02
新しい世界は
君にどんなものを映す?
lucid love 02
「でね、先輩ってば早速素振り千回だーってさせるんだよ?信じられる?!」
「すぶり!みーくんすぶり!」
「そうそう、素振り。一樹正解」
入学式から一週間、久々に香南も揃っての晩ご飯だった。
早速美羽はこの一週間であったテニス部での出来事を鮮明に話す。
「けど、美羽の実力を見込んでのことだろ?実力を認めてるんだし、いいことだろ?」
「うっ・・・まあ、そうなんだろうけど・・・」
美羽は照れながらぼそぼそとご飯を食べ始めた。
「瑠唯は学校どう?部活とかいいの見つかった?」
七海が期待を込めて聞く。この一週間なるべく部活見学をさせるために家の手伝いはしなくていいと伝えてあったのだ。
瑠唯は一瞬驚くものの苦笑いをした。
それを見た美羽が隣から口を挟む。
「それだったらテニス部のマネージャーしたら?マネージャーは頭イイヤツ欲しいっていてたし、瑠唯ぴったりじゃん」
瑠唯は運動は出来ないが頭がとてもいい。高校の試験もほぼ満点合格で入学できるレベルだった。
それを知ってる美羽は少しでも何かあればと提案する。
「マネージャー・・・」
「俺も瑠唯にだったらいろいろ頼めるし。」
美羽の言葉に瑠唯は少し悩んでいる様子だった。
「もしなかったら、一度見学行こうかな・・」
「おう!待ってるぞ!」
「るーくん、まねーじゃ!」
「まだ時間はあるし、好きなのを探したらいい。」
「・・・うん。」
香南の笑顔に少しだけほっとした瑠唯だった。
翌日の朝、美羽はすでに朝練習へ行っておりいなかったが、香南がリビングにいた。
「にいちゃん?」
「瑠唯、おはよう。」
「今日朝早いから瑠唯と一緒にご飯食べるそうよ?」
「そ、そうなんだ。」
「今日は朝和食だぞ。瑠唯好きだろ?」
「うん。ありがとう」
ご飯を一緒に食べ準備仕度を終え玄関まで行くと香南が弁当を持ってきた。
「え?」
「これ、今日俺が作った。その、頑張れ。」
小さなエールとともに渡された弁当に瑠唯は少しだけ泣きそうになった。
僕は、こんなことされる資格ないのに
「あ、りがとう。」
「いってらっしゃい。」
「行ってきます。」
小さな声で言うと学校へ向かった。
昼ごはんはクラスの中でひっそりとご飯を食べていた。
瑠唯は家族やメンバー以外への軽い対人恐怖症を起こしていた。
香南やメンバーがあれだけ学校行事に来ているのだ。
芸能人だとばれていないはずがなかった。
そしてそのことを全く言わずそのまま付き合ってくれる友達もいたが、徐々に周りが変わりつつあった。
腫れもののように扱う人もいれば羨ましいと媚を売ってくる人たち。
親がファンだからとサインをせがむ人もいた。
美羽はそれを上手にかわし持ち前の明るさでそのことを吹き飛ばしクラスの中心人物になれた。
しかしもともと人と接するのが苦手な瑠唯は徐々に萎縮し始める。
中学のころには美羽はテニスを始めさらに人気を高める。
香南の事を言われ、美羽とは比較され瑠唯は二人は全く両極端になり途端に瑠唯は怖くなった。
香南のように吐き気がするわけでもないが人と話すとどうしてもどもってしまうのだ。
中学生の友達も美羽を介してやっとできたと言っても過言ではなかった。
高校に入ったからには美羽に迷惑をかけたくないと思いクラスでご飯を食べると美羽に伝えてあった。
しかし、今まで出来なかったことが突然出来るわけもなく、なかなか人に話しかけることが出来なかった。
『頑張れ』
にいちゃんが応援してくれたんだ。もう、すこし。
「お、お前の弁当メッチャうまそー!!!」
「え?」
下にうつむいていた瑠唯に話しかけてきたのはクラスでも元気な男だった。
「何入ってんの?スゲー豪華じゃん。」
「えっ…」
突然話しかけられパニック状態の瑠唯に男は関係ないように話を続ける。
「俺の弁当の具と物々交換しようぜ!」
男は前のいすに座り込み瑠唯の机に自分の弁当を置き始めた。
「あ、うん」
瑠唯は照れながらも急いで弁当をあけ始めた。
「俺、立花翔。お前なんて名前?」
「ぼ、僕、日向瑠唯って言うんだ。」
「日向?!」
突然びっくりしたような声を出すとそうかと納得していた。
「うわーお前もしかして日向美羽の兄弟?」
「あー・・・うん。」
瑠唯はやはりかと目を瞑る。
美羽はテニスが上手いだけではなく性格も明るい。
中学生の頃も何度も女の子に告白されてるところを見た。
瑠唯にも美羽にラブレターを渡してくれと頼む人がいるほどだった。
それが高校で噂にならないはずがなかった。
「あ、わり!そういうの言われるの嫌だよな。」
「いや、大丈夫。それに…その、美羽は凄い、やつだし。」
あれだけ自分のやりたいことを見つけて
ちゃんと実行に移してる。
「僕は、僕の近くには好きなことを、好きと言えるほどしている人がたくさんいるんだ。美羽もそのうちの一人で、凄いと、思う。」
初めて話す人に何を話していいるのかとはっとする。
「ご、ごめ
「ならお前だって探せばいいじゃん!」
笑顔で翔は言った。
「けど、「そんな瑠唯にぴったりの部活紹介してやる!」・・・え?」
「今日の放課後ぜってえ残れよ!連れて行ってやるから」
翔が笑顔でそういうとちょうどチャイムが鳴り翔は席に戻っていった。
放課後残っていると翔が傍へやってきた。
「残ってくれてありがとな!じゃあ行こうぜ」
「ま、待って、あの、どんな部活なの?」
運動があまり得意ではない瑠唯は運動部だけは避けたかった。
「それは着いてからのお楽しみだな!ちょと五月蝿いけれど慣れれば何とかなる!」
「う、五月蝿い・・・?」
ますます不安になる。五月蝿いってなんだ?
翔の顔がとても楽しそうだが瑠唯の顔はますます沈んでいくばかりだった。
不安になりながら着いていくと、つい先日掃除に来た場所だった。
「おんがく、しつ・・・?」
しかもとても古い。
なぜ?
ますます不思議な瑠唯だった。