地平線
何も考えたくない・・・夜が恐い、眠れないよ。
私は気を紛らわせるために、深夜の散歩をする事にした。寂しいので歌いながら歩く。
「おい近所迷惑だぞ」
むぅ。知らない男の子に声をかけられた・・・あ、でも、結構いい男かも。
年下か? かわいい系かな。って何考えてるんだ私は・・・。
無視して歩く。もちろん歌い続ける。
男の子が後ろから付いてきた。邪魔だな〜。
あ、私の歌声に惚れたのかな? まず無いだろうけど・・・。
ん〜何か気になる、私は立ち止まると、男の子に話しかけてみた。
「何で付いてくんのよ」
「たまたま同じ方向歩いてるだけ」
「あっそ」
「・・・」
「私の歌に惚れたの?」
「かもしれない」
「じゃあいいや付いてきても」
まあ、そのうち居なくなるだろう。私はまた歌いながら歩き出した。
歩いていると歩道橋が見えてきた。渡ってみる事にする。
上まで行った後、手すりに身を乗り出して下を見つつ、ここから落ちたら死ぬかな?
そんな事を考えていたら、いきなり肩を掴まれ引きずり降ろされた。
見ると、さっきの男の子だった。
「まだ付いてきてたの?」
「・・・」
「飛び降りるとでも思った?」
「思ったよ」
別に死ぬ気はなかったのだけど、からかう感じで言ってみる。
「なんで止めんのよ」
「生きてて欲しいから」
「別にあんたに関係ないでしょ」
「もう関係あるよ。話をしたし」
う、嬉しいかも。何かくやしい。
「なら責任とってよ」
「は?」
「死ぬの止めたんだから生きてて良かったと思わせろ!」
自分でもむちゃくちゃ言ってるのがわかるけど止められなかった。
「わ!」
急に腕を掴まれた。
「こっちにこい」
私は引きずられるように付いていく。
「どこ行くのよ!」
「良いから黙ってろ」
恐い。もう自棄だ。どこでも連れて行け。
彼はどんどん歩く、道は上り坂、いい加減に疲れてきた。
もう限界だと思った時に彼が歩くのを止めた。着いたらしい。
「着いたの?」
彼は時計見て、ぶつぶつ言っている。ヤバイよこの子。彼はある方向を指差して言った。
「あっち見て、もう少しで時間だから」
「う、うん??」
私が何も起こらないじゃと彼を疑いだそうとした時、地平線が明るくなった。
「ここがこの辺で一番綺麗に見える所だと思う」
私は彼の言葉なんて聞いていなかった。凄く綺麗で無意識に泣いていた。
うわ、何感動してるんだろう私。泣くのなんていつ振りだろう。
「生きてると良い事あるだろ?」
彼がハンカチを差し出しながら得意そうに言った。
何かムカつくんですけど・・・私は乱暴にハンカチを受け取る。
「かもね」
彼が凄く嬉しそうに笑った。私もつられて笑顔になる。
生きていて良かったと少しだけ思った。
終わり。