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なぜ私が

掲載日:2026/05/07

「なぜ私が・・」

数日前だった。私は病院で医師と向き合っていた。

その医師は、

「山本さん、山本さんはすい臓がんレベル4です。

余命は4か月」

と、私に。

本人への宣告で有名な病院を選んだ私が悪いのか?



しばらくは通常の生活をした。

妻には告げた。

妻は当初、どう対応してよいのか混迷しているようだった。

しかし、時間がたつにつれ、

非常に冷静に対処し始めた。

「あなたが死んだら、私ひとりで楽になるわ」

と言いながら、

献身的にいろいろやってくれた。


ついにそのときが来た。

職場で倒れた。

職場には事前に伝えてはいた。


救急車で運ばれた。

と言っても、

それを知ったのは、病院のベットの上。

それも話せなかった。

植物人間になっていたのだ。

とはいうものの、意識はあった。

その方が苦しかった。

他の人の声が聞こえるのだ。

しかし「返答」ができない。

「あなた・・・」

妻は泣いている。

なぜか第三者のように見えていた。

まさしく「俯瞰」だった。

幽体離脱でもしているのだろうか?


一番恐ろしい事は、それから数日後に起こった。

葬式も終わり、私の身体が火葬場に運ばれた。

ここに(それは何処だろう?)に私がいるのに。

思いっきり叫んだ。

「俺はここにまだいる!」

と。

もちろんその声は誰にも届かない。

私の身体は無くなった。

これなら、事件で、埋められた方がよかった。



私はまだ生きていた?

初盆が来た。

親族だけでなく、葬儀に来れなかった知り合いが多数来た。

正直うれしかった。

しかし意外な真実も明らかになった。

息子が行方不明だった。

連絡が取れなかった。

もしかしたら、知っていて来ないのかもしれなかった。


「風太!」

妻の声がした。

息子が姿を見せたのだ!

はっきり言って、

生きている間に再会したかった。


しかし・・


「親父!何で死んだんだよ!

これじゃ反抗できないじゃないか!」

泣けてきた。

幽体が泣ければの話だが。


「親父!俺、ハヤテに入ったぞ!」

そうなんだ!私の息子はプロ野球選手への道を進み始めていたのだ。

それも中卒で。NPB史上中卒での採用は1人しかいない。

ハヤテには他のNPB球団と違い一軍がない。

もしかしたら、その分一軍に行くのは難しいのかもしれない。

しかし、その分、広く門戸が開かれていた。

と、これはすべて、

風太から聞いた話。

死ぬ前?

いや、風太が私の墓前で語ってくれた。

これも生きていたらなかったかもしれない。



こうして、作家デビューもできた。

たぶん生きていたらこうはならなかっただろう。




「死」は怖い。

しかし、ソクラテスも言っているように、

考え方を変えれば、「死」も人生で一番楽しい

「睡眠」

のときのようでいいものかもしれない。

そして人間は未来を予想して楽しむ。

「夢」

というやつだ。

現実世界では、

それは外れることは多い。

しかし死後は違う。

絶対外れない。

というか、

まあ、自分の死後では、

自分はわからないだけだが。

それもいいではないか。


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