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lucid love  作者: 朱希
本編
17/25

15

怖いけど






あきらめない







lucid love 15










瑠唯がわんわん泣いてるとドアからさらにメンバーが現れた。

「あー!香南が瑠唯泣かせたー!」

ニヤニヤと夏流が笑いながら香南に話しかけると睨まれた。

翔や龍之介、明はそれをただ驚いてみていることしかできなかった。

今まで憧れていた人物が、目の前にいる。

友達に親しく話しかけている。

香南に頭を撫でられている瑠唯が落ち着いてくると翔が話しかける。

「えっと、瑠唯…これは一体…」

はっと瑠唯は3人の方を見る。

3人は驚いたような、困惑した様子で瑠唯を見ていた。

急いで真っ赤な目をこすり立ち上がろうとすると横の香南が立った。

「はじめまして、瑠唯の兄の香南です。いつも瑠唯がお世話になってます」

そして深々と礼をする香南に3人は目を見開く。

「うわー香南親っぽーい」

「あぁ言うこともできるんだねえ。」

「いつもしねえけど」

後ろでメンバーがからかっていると香南が後ろを睨む。









「瑠唯、もしかして前言ってた兄ちゃんって…」

「だっ、黙っててごめん、なさ」

瑠唯も立ちあがり謝る。

「なんで言わなかったんだよ!!!」

龍之介が前のめりに叫ぶ。

しかし明が龍之介を制止する。

「龍、落ち着いて。瑠唯くんは言わんかったんじゃない。言えなかったんだろう?」

明の言葉に瑠唯はコクリと頷く。

「ぼ、僕、嬉しかったんです。大好きな、anfangをこんなにも愛してくれる人たちがいるって。けれど、言ったらどうなるのかなって。”僕”とanfangの話をしてくれるのかなって。」

その言葉に龍之介がどもり下を向く。

「美羽とも違う人だって認識してくれて、嬉しくて、けっけれど嬉しくなればなるほど言えなかった…それが、凄く辛くて、苦しくて…」

瑠唯が涙を流しながら話す。



言いたい。自分の自慢のお兄ちゃんを。お兄ちゃんたちを!!!

けどどうなる?

僕の大好きなこの場所は…

全てがなくなってしまう…?

怖い。言いたくない。




それの繰り返しだった。

「もしかして、傍で傷ついた人って…」

瑠唯は3人を見渡す。

「ジュエリストを反対したのは、勘なんかじゃない。僕の、信じる人を信じたかったんです。」

3人は黙ることしかできなかった。

瑠唯の言葉の裏を知ってしまった以上、今まで簡単に契約を結ぼうとしていた自分が消えようとしていたからだ。

「やっぱりジュエリストから打診されてきてたんだね」

横から口を出してきたのは雅だった。瑠唯は雅の方を向くと頷いた。

「毎回ライブに来ていたんです。けど、」

「なるほどねえ…」

「僕らの時もそうだったね。」

「まあ、乗っちゃった俺らも俺らだけどな。」

メンバーが思い出すように語りだした。





そして今度は香南の方を向く。

そして深く腰を折る。

「にーちゃん、ごめんなさい。」

「・・・」

「僕、覚えてた。にーちゃんが反対したこと。けどね、けど僕、どうしても諦められなかった。」

瑠唯は翔と出会ったころを思い出していた。

やっと、巡り合えたと思った。

半年しか経っていないのにとても濃い時間だった。

中学校の2倍も3倍も楽しくて、ずっと一緒にいたかった。

再び頭をあげ香南を見る。

香南の顔は真剣だった。






「諦めなかったからこんなに素敵な友達に出会えた。仲間に出会えた。」





「にーちゃんの音が凄く好きなんだ。僕、ずっとそれが目標だった。」






「僕は、僕はもっとにーちゃんに近付きたい。」











しばらく沈黙が続いたが、香南がはあとため息をつく。

「瑠唯の曲、聞いた。」

「うん…」

「瑠唯、お前の声は全てを魅了する。趣味でやってもいずれどこかでオファーがかかる。辞めるか、プロになるかこの世界でお前は2択しかない。」

香南は初めて音楽を聴いて心が動いた。

身内ということを抜きにしても、瑠唯の声、表現力は並大抵のものではなかった。

しかしそれが身内だから困るのだ。

他人だったらメジャーデビューしようがなにしようが関係ない。

瑠唯だから、大切な大切な弟だからこそこの世界に踏み込んで欲しくなかったのだ。






「それでも、お前はやるのか?」

瑠唯は今まで感じたことない香南の目を見る。

それは突然孤島に放り出されるような孤独感感じさせる目だった。

瑠唯は唇を固く結び大きく頷く。








「僕、やりたい。このメンバーで、皆でやりたい。」








「瑠唯、」

「お前…」

翔と龍之介が呟く。

ここまで自分たちのことを想ってくれているとは考えていなかったのだ。











再び香南がため息をつくと今度は翔、龍之介、明の方を向いた。

「瑠唯がこう言ってる。お前らもやる意思があるなら、一カ月後までに一曲曲を作れ。」

「・・・え?」

瑠唯は驚いたように香南の方を向く。

「もう一度、一カ月後のライブ聴きに来る。そこで披露しろ。そこで俺たちanfangが認めないとお前らを解散させる。」

「え?!」

「ま、まじかよ…」

翔と龍之介の言葉にメンバーがクスリと笑う。

「そりゃ、うちの宝物の人生がかかってるからね。僕らも本気で聴くよ?」

「売れるか売れないか、こればっかりは俺らでもわかんねえからなあ。」

「少なくとも、オリジナルを作ってくれないと話にならないってこと。」

ね、雅さん?と周が雅の方を向くと雅は苦笑いをした。

「一応、”聴く耳”は持ってるから。楽しみにしてるよ。」

「あの、」

明が香南に質問をする。

「もし、そこで認められたら、俺たちはどうなるんですか?」






その言葉に苦笑いするだけで香南が答えることはなかった。







2話と13話に編集を入れています。詳しくは活動報告をご覧ください。



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