表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたので隣国乗っ取って取り返しに行く系王女  作者: サイリウム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/16

9:戦争ですわ!

というわけであれから1週間後! 国外脱出から10日目!


戦場にやって来ましたわ~!!!



「壮観ですわね!」


「ほんとに来ちゃったよこの人……。え、コレ巻き込まれませんよね!?」



そういうジェーンを無視しながら、その辺の木の枝を集め焚き木の用意を始めます。


現在いるのは、先日まで滞在していた『カレリア』から大きく西の地点。国境線が存在する場所となっております。滞在していたドンエーニュ王国とその隣国であるリーアン王国の領土争いですわね。移動をしながら情報を集めていたおかげか、ある程度開戦場所を予想できたのですごくいい場所を取ることが出来ましたわ~!



「戦場を一望できる丘! うんうん、お弁当持って来て正解でしたわ!」


「いやだからアデ様!?」


「お荷物! 煩いですわよ! ちょっとでも戦術齧ったらこの場所の利用価値が欠片もない事ぐらい解るでしょう? 巻き込まれるとかありえませんわ~!」


「私ただのメイドですが!?!?!?」



そう言いながら茶葉の入った袋を投げつけると、若干キレながらもお茶の用意をしてくれる彼女。うんうん、流石ワタクシのメイド。解ってますわねぇ!


先程も言ったように、現在いる丘は戦略的価値の薄い地点です。確かに高台で戦場全体を見渡すことが出来ますが、ここにたどり着くまでにちょっと面倒な林や茂みを通り抜けなければなりません。もしこれが現代のような優れた通信技術を持っていれば通信兵の一人や二人を配置しておくべき場所なのですが……、今って伝書鳩が最速の通信方法ですからね。



(しかも帰還率が低い上に相手の方に行っちゃう可能性もあるから採用されてない、っていう。)



というわけでま、ジェーンの言うようにそこまで気にする必要は無いんですよね! 安心安全ですわ! というかもしここにどれだけ兵がやってこようともワタクシが全部吹き飛ばしてやるので安心してもらって結構ですのよ~!



「そう言えばそうでしたね……。はいアデ様。ちょっと適当ですけど。」


「どもですわ!」



まぁこの辺りの茶葉お互いよく知りませんものね、なんて言いながら入れてくれた茶を口に含みます。


……あ、美味しいですわね。流石我がメイド。大きい町に立ち寄った時、必ず離脱してどこかに消えるという悪癖はあれど、やはりメイドとしての技能はちゃんとある様子。ワタクシ満足です!



「叩き込まれましたからね、色々。それでアデ様? 戦術を学んだということですが、この戦をどう見ていらっしゃるのですか? どうせ暇ですし、観戦なさるのならこの哀れなメイドに教えを頂きたく。」


「そんな言わなくても解説くらいしてあげますわよ? そうですねぇ……」



実際に見てきたわけではないので、憶測が多く含まれますが……。


今回の戦争は、リーアン王国の侵略戦争。つまりワタクシが流れ着いた国であるドンエーニュ王国が攻め込まれている形になります。おそらく前世でいうパリを中心とした領土で構成された王国と、ブルゴーニュ公領に近しい国家の戦い。土地の少ない中型犬が、大型犬に奇襲攻撃を仕掛けた感じですわね。


まぁどこも小国、それも地続きの他国に囲まれている国と言うのは辛いものです。少しでも力をつけ領土というリソースを手に入れるためにも、お隣に攻め込み土地を奪う。他の国に攻め込まれないためにも戦わないという手段は取れない。ま、よくある戦争ってことです。



(……名前言うのめんどうなので、ワタクシたちが居た国をA。攻めてる国をBとしますか。)



そんな小国Bですが、奇襲が上手くいったようで最初はイケイケだったようですが、そもそも国力が大きいのはAの方。すぐに巻き返されてしまいます。


領土に攻め込まれいくらか切り取られたと言えど、時間をかけて貴族たちを呼び、兵力を集めれば対抗できる力を用意できるのがBです。徐々に小さな戦に勝ちながら、仲間を集めて完全に勝ち切る道を模索する。そういう戦法をAは選んだご様子。


ですがまぁBとしても、敵が完全に集まったら勝てないので対抗しなければなりません。まだ残ってる戦力をかき集めて……



「ここから見える平原で全面衝突ってワケ。」


「……つまりまだ全員集まってない大国A軍と、若干勢いが落ちてる小国B軍ってことですか?」


「Exactly! よくできました!」



ま、Aことドンエーニュ王国もそこまで大きな国ではないんですけどね? 大体Bの2倍くらいでしかないですし、もっと南の方には5倍の国土持ってる国とかもありますから。



「なるほど、んでどっちが勝つんです?」


「そりゃ勝負は時の運ですからそこまでは解りませんわ? ただ、勝率が高くワタクシにとって都合がいいのが……。」



Aの方。ドンエーニュ王国です。ま、国が大きいってことはそれを支える経済、金を沢山持ってるってことですからね? そんな相手に小国が勝つには、小銃や弩弓といった技術的なブレイクスルーか、諸葛亮のようなヤバめの軍師を引っ張って来るぐらいしかありません。そういった話はてんで聞きませんし、今回のような平地での合戦では数の多いAが有利でしょう。


そして、ワタクシとしてはそっちの方が都合がよい。


何せドンエーニュ王国には“カレー”、ワタクシたちの母国から一番近い大陸の港。カレリアが存在しますもの。



(まだ筋は見えませんが、可能ならばあの地は真っ先に抑えておきたい場所です。つまり一番乗っ取れてうれしいのが、Aのドンエーニュ王国。国土もある方ですし、狙うには良い国です。)



戦に負ければ、王の求心力が落ち、貴族が勝手をし始めます。そしてそれを取り返すために民に重税をかけ、国が荒れていく。確実にそうなるとは言えませんが、そうなる可能性が高いでしょう。ほら、乗っ取った相手は綺麗で整っている方が嬉しいでしょう? だから負けてほしくないのです。


ま、落ち目の国で活躍すれば一気に爵位が手に入りやすくなるっていうこともあるので“どっちでも良い”感じではあるんですけどね~! その辺りは追々ですわ~!



「あ、始まった。」



そんな風に考えていると、ジェーンの声が。


茶を口に含みながらその視線の先を見てみると、動き出した両軍の姿。


開戦、ですわね。



「い、いっぱいいますねぇ。」


「Aが4500、Bが3000程。ま、ドンエーニュ王国からすれば負けるのがおかしい戦いですわね。その分リーアン王国からすれば、腕の見せ所ってやつですが。」


「はぇ~。あ、そうだ。アデ様。別に観戦なさるのは良いんですけど、結局なんのためにここまで来たんですか?」



え、言ってませんでしたっけ?


死体漁りですけど。




「…………は?????」







◇◆◇◆◇






「というわけで戦場にやって来ましたわ~! いやぁ、リーアン王国は惜しかったですわねぇ。途中までは上手く行ってたんですが、少数での逆包囲の最中に味方の貴族分隊が逃げちゃって崩壊。そのまま総崩れになるとは……!」


「アデ様!?」


「ドンエーニュ王国からすればマジでビビったでしょうね。数で押せば勝てるはずが、徐々にキルレートがひっくり返って負けが見えてくる。同数まで追い込また時の陣容の慌てっぷりはもう傑作! そこから何とか立て直したのは見事という他ありませんが、相手がミスってなければ負けてましたものね!」


「だからアデ様!?」


「これが歴史に残るかは後の歴史家次第ですけど、本当に見応えありましたわァ! というかリーアンの兵を動かしていた誰か! 未だ荒さは見えましたが、完全に才あるものです! あぁ、ここが他国じゃ無きゃすぐにスカウトに行ったのに! いやむしろ今だからこそ動くべきか? 全くどうしましょう! 楽しくなってきちゃいまし……」


「だから聞けこのボケェッ!!!」



おぉいいストレート。


死屍累々の現場で一人興奮していると、大事なメイドからの全力ストレート。うぅん、魔力による身体強化も乗っていていいパンチでしたわねぇ! ちゃんと顎に狙いを定めた殺意ある一撃! 鍛え上げられた騎士であっても確実に刈り取れたことでしょう!


ただまぁワタクシの方が強いのでノーダメージというか、ジェーンの指の方が折れてますけど。



「おごぉッ! ば、化け者がッ!!!」


「それ主人に叫ぶ言葉じゃないでしょ。ほら治してあげるから手出しなさい。」


「こ、これで骨折治せる治療魔法が使えるの無法すぎるだろこの人……!」



王は強くてなんぼですわ! 一番偉いってことは、一番強いってことですのよ!


それを証明するためにワタクシは鍛えているのですわ! 無論王族故に、我が祖先の皆様が強い人間の血とか、魔力の多い血を色々と取り込んできていたのは事実ですが、それを生かすか殺すかは自分次第! ジェーンも悔しかったら死ぬまで鍛え続けるのですよ~!!!



「い、いや、いいです。……んで、アデ様。なんで死体漁りとかするんですか。貴女王女ですよね?」


「そりゃひっぺ替えして売るからですけど?」


「……お、王女ですよね???」



王女ですわよ?


でも現状追い出されてますし、今の身分は単なる冒険者です。それにここまでの道中いくらか稼いだのは確かですが、今度を考えるとかなり心細い金額でしかありません。確かにお茶をお外で楽しめるぐらいの余裕はあるんですけどね? 国盗りの第一段階である貴族に成るという目標、それを為すにはまだまだ足りないのです。


というわけで死んで“持ち主不在”に成っちゃった方々から色々拝借しますわ!!!



「あ、勿論最低限の礼儀として、お一人ずつ丁寧に埋葬しますわよ?」


「なら安心ですね……、とはならないんですよバカ! 貴女王女!!! し、死体漁りとか普通選択肢にも上がらないでしょうがッ!!! な、な、何しようとしてるんですかアンタッ!」


「いやでも、非合法の副業として結構有名でしょう、死体漁り。戦場の近くの村とか若い衆派遣して色々持って行くってのはよくある事ですわ。」



でも彼らは盗れるもの盗った後は放置か、最悪火を放ってしまうでしょう?


前世日本人で火葬文化なワタクシからすれば何でもないですが、この世界からすれば火葬は厳禁。キリスト教にちょっと近い感じなので、土葬以外ダメな感じなのです。つまり同じ窃盗ではありますが、ちゃんと埋葬するワタクシの方が超真面。これで祟られずに済みますわ~~!!!



「あ、一応聖句も読み上げておいた方がいいですわね! ついでに国盗りが終わったら聖職者も派遣いたしましょう! うん、いい考え!」


「どこがですかッ!!!」


「んもぅ、煩いですわねぇ。ほら皮の手袋! 貴女も一緒にするんだから気張りなさいな! 最低でも3000くらいはありますもの! 頑張ってはぎとりますわよ~!」


「は!? ……いや、は!?!?!?」



というわけで脱ぎ脱ぎしていきますわよ~。


あら貴方。早速どっかの貴族の子が出てきましたわね! うんうん、最後まで頑張ったんですわね。偉いですわ。来世はきっといい感じ、裕福で文化に溢れた日本あたりに生まれ変わるでしょう。こっちの世界じゃ転生がメジャーじゃないので最初は戸惑うと思いますが、楽しむんですのよ!


……あ! 流石にこういう名アリの方の遺品を売っぱらっちゃうのは問題なのでいつかお返しに行きますわ! 狙いは一般の方ですのよ~!



「うわこの人ほんとにやり始めたよ。えぇ……」


「あ、ジェーン! ちゃんとその皮手袋付けるんですのよ! あと死体触った手とかで顔触らないこと! 病気になりますわ! 後作業終わった後は度数の高いお酒持ってきましたから、それで消毒しますわよ!」


「は、はい……。初めて本気で逃げたくなってきた……。」




逃がしませんわよ? 永遠に。


私だってこの行為が王女としてというか、人としてちょっとアレなのは把握していますわ! だからこそ贖罪の意味を込めて丁寧に扱ってるわけですし、剥ぎ取った後には成りますが全員分の穴を1つずつちゃんと掘って埋葬するつもりです! あ、十字架も立てますわよ?


ですがそれだけしても人としてやっぱ不味いのです。王女という立場以前に、死者を辱めているわけですから地獄行きは確定でしょう。前世の宗教観でも、今世の宗教観でも同じです。ですがまぁ、ワタクシがクーデターされずに王になったとしても、戦は起き自身は大量の死を生み出す存在になっていたでしょう。どうせ地獄行きは変わりません。ま、転生してる“私”が言うことでは無いんだろうけどね。


ま! つまりこのことを知るのは最小限、もっと言えばワタクシ一人でいいのです。けどワタクシは大事な大事なメイドを手放すわけにはいきませんから……。



「ふふ、地獄でも“私”に仕えてくださる?」


「……あ~。断ったら?」


「今すぐ寝てもらいますわ♡」


「永眠でしょソレ、知ってた。……どうせ逃げられないんです。だったら死んでもお付き合いしますよ。その代わり、退屈させないでくださいね?」


「もっちろん!」



それこそワタクシのメイドですわ!



「あ、でも。たまには大人しくしてください。マジで。後覚悟するための時間も沢山欲しいです。これ以上振り回さないで? ほんとに。」


「前向きに検討しますわ~~!!!!!」







〇マセールヌ川の戦い(13XX)

マセールヌ川の戦い(マセールヌがわのたたかい)は、13XX年にドンエーニュ王国(A)とリーアン王国(B)の間で行われた会戦である。リーアン王国による領土拡張を目的とした宣戦布告を契機として勃発した戦争の中で発生した戦闘であり、平野部での正面衝突の末、ドンエーニュ王国軍が勝利した。


・概要

本戦闘は、マセールヌ付近の平野において行われた会戦である。ドンエーニュ王国軍約4,500名に対し、リーアン王国軍は約3,000名で対峙した。戦闘序盤、リーアン王国軍は機動力を活かした戦術によりドンエーニュ軍を翻弄し、敵軍の側背へ回り込む形で逆包囲を成立させるなど、戦局を優位に進めた。しかし戦闘の最中、激戦により損耗していたリーアン軍の一部貴族部隊が統制を失い、命令を待たずに戦場から敗走。この離脱により包囲陣形に大きな隙が生じた。


・戦局の転換

リーアン軍の包囲が崩壊したことで、包囲されていたドンエーニュ軍は戦線を再編し反撃に転じた。兵力に勝るドンエーニュ軍は崩れた戦線を押し広げ、最終的にリーアン王国軍は撤退を余儀なくされた。この結果、戦闘はドンエーニュ王国の勝利に終わった。


・兵力

ドンエーニュ王国軍:約4,500

リーアン王国軍:約3,000


・損害

ドンエーニュ王国軍:戦死 約2,000

リーアン王国軍:戦死 約1,000


・影響

戦闘後、リーアン王国側から講和交渉に入り最終的に停戦が成立した。ドンエーニュ王国側は依然として軍事的余力を残していたが、本戦闘における損害はドンエーニュ軍の方が大きく、さらに南方のセヌリア王国が侵攻の動きを見せたため、戦線の拡大を避ける必要があったと考えられている。

また、戦闘によって多くの兵力を失ったことはドンエーニュ王権の威信にも影響を与えたとされ、後世の研究ではこの消耗が王の求心力低下を招き後の国内混乱や王国の滅亡につながった可能性が指摘されている。


・評価

本戦闘は、戦術的優位に立っていたリーアン王国軍が、貴族軍の統制崩壊によって敗北した例として知られている。中世の封建軍における諸侯軍の独立性と指揮統制の脆弱性を示す戦例として、後世の軍事史研究においてしばしば言及される。

一方で、敗北したリーアン軍の撤退戦は比較的秩序を保っていたとされ、その指揮を担った戦術家ジャドレは、この戦いを契機として軍事的才能を評価されるようになったと伝えられる。


なお、本戦闘に関する記録は比較的詳細に残されており、特にエンラード王国の『アデライード女王記』に多くの記述が見られる。しかし、同国が当時直接の参戦国ではなかったことから、これらの資料がどのような経緯で収集・保存されたのかについては現在でも研究者の間で議論が続いている。







誤字報告大変ありがとうございます。

感想、評価、お気に入り登録。どうかよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ