同じようにしてやるんだからな」

 ガイは全く態度を変えない。あくまでもブルータを挑発して楽しんでいる。彼にとっては、ブルータの抵抗など些事なのだろう。たやすくいなせると信じている。

「それから、私のお母さんに謝ってください。私の大切なお母さんを、返してください。それができないのなら、あなたには手加減できません」

 言葉こそ丁寧だが、ブルータは本気で怒っている。ここまで激怒している姿を私は初めて見る。レイティの記憶を含めてだ。

 彼女はもう、人形ではないのだろうか。宿敵を前にして。

 ブルータにとって母親の存在は、やはり大きいのだ。そのためだけに、死のうとしていた心を振り切って私と共にあの牢獄を抜けてきた。そのためだけに、こうして四天王のガイに挑んでいる。そのためだけに、こうまで怒っているのだ。

 妖精である私には、その母親というもののぬくもりが完全に理解できているのかわからないけれども。

 しかしガイよりは理解しているはずだ。四天王のガイは、そいつは、ブルータの必死の訴えをげらげらと笑い飛ばすだけなのだから。

「手加減なんぞして俺を殺せるわけねえだろが、本気でこいよ。それでも俺は手加減してお前を屈服させてやるよ! あんな女一人のためにそんな必死になるとこみりゃあ、お前がハーフダークだってことがよくわからぁ。なあよ! ヒャハハハ!」

 何がおかしいのか、彼は笑っている。

 私には彼の心がまるでわからない。あれほどブルータが悲しい思いをして、幼い心を奮い立たせて、あれほどの怒りをぶつけているというのに。

 どうしてそれを笑えるというのか。

 笑い続けるガイに、ブルータは突進をかけた。先程よりもずっと素早い、全力で魔力を使った蹴りこみで加速する。全力、本当に全力をこめた突撃だった。

 気温が急激に低下した。冷たい風が、ブルータを中心に吹き荒れた。

 彼女の手に集められた死霊たちの力は、全て『低温の呪文』に練りこまれ、全てを凍結させる死の呪文に変容していく。過剰すぎる、ありすぎる魔力を変換する彼女の負担は相当なものになっているはずだが、意にも介さない。ただ、相手を殺すためだけの魔法。

 それを構えて、ブルータは突進する。下級魔法であるが、そこに込められた魔力は膨大だ。直撃すればガイでもただではすまないに違いなかった。

 だというのに、四天王のガイは余裕をまったく崩さない。ここでようやく彼はフェリテから足を下ろして、少しだけ腰を落としたのだった。そして右手を引いて、構える。ただの拳で、一撃で、ブルータを止めるつもりなのだろう。どこまでも侮っているのだ。お前など、俺の敵ではないと言っているのである。

 こんなことを許しておいていいはずがない。思い上がった彼の鼻を、叩き折ってやるべきだった。そうしなければならない。

 突進するブルータに向けて、ガイは右拳を繰り出した。気負ったところはまるでない、飛んでいる羽虫でも叩くような一撃だった。

 その拳とブルータの渾身の魔力が衝突したにもかかわらず、振りぬいたガイは平然と。

 ブルータは時間を巻き戻すように、突撃した勢いをそのまま反射したように、吹き飛ばされていった。魔力の流れがひしゃげて、全てその負荷がブルータの両腕にのしかかったに違いない。みしみしとその骨身を軋ませながらすっ飛ぶ、そのまま陣幕に突っ込んで周辺を破壊しながら地面をえぐった。

 唖然とする。四天王のガイは、ここまで実力を持っていたのかと。

 突進をかけたブルータにダメージがあったことはわかる。だが、それでも彼女の今の、全力を注いだ突進だったはずだ。私があれを食らっていたら、この妖精の身体でも消失していた可能性が高い。それくらいの攻撃だったのだ。なのに、ガイは拳ひとつでそれを跳ね除けてしまった。フェリテが負けるはずである。

 こんな規格外。四天王はみんなこういう飛びぬけた実力を持っているということを、私たちは知っていたはずだ。知ってはいたが、どうやら実感してはいなかったらしい。目の前でブルータが吹っ飛び、倒れるところを見てようやく私はわかったのだ。

 四天王は化け物だということ。

 勝てる勝てないって次元じゃない。このままでは、負ける。間違いなく負ける。

 倒れこんだブルータに向けて、ガイは魔力を集中させていく。『灰燼の呪文』だ。まずい、いくら半魔族だからといっても、こうも立て続けに上級魔法を食らってしまったら無事でいられない。

 私は妖精にあるまじき悪態をついて、その身を変えた。今私が解析できている身体の中でももっとも強靭な力をもっている、四天王のホウの姿に。

 両腕が長大な翼になっているが、それをばさりと広げてガイに挑む。全身がまるで羽毛の一枚になったように軽い。彼の背後に向けて、私は両足で蹴りを打ち込んだ。魔法に集中しているガイは、それを避けられなかった。まともに攻撃を食らってその場に倒れた。

 倒れたのである。ガイとて、無敵ではないということだ。さすがはホウの身体。

 だが、ホウの身体を維持するのはとてもつらい。妖精のこの変化能力も万能ではないのだ。術者の実力を大きく超えた力をもつ身体に変われば、その分は魔力で補われる。ブルータの身体に変わったときはそれほどたいした出費ではなかったし、周囲の精霊から魔力を回収できたのだが。今は状況が違う。ホウの身体に変わっているだけで、魔力がみるみる吸い取られていく。

 この上魔法でも使おうものなら、私の存在そのものが危うい。早期に決着をつけるしかない。倒れたガイの身体を右足で蹴り上げて、浮き上がった彼の身体を翼で強く打ちつけた。

「げうっ!」

 憎しみを込めた一撃に、ガイは血反吐を吐く。いいざまだ、といいたいところだがまだ足りない。

 私は両方の翼を振り乱しながらその場で一回転、ほとんど背中側から振りぬいた回し蹴りをガイの首に見舞った。正直言って、私はこの一撃で決めてしまうつもりだった。それほどの魔力と力をこの蹴りに込めた。

 なのに、ガイという悪魔はこれを右手でがっしりと掴んでみせたのである。

「てめえ、知ってるぞ。あのとき船に乗っていた妖精だな?」

 どこにそんな余裕があるのか、と問いたくなる。四天王のガイは、私の繰り出した蹴りを右手一本で受け止めながら血の混じった唾を吐き捨てる。そして私に向かって言うのだ。恐ろしく低い声で。

「そんな力をかくしてやがったとは驚きだ。お前もそう簡単に消さねえよ、ホウの代わりにたっぷりと楽しませてもらう」

 ぺろりと、彼は私の足をなめた。私の背中を悪寒が駆け抜ける。

 ホウの身体を使っているのに、勝てない。魔力は容赦なく抜けていく。ホウの姿をとれるのもあとほんのわずかな間だけ。

 こうなったら、何かこの身体のまま魔法を使って、その一撃で決めてしまうしかない。たぶんその魔法を撃った瞬間、私は妖精の姿に戻って、そのまま地面に墜落してしまうだろう。しばらく動けないかもしれない。しかしもうその手しかない。

 足を引き抜いて、私は距離をとった。当然だが、使う呪文はホウの最大呪文である『灰燼の呪文』である。私に使いこなせるかどうかはわからないが、やるしかなかった。使い方はわかっている。

「お前も同じ魔法を使うつもりか。だが、無駄だな。俺の魔法のほうがつええ。試してみろよ」

 ガイは接近戦を挑んでこない。好都合だ。彼も『灰燼の呪文』を使う以上、私に負けられないと思ったのかもしれない。

 だが彼はあくまでも戦士だ。魔法なら、妖精である私に分があるはずだ。そう信じられないことはない。いける。私は残された魔力をかき集めて、体内に凝縮する。さすがに『先鋭化』まではできないだろう。だが、それでも勝つ。

 私が集中を完成させて、眼前に魔力を集めたその瞬間だった。

 ほんの一瞬で、私の身体に溜め込まれていた魔力が霧散したのである。

「ああ」

 呆然とした。ガイは、私の『灰燼の呪文』に対抗するつもりなんか微塵もなかったのだ。集中しているところに、この『魔力拡散の呪文』を打ち込むことしか考えていなかったのである。

 全身から力が抜ける。ホウの身体は維持できず、小さな妖精の姿に戻されていく。

 そうして私は落っこちていく。落ちた先は、先ほどガイが踏んでいたフェリテの身体の上だった。

「ざまあねえな。ホラよう、策士は策におぼれただろうが。これでわかったろ、俺は聡明なんだってな」

 私とフェリテを見下ろすガイの顔は、やはり笑顔なのだった。徹底的に、笑っている。あざ笑っているのだ。

 それでも私はなんとかしようとあがくが、消耗しきったフェリテの顔面の皮膚をかきむしるだけに終わる。指先にもろくに力が入らない。動けないのだ、魔力が足りない。ホウの姿をとったのは失敗だった。

「そいじゃあ、約束どおりいただくとするかな。まずは順番からいってフェリテを」

 ガイが近づいてくる。私たちを食うために。まずい、まずいと身体が、私の本能が警告を発する。しかし動けないのだ。

 そんなところへ、思念会話が届いた。私の真下にいるフェリテからだ。

『ホウさまの姿を借りれば、奴を倒せる。そうしろ』

 そんな内容だった。この状態では思念会話に使う魔力もためるのが厳しいのだが、私もなんとかそれに応じる。

『できたらそうしてるけど。魔力がもうないの。死霊からは魔力を集められない、このままではいけない』

『私の身体から魔力を生成しろ。私も上級魔族の一員だ。お前なら私の肉片や血から魔力を抽出できるはずだろう。生きている肉体からならもっと』

『何言ってるの、そんなことしたら死ぬじゃない。死ぬだけじゃすまなくて、そのまま一切の残余を残さずに消失する可能性が高いんじゃない。もう復活の魔法でも絶対に生き返れなくなる。それに』

 私は焦って、拒否した。

 ホウの抜け落ちた羽から魔力を得たように、フェリテの身体から魔力を取り出すことはもちろん可能だ。だが、フェリテは生きているのだ。生きた肉体から魔力をとりだすなんてことをしたら、魂を作り変えられるような耐え難い激痛がおこる。発狂するような、人間ならショック死するようなものなのだ。悪魔でも殺してくれとわめくような、激痛だ。そして何より、生きた状態で魔力に変換するということは、存在の根源を削り取られることにつながる。そうなったら、もうどんな手段をとっても絶対に復活することがかなわなくなる。悪魔であっても。

 ブルータはここにフェリテを救出するためにやってきたのである。それなのにそんなことをするなんて。私にはできない。

『だが、このままではどうにもならない。私はお前たちを守るように言われているのだ。ホウさまから……』

 ボロボロというよりは、グズグズにされてしまった肉の塊のようなフェリテ。そのフェリテは、私たちのために魂まで命まで、惜しまないというのだ。

 ガイが近づいてくる。もう時間はなかった。

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