07
一つ前を向く力
それは僕にとって
希望の光
lucid love 07
ツアーもようやく終わり少し落ち着いたと思ったらすぐにシングルに向けて動き始めた。
そしてその休憩時間、やたら香南がパソコンを使い何かを検索していた。
何かと思い夏流が覗きこむ。
「かなーん何調べてるのー?」
「ん・・・」
顔をあげ画面を見せてくれる。
そこには絵を描く画材が載っていた。
「どうしたの?絵でも描くの?」
「いや、瑠唯の…」
そして再び画面を見始める。
「あいつの入学祝いに送ってやろうかと思って…何も言ってこねえし…これだったら消耗品だから使えるだろ?」
「うーん…」
確かに、夏流は納得した。
しかし心の奥底で引っかかるものがあったのだ。
あの目、とても似ていた。
「香南、それはちょっと待った方が良いかも…」
「…は?」
香南の不思議そうな顔に夏流は思わず苦笑いをした。
「新曲、やっぱり歌ったのか…?!」
「うん。」
「まじかよ!!!行きたかったああああ!!!」
ツアーの後日、部活ではあのツアーのことを話していた。
セットリストを述べるとそのたびに聴きたかったと何度も後悔しているようだった。
最後に新曲を披露したのは知っていたらしく、そのことについて何度も聞かれる。
「今回はアマネさんの曲だったよ。とても、面白い曲だった。」
「だろうな。今回もエロそ―…」
「crazy rabbitって題名からしてそうだもんな…」
「彼の曲の作り方は独特だしね。早くCDにならないかな…」
そして瑠唯がまたおずおずと話しだす。
「あの、今回僕演奏を聞いてみました。」
「ああ、どうだった?」
明がニコニコしながら尋ねる。
「やっぱり、違います。音の数が…」
「そう、か。」
「まあほんとコピーすんの難しいからなあ…」
「だからこそ挑戦し甲斐があるんだけどな。」
anfangはCDでもとても難しい音を紡ぎだす。
聴いていてもコピーしにくい。ライブで直接見たとしてもCDと違った演奏をするため聴いていてもわからないのだ。
「けど、聴けます。僕も、だから、頑張ります!!!」
あのライブを見て瑠唯は思った。
anfangは本当に凄い。
けれどもっと、もっと近づきたい。
「よくぞ言った瑠唯!」
翔が瑠唯の肩をたたきながら言う。
「・・・え?」
「実はな、俺の知り合いの先輩が今度ライブするんだけどそれに繋ぎで2,3曲やらないかって誘われたんだ。」
「おい…」
「それって…」
「部長にはもう言ってあるんだけど、お金はいらないらしいし、やってみねえ?」
ライブ…?
自分、が…?
あまりに突然のことで瑠唯は呆然としていた。
自分にとってライブとは夢のまた夢でそれを自分ができるとは思ってもいなかったのだ。
「やりてえ!!!おい明!!!」
「俺も賛成だよ。こんな機会めったにないことだし。やらせてもらいたい。」
「瑠唯は?瑠唯はどうだ?」
「僕は…」
脳裏に浮かぶのは先日のライブの事。
そして香南の笑顔。
頑張れ
「僕も、やります!!!」
その言葉に3人は大きくうなずいた。
それからというものの朝早くから夜遅くまで練習に明け暮れた。
ほぼテニス部と同じ時間で動いていたため行き帰りは美羽と一緒だった。
「えっライブ!?」
「うん、」
「凄い…チャンスじゃん!俺絶対行くからな!」
「え!?」
瑠唯は驚いた。まさか本気で行くと言うとは思わなかったからだ。
「き、来てくれるの…?」
「あったり前じゃん!俺瑠唯のファン第一号だもん。けどさ…」
美羽が突然真剣な顔つきになる。
「ななちゃんたちに、いうの?」
その言葉に瑠唯は顔をしかめる。
「まだ、お願い、いいたく、ない。」
「…」
「わかってる。凄くわがままだって。だけど。」
「…分かった。」
美羽が悲しそうに笑う。
「ごめん。」
「いーや。それよりも、頑張れよ。」
「うん。」
ライブの前に中間テストが行われた。
「瑠唯、テストどうだった?」
「今回は…あんまり…」
翔から聞かれた質問に瑠唯は苦笑いするしかなかった。
全く勉強していない状態で迎えたテストはほとんどできなかった。
夜は夜で勉強をしているがそれでも今までどおりにはいかない。
それは瑠唯にもわかっていた。
罪悪感が付きまとうものの心のどこかではそれでも音楽を練習したいと思う気持ちが大きかったのだ。
とにかくライブを成功させたい。
その一心で練習したライブ。
とうとう当日になった。
えーと大分変えました。