04
いつもの僕と
心の奥底の僕
どちらを信じる?
lucid love 04
軽音部に入部をして一週間。
瑠唯は少しずつメンバーに慣れていった。
もともと人と話すことが苦手であったが翔がとても気さくな事、明が話しやすい内容を瑠唯に聞いてくること、龍之介が根はいい人だと言うこともあり着実に話せるようになっていた。
「お前、anfangの中でなんの曲が好き?」
休憩時間ふと龍之介が尋ねてきた。
龍之介も初めは話してくることがなく、見た目がヤンキーでいつも睨んでいるような顔をしているため嫌われているのかと思っていたが、明が後から教えてくれた。
『彼はシャイなんだ。だから、そうだね。anfangの話をしたらいっぱい話をしてくれるよ』
早速話しかけるととても嬉しそうにanfangのことを話し始めた。
こんなにanfangのことを好きでいてくれる人を久々に見た瑠唯はとても誇らしく、嬉しくなった。
それからというものの、龍之介は少しずつanfangの話題を通して瑠唯に話しかけるようになった。それが彼なりのコミュニケーションの取り方だった。
「僕は、えっと、backbone,in the earthが一番好きです」
「ああ、あのアルバムは凄かったな。全部いい曲で、何度聞いてももう一度聞きたくなるんだ。あれからほんとanfang変わったよな…」
「そ、そうですよね」
多分、雅さんもそう言っていたし。心の中で冷や汗をかきながら答える。
『schatz』は香南が日向家族にプレゼントしてくれたアルバムで一人ずつを歌った曲が入っている。今でもたまに引っ張り出して美羽と七海と3人で聞いていた。
直接こうやって褒めてもらえるって、嬉しいな。
瑠唯はまた心が嬉しくなった。
「そういえばさ、」
ふと気付いたように翔が会話に入ってくる。
「カナンってこのへんに住んでるんでしょ?」
「は?!」
「え?」
瑠唯は思わず肩を震わせる。
龍之介はとても嬉しそうに体を前のめりに翔に話しかけた。
「おい、それ本当か!?」
「いや、噂ですよ~!」
「まあどこにでもそういう噂があるしきっとその一つだから気にしない方がいいんじゃないかな?」
「けどどうします!?突然学校前の道で出会ったら!」
「俺だったらそっこうサイン貰いに行く!!」
明がなだめるが龍之介の興奮はやまずその話で盛り上がっていた。
瑠唯はカナンが自分の家族であることを話していない。
そして逆に家族にも自分が軽音部に入っていることを言っていなかった。
『ななちゃん、その部活入ったから放課後遅くなるけど、いいかな?』
食事中報告すると七海はそれはそれは嬉しそうに笑顔になった。
隣にいた香南もとても嬉しそうに頭を撫でてくれた。
『まあよかった。』
『何部入ったの??』
美羽がとても嬉しそうに尋ねてきた。
しかし、ここで本当のことを言えず思わず顔をこわばらせてしまった。
『えっと、その、美術…ぶ』
つい嘘を言ってしまった。
その時美羽がどんな顔をしていたか、下を向いていた瑠唯にはわからなかった。
しかし、瑠唯は少なくとも香南と七海の前では言えなかったのだ。
絶対幻滅する。
今までも全然いい子じゃなかったのに。
それだけは絶対嫌だ。
「で、瑠唯だったらどうする?」
ふと翔に話しかけられ意識を戻す。
「え?」
「だーかーら、カナンが目の前に現れたらだよ!!!」
興奮しながら龍之介が嬉しそうに話しかけてきた。
「えっと、見てるだけで、」
えへへと言いながら答える。
「お前、夢ねえな…」
龍之介は少し不満そうだった。
「まーま、ところで瑠唯くんはanfangの今度のツアー行くの?」
「へ?」
先日練習していたツアーがもうすぐ始まろうとしていた。
確か、七海や美羽、一樹がとても楽しみにしていたのを思い出す。
「行くと、思います。」
「「まじで?!」」
翔と龍之介がとても驚いたようにしていた。
「お前、よくチケット手に入ったな…」
「あれ、なかなか手に入んないって話題だったんだぞ。俺らも誰も取れなかったし」
「え、」
そう言えば、瑠唯はanfangのチケットはかなりのレアものになるのを忘れていた。
かなり不思議そうな顔をする二人をよそに明がニコニコと話しかけてきた。
「そっか。じゃあ今回はちょっとだけいつもより演奏に注目して聞いてみて」
「は、はい!」
少しずつ瑠唯の周りが変わりつつあるのだった。
「お疲れさまでーす!」
お互いをねぎらう声が飛び交うコート。今日のテニス部の長い活動も終わりを迎えていた。
美羽は汗を拭きながら先輩に挨拶をする。そしてふと思い出した。
「せんぱーい」
「ん?なんだ??」
今日練習をしてくれた先輩に挨拶をしたあとちょっと尋ねてみた。
「あの、美術部ってどこで活動しているんですか?」
「びじゅつぶう?」
「はい。俺の片割れが入ったらしいんですよ。」
「片割れってあのイケメン秀才か?」
「はい。」
瑠唯は知らないが瑠唯も入試ほぼオール100点で入ってきたイケメン秀才としてとても噂の人間だった。
ただ美羽と違って行動的でないため顔は知られていなかった。
「けど美術部って今学期あんまり活動してないんじゃなかったか?」
隣から違う先輩が話しかけてきた。
「だよなあ…?やってても個人活動とかで居残りないだろ」
「・・・」
そうこの違和感。
美羽は薄々感じていた。あの瑠唯のよそよそしさ。
瑠唯、俺にも何か隠すの?
曲についてはclarity loveを見ていただくかその最後のあとがきをご覧ください。