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lucid love  作者: 朱希
本編
19/25

17

咲いて





咲いて






咲き乱れて






僕を狂わせて








lucid love 17







「おお、」

「これは凄い…」

「やべー!!!」

lugnerのメンバーは夏流の部屋にやってきていた。

あれから1週間がたったが曲を作ったことがないからかあまり進んでいなかった。

そこで、先日夏流が提案してくれていたこともあり、皆で夏流の家へ行くことになったのである。

「あ、あのこの部屋のことは内緒で、あと物にはあまり触らないで…」

瑠唯が3人を先に案内していたが3人のはしゃぎっぷりに苦笑いをする。

「わーってるって。しっかしすげー…本物だよな…」

翔が眺めていたのは夏流が最近ライブで使用しているとある会社に頼んだ夏流モデルのギターだった。

それぞれ触りはしないものの感動しているのが目に見てわかる。

CDやDVDの棚では龍之介が色々物色していた。

「これ、初めてのライブのDVDじゃねえか!!おい瑠唯、これ見ながらやろーぜ!!」

「えっと、その…」

「龍まって。俺ら一応曲作りに来たんだから。見ながらやってたらanfangのような曲を作ってしまうよ。」

そうだ。香南がlugnerに要望したのはlugnerの曲。決してanfangの曲ではないのである。

龍之介が悔しそうにしていたのを見て明がにやりと笑う。

「けど、終わったら、見せてもらいたいよ。瑠唯くん?」

「え、」

「そっそーだよ!!!終わったら見せてもらってもいいだろ!!!」

「えっと、その、はい。」

この部屋じゃなくても瑠唯は自分の家に帰ればそのDVDが手に入る。

もしこの機会に見ることができなくても学校に自分の家から持って行こうと頷いた。







しかし早くもそのDVDが活用されることとなった。

一つひとつメロディをつないでいくが、なかなかうまくいかなかった。

「うーん、これじゃあちょっと…」

「だってどーすんだよ!!残りすくねえんだぞ!!」

龍之介がイライラしてきたのか怒鳴り始める。

「あっえっと、休憩にしましょう!!先ほどのDVD見てもいいですし!」

「瑠唯甘いなー。けど疲れたし休憩にしましょうよ~」

「そうだね。これ以上やってもちょっと進まなそうだし気分を入れ替えようか。」

瑠唯は急いでお茶を入れにいく。

湯のみとお茶を持って行きテレビデッキにDVDをセットする。

「こっこれ、ナツルさんが使ってる湯呑か。」

龍之介の言葉に瑠唯が苦笑する。

「えっと、一応お客様用なので、多分使っていないと思います…」

「いやけどお客様用ってことはアマネとか使ってるかもしれないってことだよな!」

翔がまたもやキラキラした目で瑠唯の方を向く。

周やメンバー、うちの家族の湯のみは別に用意してあるのでほとんど使っていないだろうと思いながらも一応頷くと翔は嬉しそうにその湯のみで飲み始めた。

DVDが始めると一同テレビに釘付けだった。






このDVDは一度だけ昔見たことがあった。

久々に香南が休みでけれど特にしたことがなかったためDVDを見ようと言うことになった。

『好きなものを取ってきていいよ』

香南の許可を得たため瑠唯と美羽は香南のDVD用の棚を物色しに行った。

そして一番左側に置いてあったDVDそれは二人にとって初めて見たものだった。

『にーちゃ!僕たちこれが良い!』

『いい!!』

ニコニコしながら持って行くと香南が驚いたように瑠唯たちの方を向いた。

『これがいいのか?』

『うん!』

『みたい!』

『まあ、なんですか?』

七海が楽しそうに瑠唯たちの方に来る。

『これは、その俺たちの初めて映像化したライブなんだ。』

恥ずかしそうにつぶやく香南に七海が笑顔で応じる。

『私、見てみたいです。私の知らない香南さんがみたいです。』

それから鑑賞した物は本当に辛かった。



香南の目が笑っていない。

無理矢理死にたがっているようにも見えた。



思わず瑠唯は泣きそうになって美羽の方を見た。

すると美羽はすでに泣いて香南の方へ抱きついていた。

七海は正座をして手を膝の上で震わせながら一生懸命見ていた。

そんな皆を見て香南は見せるんじゃなかったという様に舌打ちしてすぐに消そうとした。

しかし、七海はその手を遮った。

『香南さん。私は、知りたい。』

とても切ないけれど、とても暖かかった。








そう、世界は暖かいのだ。

突然瑠唯は立ち上がった。

「瑠、瑠唯…?」

翔が突然のことにびっくりしながら尋ねる。

「僕、ちょっと思いついた。」

急いで思いついたフレーズを呟く。

それを必死に音譜に直す。

瑠唯は楽器ができないため今はこれで精いっぱいだったのだ。

「サビ、これが良いんですけど…翔、あの弾いてもらっていいかな…?」

「あ、ああ。」

それを翔にギターで弾いてもらう。

すると3人は驚いたように瑠唯の方を向いた。

「あ、ちょっと待ってください。Aメロも…」

そして次々に書きだしていく。

3人が呆然としている中瑠唯は今この瞬間思いついた音に夢中だった。

後ろではDVDで香南が辛そうに歌っている。







駄目だ。これは僕ではない。






僕の音は――――







暖かく、静かで、狂おしい、








絶望をもかき消す光

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