3:服ねぇですわ!
「っと! 殲滅終了! というわけで色々漁ってみたのですが……」
「なんというか、酷いですね。」
仕方ないのかもしれませんが、と続けるジェーンに頷いておきます。
洞穴から飛び出て来たゴブリンを70程。中に入って30程。合わせて100程のゴブリンを殲滅し、そのまま外に出して着火。大きなキャンプファイヤーを生み出した後は洞穴の中を探索し、彼らが人から奪い取ったのだろう物たちを外に引っ張り出してみたのですが……。
まぁちょっと、アレでした。
「多少の銅貨と、“そういう匂い”に包まれた服数着。明らかな人骨数セットと、その持ち物だろう簡易な武器と防具。後は女性の亡骸……。」
「この辺りの地理が全く解らないのでアレですが、捕まっちゃったんでしょうねぇ。」
なんかアレですわね。いきなりこの世界のダークなところが出てきて嫌ですわね。萎えますわ!
……まぁもう死んじゃってる以上、どうすることも出来ません。復活とかソレはもう神様の領域ですから。ある意味蘇っちゃってるワタクシが言ってはいけない様な気もしますが、人の身にできることはもうないのです。せめて彼女と被害者の魂がこの世界における天国、もしくは私同様にいい感じの転生が出来るよう祈っておくとしましょう。
だから祈るから遺品有効活用するの許して? え、無理? そんな……!
「とりあえず洞穴から少し離れた場所に埋葬して差し上げましょうか。身元が解る品もありませんし、返す場所もありません。かといってゴブリンの燃えカスと一緒は嫌でしょうし……。遺品使わせてもらうお詫びとして、それぐらいしなくちゃですしね!」
「……畏まりました。出来る限り整えさせて頂きます。」
ん、よろし! 助かりますわ! 女性ですし、最後くらい綺麗にしてあげませんと!
今回見つけた“彼女”は、言ってしまえば無関係の人間。我が国民でない以上、自身に何かしらの責任が生じることはありません。しかしながら同じ人ですからね! コレぐらいはしないと次期女王の名が泣きますわ! だから遺品貰っても祟るのはやめてくださいまし~~~!!!
さて! では気を取り直して“戦利品”の確認をしていきたいのですが……。
「銅貨はまぁいいですわ。ちょっと一般の金銭感覚が解らないので何とも言えませんが、使えはしますでしょう。ジェーンはその辺り解りますわよね?」
「まぁはい。よく仕事サボって城下町出てましたし。」
「……とりあえず聞かなかったことにして差し上げます。んで問題が。」
「服……。」
「クソ匂いますわね。」
女物ではあるのですが、ちょっとその。あの匂いと跡が……、はい。
ゴブリンなんぞに洗濯の文化が無いのは理解してましたが、あいつら自分が出したアレの匂いで気が滅入ることとか無いんですかね? なんかもう普通にイヤですわ。……え、もしかしてコレ着ないと町とか入れない感じ? このどれだけ洗っても匂いどころか跡すら落ちそうにないコレを?
……ジェーン。
「え? は? い、嫌ですけどッ!?」
「ワタクシもですが? でも1人分用意できれば、町に入った後適当な服を買って来くるってのは出来るでしょう!? 魔法使えば水場の場所位解りますし、洗えば何とかなる!!!」
「何とかなるわけないですよ!!! は!? こ、コレ着て人前に出ろと!?!?!?」
うん、まぁ……。そういうことになりますわね。
正直、気心知れた貴女にこんなことを言いたくはないのですが……。自身が使える尊き相手、次代の国主となる様な人間にこんなもの着せる……。なんてことは、言いませんよねぇ?
「わ、私だって伯爵家の出ですけど!? 偉い方ですけど!? い、いや確かにスペアですらない立場で放逐される直前に拾ってもらった身ですけどッ! い、イヤですよこんな! 殿方のそういう本みたいなやつじゃないですか!!!」
「解る。でもこれ以外手段なくない? あと『体売ります?』とか言ってた奴がそういうの気にするとか……。」
「それとこれとは話がッ! いや確かに悪かったですけど! な、何か! 何かほかに方法! 回避する方法は……。そ、そうです! 今着てるメイド服! コレ! コレ改造しましょう! この服ばらしてまだ使える場所切り取って! 何とか見える様に!」
あぁ、確かに。それならまだ許容できますわね。
ワタクシのドレスは最悪換金できるのでそのまま置いておくのがいいでしょうが、ジェーンの服はまだ加工可能です。質がいいのは確かですが、海水に浸かってちょっとボロってますからごまかしがききます。それに、白いのまみれの服をそのまま着るのではなく、汚れてない服の部分を使って加工すればまだ“見える”様になるかもしれません。
……ところでジェーン。貴女裁縫とか出来るの?
「……」
「あ、崩れ落ちた。おもしろ。」
はぁ、仕方ありませんわね。
一応前世で触ったことはありますし、不格好でも何とか形位には出来るでしょう。あんまり触りたくはありませんが、ゴブリンの小骨もある事ですし……。やってあげるとしましょうか。
ま、ワタクシも自分の従者がアレまみれの服着てるの見たくないですからね~。
「あ、ありがとございます……!」
「その代わり服の洗浄はしてくださいね? 仕立て直すにしてもある程度の面積は必要ですし。」
「さ、触りたくないッ……!!!」
解る。
ま、まぁ水場の確保と今日の分の食事ぐらいなら適当に狩って来て用意して差し上げますから、ね? ゴブリンが使ってた矢も接収できましたし、気候的に鹿ぐらいなら出てくるでしょう。捌き方は頭に入ってますし、焼けば腹は満たせるはず。
だからその……、頑張ってくださいまし。うん。
◇◆◇◆◇
それでまぁいい感じの鹿を見つけて、確保。
見つけた水場で血抜きし、泣きながら服を洗うメイドを眺め解体。その後は鹿と亡骸を抱えて開けた海岸線こと漂流地に帰還。亡骸を埋めて近くにあった廃材でお墓代わりに。その後は少し離れた場所で火を起こし、国外逃亡後初めてのご飯を作っていたのですが……。
何故か泣きながらこっちに走って来るジェーンの姿が。
「アデ様ッ!」
「……つ、ついにストレスで頭がッ!」
なんかもう顔が涙で酷いことに!
まぁ偶々見つけた川で服洗ってる時の顔、滅茶苦茶ヤバかったですからね。生理的に無理なものを無理に洗濯しているわけですし、洗剤もないので手洗い一択です。本気で泣いてて途中変わろうと思ったのですが、鹿の解体してる血まみれな私を見てまた泣いてたのでどうしようもなく……。
あ、そうそう。色々汚れると困るので現在ワタクシ下着オンリーとなってます。鹿解体時の返り血が予想以上に多そうだったので脱いじゃった感じです。まぁあのドレス、王族専用の奴なのでかなりの高値で売れそうなんですよね。身元がバレるので最終手段ですが、洞穴で見つけた袋に装飾品と併せて纏めてあります。
んで? なんで泣いてるんですのジェーン。クーデターからの国外逃亡で転覆3回、そこからゴブリン関連で心がやられるのは理解できますが、マジで頭やったのなら“衝撃療法”しか私に出来ることは……!
「ナチュラルに殺そうとしないでください!!! じゃ、じゃなくて! 見てくださいコレ! コレ!」
「うん? 漂着物ですか? 見た感じ、船の帆あたりだと思うのですが……。」
「これ! これ! 服の改造! 使えますよね! 例のアレ使わなくて済みますよねッ!!!」
あぁ、成程。
彼女が拾ってきたのは、白く大きな布。難破したのであろう船のパーツです。こういうのって海岸線近くにある村とかが勝手に回収して再利用しちゃうのですが……。どうやら誰にも取られず残っていたものがあったようです。
そして海水をかなり吸っているようですが……、白くサイズも大きめ。上手くやれば服として再利用も可能でしょう。ほらアレ、古代ローマとかで有名なトガとかそういうの。それなら比較的簡単に出来そうですし、ワタクシの負担も減るでしょう。
「ですよねですよね! こ、これでアレまみれの服使わなくて済む……!!!」
「確かに。それとこのサイズなら、メイド服解体せずに済むかもしれませんわね。白一色ですから奇抜な見た目にはなるでしょうが……。」
「小鬼のアレよりマシです!!!!!」
でしょうね。んじゃそのようにしてみましょうか。
んじゃさっきの洞穴で見つけたナイフでちょっと裁断しながら、そういう“デザイン”に見えるよう頑張ってみます。けれどそこまで気を入れる必要なないでしょう。なにせ今から作る服は『その瞬間だけ保てばいい服』です。
アレですね、子供のお遊戯会の衣装みたいなやつ。当日だけ保てばいいみたいなやつですわ。
「ホッチキスとかボンドとか欲しいですわね……。」
「ほっち?」
「こっちの話です。あ、ジェーン。ワタクシ作業しますから肉の様子見ていてくださいな。」
「これですか? 私料理したこと無いんですけど……」
ん~、にしても。コレ単純作業の繰り返しですし、ちょっと暇ですわね。
ジェーン? 何か話しなさいな。あと肉は適当にひっくり返して色が変わるぐらいまで焼けばいいですわ。……というかなんで料理も出来ないんですか貴女。メイドなら少しぐらいは経験あるものでしょう。王女にあってメイドにないとか終わってません?
「終わってません~! というかアデ様の方がおかしいんですよ。なんで両方出来るんですか! 何者なんですほんと!」
「次期女王ですが?」
「……国帰れなかったら何でもないただの人では?」
ッ! い、一番気にしていることを……!!!
そ、そうなんですよね。ワタクシのことですから早々失敗することはありませんが、何事にも想定外と言うものがあります。つまりこのまま何も為せずそのまま死ぬということも……、はい。その場合、ただの一般人としてこの世から消えることになるんですよね。クーされたわけですし。
と、とりあえずそうならないように頑張らないと、ですわね。
国取りと言いますか、何をするにもお金は必要です。その後の動き方は色々あるでしょうが、今現在の賞目標は纏まった金が欲しいところさん……
「あ、そうそうアデ様。あのゴブリン良かったんですか?」
「ゴブリン?」
「えぇ。私もあまり知らないのですが、確か右耳が討伐証明部位だったはずです。冒険者ギルドでしたっけ? そこに登録した後なら換金出来たと思うのですが……。」
「は?」
……ゴブリンの死体、全部燃やしましたわよね?
も、もしかして小金の山……、全部捨てちゃった?
「多分……。」
「い、いや言いなさいよ貴女!?」
「て、てっきりご存じなのかと……!」
「いやワタクシ王女よ!? 次期女王よ!? 血生臭いのは理解してますが、庶民の生活そこまで詳しく知ってるわけないでしょうが! 想定するにも限界が……。」
いやゴブリンの耳とか、異世界でよくある奴じゃねぇですか! 色々気持ち悪かったから全部燃やしちゃった……!!!
「ま、まぁアデ様! ゴブリンなんてね、低級、低級の魔物ですから! どうせ端金ですよ! だ、大丈夫大丈夫! ここから幾らでも巻き返せますって! ほらアデ様『神童』ですし!」
「それワタクシ嫌い……」
「アッ! ……じゃ、じゃぁこれからのこと考えましょ! ほらアデ様のことだからいい感じの作戦! あるんですよね! 町見つけて服手に入れて中に入った後のこと考えましょ!」
「そ、そうですわね……」
後、後……。
ワタクシが国に帰るために必要なのは、国家レベルの兵力です。それを手に入れるには手っ取り早く国盗りするのがいいのですが、それには数多くの策が必要でしょう。勿論ワタクシの正体、王女であることを明かしてしまえばどこかの国が軍を貸し出してくれるでしょうが……。その後に待っているのは傀儡国の末路です。明かすにしても、だいぶ後の話になるでしょう。
となると……。一から領土か爵位を手に入れる必要があります。
(国を乗っ取るとしても、ただの一般市民から国王はほぼ不可能。男爵当たりの小さい所領と爵位を得た後に、だんだんと“上司”を喰っていく。)
王女がどこぞの馬の骨、他国の貴族に仕えるとかマジで駄目な状況のため、上司を喰ってうやむやにする。そして喰っていくうちに王位が近づいて行き、最終的には国盗り完了。ルートとしてはその辺りがいいでしょうね。
長期間母国を離れるわけにはいきませんので、超高速で物事を進めていく必要があるでしょうが……。
「となると、最初の目標は『貴族になる』ですか?」
「ですわね。」
「……貴族ってどうやったらなれるんです?」
国ごとに色々手段はありますが……。手っ取り早いのは2つ。
金で買うか、戦功を上げる。このどっちかですわね。
冒険者か商人にでもなってお金をため、何処かの貧乏貴族から所領と爵位を買い取ってしまう方法。もしくは傭兵団などを結成し戦場に赴き結果を残すことで、雇い主から所領を貰う方法。そのどちらかになるでしょう。
ま、どちらにしても種銭は必要ですし。最初は冒険者あたりになって魔物討伐、って感じになりますかねぇ。
「はぇ~、色々考えてるんですねぇ。」
「貴女が考えさせたのでは……? まぁいいですけど。」
頭回してたら気分も晴れましたし、許して? やることにいたしましょう。
さ。服が出来たら本格始動です。大きめの川でも探してそれを沿って移動。町見つけたら冒険者としてやっていきますわよ~!
〇アデ様のわくわくサキュバスぶっ殺し計画
全く警戒していなかったところからサキュバスが沸いてきたため、母国がどこまで汚染されているか不明。もしかしたら国の中枢丸ごと魅了されてるかもしれない。頼みにしてた軍もどこまで汚染されてるか解らないし、私兵と化していた弩弓部隊とかもちょっと怖い……
なら真っ向から叩き潰せる兵力がいりますわね! という思考から立案。
金で買い取る、もしくは傭兵団を指揮して戦功を上げる。これによって爵位、もしくは領地を入手。その後は、自身の上司(男爵なら子爵、伯爵など)をパックンちょし領地と兵力を奪い取る。そしてまた新しい上司をパックンちょして……。というのを繰り返していき、最終的に王座に就くつもり。
ちなみにどうやって上司を喰うかと言うと、『高度な柔軟性を持って臨機応変に!』とのこと。
何をするにも金が要るのでまずは稼ぎますわ~!!!
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