なぜ私が
「なぜ私が・・」
数日前だった。私は病院で医師と向き合っていた。
その医師は、
「山本さん、山本さんはすい臓がんレベル4です。
余命は4か月」
と、私に。
本人への宣告で有名な病院を選んだ私が悪いのか?
しばらくは通常の生活をした。
妻には告げた。
妻は当初、どう対応してよいのか混迷しているようだった。
しかし、時間がたつにつれ、
非常に冷静に対処し始めた。
「あなたが死んだら、私ひとりで楽になるわ」
と言いながら、
献身的にいろいろやってくれた。
ついにそのときが来た。
職場で倒れた。
職場には事前に伝えてはいた。
救急車で運ばれた。
と言っても、
それを知ったのは、病院のベットの上。
それも話せなかった。
植物人間になっていたのだ。
とはいうものの、意識はあった。
その方が苦しかった。
他の人の声が聞こえるのだ。
しかし「返答」ができない。
「あなた・・・」
妻は泣いている。
なぜか第三者のように見えていた。
まさしく「俯瞰」だった。
幽体離脱でもしているのだろうか?
一番恐ろしい事は、それから数日後に起こった。
葬式も終わり、私の身体が火葬場に運ばれた。
ここに(それは何処だろう?)に私がいるのに。
思いっきり叫んだ。
「俺はここにまだいる!」
と。
もちろんその声は誰にも届かない。
私の身体は無くなった。
これなら、事件で、埋められた方がよかった。
私はまだ生きていた?
初盆が来た。
親族だけでなく、葬儀に来れなかった知り合いが多数来た。
正直うれしかった。
しかし意外な真実も明らかになった。
息子が行方不明だった。
連絡が取れなかった。
もしかしたら、知っていて来ないのかもしれなかった。
「風太!」
妻の声がした。
息子が姿を見せたのだ!
はっきり言って、
生きている間に再会したかった。
しかし・・
「親父!何で死んだんだよ!
これじゃ反抗できないじゃないか!」
泣けてきた。
幽体が泣ければの話だが。
「親父!俺、ハヤテに入ったぞ!」
そうなんだ!私の息子はプロ野球選手への道を進み始めていたのだ。
それも中卒で。NPB史上中卒での採用は1人しかいない。
ハヤテには他のNPB球団と違い一軍がない。
もしかしたら、その分一軍に行くのは難しいのかもしれない。
しかし、その分、広く門戸が開かれていた。
と、これはすべて、
風太から聞いた話。
死ぬ前?
いや、風太が私の墓前で語ってくれた。
これも生きていたらなかったかもしれない。
こうして、作家デビューもできた。
たぶん生きていたらこうはならなかっただろう。
「死」は怖い。
しかし、ソクラテスも言っているように、
考え方を変えれば、「死」も人生で一番楽しい
「睡眠」
のときのようでいいものかもしれない。
そして人間は未来を予想して楽しむ。
「夢」
というやつだ。
現実世界では、
それは外れることは多い。
しかし死後は違う。
絶対外れない。
というか、
まあ、自分の死後では、
自分はわからないだけだが。
それもいいではないか。




