01
どんな君でも
どんなことになっても
僕は君を守るよ
lucid love 01
「はいちーず!」
七海の持ったデジカメから写真を取る音が聞こえる。
シャッターの前には七海の弟たちの日向美羽、瑠唯が立っていた。
今日は二人の高校の入学式。
二人とも同じ高校に入ることにした。
「うんばっちりよ!二人とも制服が似合う!早速香南さんに見せないとね」
「いや、俺たちよりもななちゃんの今日の格好写した方がにーちゃん喜ぶんじゃね?」
「確かに、ななちゃんも撮ろうよ」
「いやいや、私をとってどうするの。今日はあなたたちが主役なんだから」
香南は仕事で入学式にこれなかった。
何とか来ようとしていたが、メンバーに止められたことと七海がちゃんと写真やカメラをと撮ると説得ししぶしぶ仕事へ向かった。
しかし、3年前に生まれた七海と香南の子供である一樹はカナンに預かってもらっている状態である。
「もうそろそろ私は一樹を迎えに行くけれど、二人はどうするの?」
入学式も無事終わり看板で記念撮影も終わった七海は一樹を迎えにいこうとする。
「んー俺はテニス部よってくる!どんな人たちがいるのか気になるし」
美羽は中学のときからテニスを始めた。
理由は入学した中学の中で一番強い部活がテニス部だったからだ。
厳しい部活で全国一位を目指すことが美羽の目標らしい。
高校もそのままテニスが強いとされている高校に入学することとなった。
「そっか。瑠唯はどうする?」
「ぼ、ぼく?」
瑠唯は驚いたように七海の方を向いた。
瑠唯は中学の時も部活に入らずすぐ家に帰り七海の家事の手伝いをしていた。
本当は好きなことをしてといいたかったが、すぐに一樹を生むこととなり、七海も一樹を育てることでいっぱいいっぱいで手伝ってもらうことがありがたくそのままになっていたのだ。
流石に瑠唯にも申し訳ないと、七海は高校では好きなことを目一杯してもらおうと思っていた。
しかし瑠唯の答えは首を横に振るものだった。
「僕は、家で手伝いをするよ。」
「けど、やりたい部活とかあるでしょ?見てきてもいいのよ?」
「ううん、僕は、これがしたいことだから。」
笑顔で言われると何も言えなくなる。
七海はどうしたらいいのかわからず結局二人で一樹を迎えに行くこととなった。
「おー!瑠唯!」
「おめでとう」
「いらっしゃーい!!うんうん!新しい制服似合ってる!」
スタジオのドアを開けると、ナツル、アマネ、リョウが向かいいれてくれた。
「あ、ありがとう。」
思わず瑠唯もてれながら挨拶をする。
すると後ろの方からにぎやかな声が聞こえてきた。
「あー!まま!るーくん!!!」
嬉しそうな女の子の声が聞こえがばっと瑠唯に抱きついた。
「一樹、ただいま」
「るーくんおかえりー!!!」
「七海、瑠唯、早かったな・・・美羽は?」
その後ろから香南がやってきた。
「美羽はテニス部を覗いて帰るそうです。」
「そうか。二人ともお疲れ様。今雅さんがお茶入れてくれてるから。」
「えっ手伝ってきます!!」
そしてばたばたと七海は奥のほうへ入っていった。
「瑠唯、おめでとう。」
あらためて香南は瑠唯にお祝いの言葉を述べた。
「ありがとう、」
「あとからその、写真七海に見せてもらうの楽しみにしてる」
「うん。あ、ななちゃんのも撮っておけばよかったかな?」
二人で会話をしているとメンバーも会話に入ってきた。
「ななちゃんのはすでに香南シャメに撮ってるはずだよ。でしょ?」
「・・・まあ、」
「ああ、そうだったんだ。」
いつの間にと思ったがそれを口に出さない瑠唯は少しだけ大人になったなと実感した。
「ところで瑠唯、お前入学祝何がいい?」
「え?」
突然の燎の言葉に驚く。
「そうだねえ。美羽は新しいテニスラケットだっただろう?君は何がいいの?」
「えっと、僕は特に・・・」
瑠唯がうつむくと夏流がぶーと頬を膨らませた。
「もったいなーい!こんな時にしか言えないよ?じゃないと僕の欲しいもの買っちゃうよ?」
その言葉に香南が眉をひそめる。
「・・・なつの欲しいものってなんだよ」
「ギター☆」
「却下。瑠唯、いつになってもいいから欲しいと思ったもの言えよ。メンバーからと俺と七海からの二つ分あるぞ」
「う、うん・・・」
会話が終わると奥の方からお茶が入ったと声が聞こえてきた。
「よーし、じゃあもう少しだけ仕事するか。」
「おっけー。あ、瑠唯はななちゃんたちと見学でもしてなよ。香南も気合入るし」
ニヤニヤいう夏流に香南がにらむ。
「あ、うん。」
返事をし、一樹と一緒に奥へ入ると一つの机にお茶が用意されていた。
「やあ瑠唯君。今日はおめでとう」
「ありがとうございます。」
雅が瑠唯のいすを引きながらお祝いを述べる。
目の前を見るとツアーの練習なのか複数のギター、ベースが並び、燎がドラムチェックをしていた。
「香南、ここのキー原曲のままでいいの?」
「ああ。最初だし大丈夫だろ。」
そして一度流すのか夏流がギターを鳴らし周がベースを鳴らし燎がドラムを叩く。そして香南の声が入る。
この心地よい世界に何度引かれたことか。
瑠唯は今日もこの世界に取り込まれた。そして心が少し沈むのを感じていた。
やりたいこと、それは自分にとってとても遠いものだと瑠唯はわかっているからだった。