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追放されたので隣国乗っ取って取り返しに行く系王女  作者: サイリウム


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14/19

14:開戦前ですわ!


「いやぁ、集まってますわねぇ。」



はい、というわけで1月経過。ワタクシが国外脱出から2月経過しまして、国境線へとやって参りました。


まだ十分とは言えませんが、とりあえず見える程度にはなった兵たち。そんな彼らと一緒にやって来たのが、この城塞都市『ブべルジュ』です。石で積み上げられたデカい壁と、頑丈そうな城門。外から見るだけでもお金を賭けて整備していることが見て取れます。


まぁそれもそのはず。何せこの都市は“フランス”こと対セヌリア王国のために拵えられた一大拠点。所謂最前線です。なんとか戦が始まる前に到着することが出来たので、敵兵の姿は見えませんが……。ワタクシが参戦しようとしているドンエーニュ王国も『敵が攻めて来る』ことは解っているようで、結構な数の兵士たちが集まっているのが見えます。


ですが、数にして2000程。



(外から見える数でも、それだけ。……参戦拒否でもされましたかねぇ?)



少なくとも10000はあつめられるはずのドンエーニュ王国にしては、少なすぎる数です。まだ悲壮感と言いますか、周囲を歩いている他の兵から『死ぬんだぁ!』みたいな感情を読み取れないので援軍は来るのでしょうが、それにしても不安な数。確実に一部の貴族から『めんご! ウチ忙しくて兵出せない!』とか言われたのでしょうね。


ま、先日拝見したリーアン王国との戦。ワタクシが“落とし物”を大量に拝借した戦で実質的な敗北を決めてしまったのです。国力が劣る相手に負け、兵力も失う。そんな求心力が落ちている所に、大国が攻め込んできたとなればそうなるのも仕方のないことでしょう。



「でもそれじゃ困るんですのよねぇ。」



これじゃ外に出て決戦、というわけにはいきません。数が集まるまでは町に籠るって感じになるのでしょうが、それはちょっと困ります。うちの子達には平地での『身の守り方』しか教えてませんし、ワタクシも城壁に籠って戦うのは苦手とする所。できなくはありませんが全力を出し切ることが難しいのです。


それに、城壁での戦いは“人数制限”があります。


石で固められた壁という固い城壁は敵の攻撃から身を守ってくれますが、その城壁の上や内部など、人を配置できるスペースには限りがあります。平地のようなだだっ広い場所ではなく、建物ですからね。そこに人を配置しようとするとあまり信用できない傭兵よりも自国の兵士を置くことでしょう。


……つまり戦功を立てにくいのですわ!



「けれど人の数だけはどうしようもないんですのよねぇ。今じゃ単なる傭兵、冒険者でしかないワタクシが軍の運営に口を出せるわけありませんし。……無理言ってワタクシだけでも上に登らせてもらおうかしら? それか“落とし物”使って変装するか。この国の貴族の紋章が入った鎧まだとってありますし、……行けるか?」


「……なんかまた変なこと考えてません?」


「あらジェーン! お帰りなさいですわ~!」



そんなことを考えていると、馬と共に帰ってきた彼女。


ほら、急に無所属の団体が戦前の集団に近づいて行ったら警戒されるでしょう? ということで彼女に事前の通達をお願いしたのです。まぁ本当はワタクシが向かうつもりだったのですが、本人が強く希望されましてね? 『ついでに町の中を軽く見てくる』と言いながら走って行っちゃったのです。


もし何かあればここからあの都市“もらい受ける”しようかと思っていたのですが、問題なくて何よりですわ~!



「それで、どうなりました?」


「とにかく数が欲しいようで、すぐに受け入れてもらえました。あっちの門番とも顔合わせして来たので問題なく入れると思います。それとご指示通り雇い主は貴族ではなく『王家』に成りました。……特に異論はないんですが、なんでなんです?」


「うん? あぁ単純に状況判断ですわ。」



ジェーンには一つお願いをしてきたのですが……。ワタクシたち“傭兵団”の雇い主。その指定をお願いしていたのです。あの町自体はおそらく王家直轄だと思うのですが、その招集に合わせて様々な貴族が集まっていると思われます。そのため通常の傭兵団であれば、その中から一番金払いのいい主を探すのですが……。


ワタクシが欲しいのは、既に金から“爵位”に変化しております。


無論ある程度の貴族であれば自身の持つ爵位を分け与える、男爵領あたりを渡し“継承”することは可能ですが、おそらく今の状況でその可能性は低いでしょう。何せ今回の戦いは防衛線。『新しい土地』が手に入らない戦いなのです。



「貴族も王もそうですが、基本的に自分の土地を失うのを嫌います。そして爵位を与えるということは、それに紐づく土地を与えるということ。まぁ土地なし貴族もありますし、色々例外もあるでしょうが……。『勝利時』に一番気前が良くなるのは王家です。」


「はぇ~。」



その気前の良さが王の求心力に繋がりますし、金を持ってることだったり、功績を上げた者をしっかりと評価することを内外に示さなければいけないのが王家です。敗戦により求心力を失いつつある王家であれば、その辺りはしっかりしてくれるでしょう。


功績を上げた武力あるものを爵位によって括りつけ、子飼いのワンちゃんにしようとする意志もあるはずですが、よくある貴族のように金を払ってお終い、もしくは払わずにお終いと言ったナメたことをして来る可能性がとても低いのです。



「ま、そんな感じですわね。してジェーン、とても汗をかいている様だけど。“何か運動”してきた?」


「い、いえ? そ、そんなことないですけど? キノセイジャナイデスカ~?」


「なんで片言?」



ま、いいですわ!


この1月のシゴキでジェーンも各段に強くなりました。ワタクシと言う格上に揉まれた経験はそんじょそこらの敵に崩されることはないでしょう。血の匂いはしませんし、ダメージを受けたような姿勢のブレも無し! ならば今は見逃してあげることにいたしましょう!



「よし! じゃあ町の中に入りますわよ! そこの! 準備なさい!」


「あ、はいさアデ様。おめぇら~! 動くって!」

「へ~い!」「りょです~」「仕事だべ」

「腹へったなぁ」「わかるだ」「あそこの飯うまいんか?」


「町の中で用意してあげるから静かになさい! 入る時はキリっと行きますわよ! ほらお返事!!!」



「「「はーい!!!!!」」」



「……子供の遠足ですかコレ???」








◇◆◇◆◇







とまぁそんな感じで入場し、町の中でお世話になることになったんですが……。



「めっちゃ敵来てる。おもろ。」


「どこがですか!?」



若干の不安が混じった声を上げるジェーン。まぁそれもそのはず。


なんとワタクシたちがこの地にやって来てから数時間後。地平線の先からぞろぞろと敵さんが到着しちゃったのです。しかも大体20000くらいの大部隊、この城塞都市にいる約10倍の数がこの町に向かって動いているのが目視できます。……めっちゃ危なかったですわね。もう少し遅れていたら計画が全部パァでしたわ。すっごいギリギリ。


いやはや。にしても敵さん、気合入ってますねぇ。



「頑張ればもっと絞り出せますが、お味方であるドンエーニュ王国が出せるのは大体10000、それを真正面でぶつかっても倒し切れるだけの倍の数を用意とかヤバいですわ。それだけの食料とか装備とか地道に貯めてたんでしょうねぇ……。」



確かにワタクシも数の暴力の肯定派ですが、我が祖国の立地上大量の兵を動かせないことから『量より質』。そして『数を上回るだけの技術』を重要視するタイプでした。


しかしながらこの世界の“フランス”、セヌリア王国を統治する王は“数”を重要視したのでしょう。豊かな土地を持っているが故の、数の暴力。単純だけど紛れもない脅威。そしてそんな莫大な数を一つに纏め動かせるだけの求心力。とっても感心、いずれワタクシが打ち倒すべき敵としてこれ以上ない好敵手ですわね!



「あ、アデ様ぁ。これ大丈夫だか? 怖いだぁ。」


「うんうん解るベルカちゃん。アデ様も怖い。」


「何言ってんのこの人!? というかいつの間に仲良くッ!?!?」



え、ベルカちゃん? ワタクシが雇った兵の一人ですけど? というかワタクシみんなと仲良しですわよ?


確かにこの身は彼らに地獄と呼べるような訓練を施しました。死ぬより怖い目に合わせましたし、泣き叫んでべそかいていても無視することも。しかしながらソレは彼らを生き残させるためであり、この苦労は後に繋がるために必須のもの。言葉にしてはいませんでしたが、それをなんとなく彼らも理解してくれていたのでしょう。


あ、あと普通にめっちゃ世話焼きましたからね。ジェーンが飯作れないせいで三食全部ワタクシが作って差し上げましたし、前世の記憶をフル活用して餌付けしました。洗濯とかは流石に自分でさせましたが、服のもつれとかを直す裁縫が出来たのもワタクシだけですし、彼らの“家”を提供しているのもワタクシです。


普段厳しくしてる分、飴と鞭。こういう時はやさしくしてやらねばと甘やかしましたので……。



「実質ママですわね!」


「……でもアデ様? そう言ったランの奴ひっぱたいてなかっただか?」


「産んでない子に母親使いされるの怖くない?」


「……確かに!」


「ま、マジで仲良くなってるよコイツ……! 何処からどう見ても悪魔か魔王なのにッ!!!」


「ほ、ほら。ジェーン様ずっとアデ様にいじめられてただべ? それでずっと倒れてたから知らないのも無理ないと思うべ。……アデ様、ジェーン様可哀想だべからもっと優しくできなぃのですか?」



無理ですわ! だってコイツめっちゃ弄りがい……、げふんげふん! 才能あるんですもの!


最近はワタクシの全力パンチ1発ぐらいなら回避できるようになってきましたし、ほんとに磨けば光る原石ですわ! ちょっと暗殺というか、そういうダークな感じの戦い方が体になじんでるせいで少々癖がありますけど、正面切って殺し切れる技を覚えればかなり良い感じになると思うんですの!



「はぇ~、さすがジェーン様だべ。ね、ねぇねぇアデ様! あたしは……」


「ベルカちゃんは無理ですわよ? 石ころよりも才能無いですし。」


「ひ、酷いべ……!」


「相変わらず人の心ナチュラルに抉ってるよこの化け物……。」



さ~って、雑談はコレぐらいにして。ちょっと気合入れていきましょうか!


おそらくお味方の軍、その上層部たちからすれば『城壁全てに子飼いの兵士を入れたい』と考えてたのでしょうが、今回の敵は数が多すぎます。部隊長らしき方々が声を張り上げて味方の心を保とうとしている様ですが、10倍という差に敗戦ムードが起き始めています。このままでは崩壊し、防衛戦すら難しくなるほどに。


故に士気が無い子飼いよりも、やる気のある新入りを。


ということで城壁の一角を間借りすることが出来たワタクシは、ちょうど敵が真正面に位置する場所に陣取っています。ここからならばよく相手が見えますし、狙いやすい。とてもいい場所を頂けたと言えます。



(そして幸いなことに……、あちらはまだ大砲を導入していない。昔ながらの破城槌をお使いのようです。)



まだ技術発展の乏しい時代であるためそこまで飛距離の無い大砲ではありますが、流石にアレを喰らうとワタクシでも結構痛いです。ベルカちゃんどころかジェーンですらも吹き飛んでしまう事でしょう。それが無いというのは非常に朗報。一騎当千の騎士や将は話が別ですが、小銃すらないこの環境に置いてワタクシが『ジャイアントキリングされる』状況は皆無となりました。


遠距離は話に成らず、近づかれたとしても“城壁”という壁がある。


以前のクーデターの際は“環境”を整えることが出来ず逃げることしか出来ませんでしたが……、今は違う。


口にすることは叶いませんが、この場にいるのはランカステル家の至宝にしてエンラード王国の次期女王。



アデライード・マティルド・ランカステル。



母から『覇王の器』と称されたこの力、存分に味わって頂きましょうっ!





「と言うわけで人間固定砲台ですわ~~~!!!!!!」









〇ベルカちゃん


ドンエーニュ王国西部のとある村で売られた子、17歳。


両親の愛を十分に受けて育ったが、母が病で他界。その後父も戦死し、孤児となる。彼女の両親が担当している土地はあったのだが、子供に管理できるものではなかったので村長預かりに。その後成長するまで村長宅で小間使いをし続けるが、生来の不器用さゆえか数多くの失敗を重ねてしまう。


そばかすが多く丸形というこの世界におけるあまりよろしくない見た目だったため嫁の貰い手も見つからず、不器用なことも重なり村の中ではかなり浮いた存在になっていた。本人は口を閉ざしているが、いじめのようなものもあったのだろう。そんな折、村にやってきたアデ様に『小間使いとしての仕事も満足に出来ないため』という理由で売られることとなってしまった。この世界ではよくある事である。


なおアデ様は前世の記憶がありため、ベルカの見た目を「これはこれで! というかタイプの方だったらドストライクでしょうね!」と評価している。村でのように彼女の見た目をとやかく言うこともないし意味不明なほどに厳しいが面倒見の良いことから、アデ様に幼き頃の母の面影を重ねている所がある。


武人としての際はないが、力は結構ある方なので物を運ぶのが得意。アデ様のことをかなり身分の高い人であることは何となく理解しているが、余りにも化け物なので『地獄とかのお姫様なんだべかなぁ?』と思っている。









誤字報告大変ありがとうございます。

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