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追放されたので隣国乗っ取って取り返しに行く系王女  作者: サイリウム


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11/15

11:売り上げですわ!



というわけでまぁブチ切れながら町の方へと向かったジェーンを見送ったわけですが……。



(コイツ凄いですわね。)


「えぇえぇ! その節はどうもどうも大変申し訳なく……! そのお詫びとしましてね? ね? お安くさせて頂きますからね? んもうお好きなだけ見て頂ければと! もちろん沢山買って頂ければその分サービスさせて頂きますから、ウヘへへ!」



彼女が連れて来たのは、おそらく町の責任者なのだろう人間とその他。兵士と商人の寄せ集めって感じ。


ですがまぁ一番偉そうなのが、ジェーンが高速でもみ手をにぎにぎしながら腰低く媚びを売る恰幅の良い男性。お話の内容から町長さん的ポジションみたいですわね。ですがまぁ……、ジェーンが若干胸元を開けてるせいで釘付けですわね。見えるか見えないかのちょうどいい塩梅を狙っててやべぇですわ。


しかも髪型や服装どころか、声の高さまで若干違うっていう徹底ぶり。馬乗ってる最中に仕上げたんでしょうけど……。



(完全に別人。“女”使える上に媚びまで売れるヤバめの商人さんですわねぇ。)



いやはや、ほんと凄いですわねこの子。


つい先日までは単なるメイドだったのに、此方に来てからは“友人”としての動きを確立。人目のある所はずっとそれを通していたと思えば、今日新たに“商人”の動きまでやり始めるとは。まだ確定ではありませんが、我が国の暗部は優秀なのですねぇ。ワタクシが女王になったらうんと扱き使ってやろ。


……というかワタクシもバカではないのでここまで見せたら“勘付く”ってのはジェーンも解ってるんでしょうけど、何で教えてくれないんでしょうね?



(何らかの契約、もしくは魔法が関係している……?)



ワタクシの知る限り、この世に存在する魔法と言うのはかなり単純なものです。パワーを上げたり、手から炎を出したり。そこから更に火力を上げる方法などはワタクシも抑えていますが、『何らかの契約を結ぶことで効力が増加する』みたいなややこしいのは存在しなかった気がします。


無論ワタクシが知らないだけの可能性もありますし、貴族以外の庶民の皆様が信じてる俗説。『魔法と言うものは何でもあり』という話が事実な可能性もあります。……ま、今できることはないですし、急いで知る必要があるとも思えません。彼女が話していないということは、私が知る必要のない事。そう考え話してくれるまで待つ以外の選択肢はないですね。



(っと、笑顔笑顔。喰らえ、サンシャインスマイルッ!!!)



なんてふざけながら、周囲にぺかー! って感じの笑みを振舞っておきます。


一応ワタクシも王族ですのでこの男性、恰幅町長さんにご挨拶でも決めようかと思っていたのですが、ジェーンが戻ってきた瞬間に自身に伝えた指示はただ一つ。『しゃべるな』でした。んで何事だとジェーンの話に耳を傾けていたのですが……。



「それで……、コレが?」


「えぇえぇ! ウチ自慢の従業員ですぅ! 力も顔もありますもんで扱き使ってるんです。ただちょっと頭の出来がわるぅございましてね? 何もしゃべれないもんですからとりあえず笑う事だけ躾けたんです。ほら! やってみ!」


「(ぺかー!!!)」



って感じなんです。


……こいつ自分の主人を何だと思ってるんでしょうね? いや笑いますけども。オーダー通り何も難しいこと考えてない無垢で屈託のない太陽みたいな笑み浮かべますけども。お前の思ってるより100倍良い笑顔出来ますけども。なんでワタクシそんなお馬鹿みたいに扱われなければならないので……???


ま、まぁワタクシもね? この“お客様”のお財布から中身を可能な限り拝借できればそれでいいのです。実質元手は0ですし、売れば売る程丸儲け。というわけでジェーン! 毟り取って差し上げるのですわ~!!! ぺかー!!!



「……ふむ、確かにかなりの量だ。しかし先日この辺りで戦があったのは貴様も知っているだろう?」


「えぇえぇ、確かに確かに。大変なことがあったようで。ですがまぁ私非常に善良な商人でございまして。お国の為に何かできることはないかと思った次第です。お安くさせて頂くのもその一環と考えて頂ければ。げへへ……!」



すっごい視線を胸元に吸引されながらも、ちょっと偉そうにいう町長さん。まぁジェーンって色々アレですけどお顔は結構いい方ですからねぇ。それがちらちら見せてくるのなら不可抗力ってやつなのでしょう。……ただまぁワタクシ彼女の性格大体知ってるので、内心『コイツメッチャ殺したい』って思ってるのは丸わかりです。


普段ならワタクシが代わりに拳を叩き込んで差し上げるのですが、今のワタクシは言葉すら喋れないお馬鹿。ジェーンに言われたことだけしておくとしましょう。ぺかー!!!


……あ、でも、これは処理した方がいいですわよね。



「(ぺかー!!!)」


「ぉごッ!?」


「あ、そこの兵士様? ソイツ、私が許可した方以外が品物に触ろうとすると“処理”するように躾けてありますんで……。申し訳ないですがご容赦頂けると。」


「は、何言ってッ!」



人が多く、また物も多い。それに対しこちらが2名しかいないことを“勝機”と取ってしまったのでしょう。ワタクシが拾ってきた品物の一つをくすねようとした兵士の腕を、踏みつぶします。


それに対しジェーンが説明を行いますが、兵士様は逆キレ。こちらに責任を擦り付けようとしてきますが……。


その顔を覗き込み、もう一度ぺかー!!!と笑って差し上げます。


それ以上何かしたら、解るよなテメェ?



「ひ、ひぃ!?」


「(コクコク、……ぺかー!!!)」



うん、解って下さったようで何よりですね!



「……どうやらこの町に相応しくない鼠が入り込んでいたようだ。後で処分しておくとしよう。」


「それはそれは! ありがたいことです……! それで、コレぐらいで如何でしょう?」


「流石に数がな。これでどうだ? どうやら“前任者の手入れ”が悪い品も多い様に見受けられる。そこを考慮しているのかな?」


「勿論ですとも。しかし溶かせば何にでも使えるのは御承知でしょう? この辺りはあまり鉄の手に入らない地域とお聞きしますし、そこをご理解いただければ……。」






◇◆◇◆◇





「あぁぁぁぁぁ……。くっそ疲れたッ!!!!!」


「お疲れ様ですわ~。」



そう言いながら地面にぶっ倒れるジェーンの服を畳んであげます。


取引が終わった後は、逃げるようにその場から退散。あちらから観測できない位置まで逃げた後にようやく一息付けた感じですからねぇ。さっきまで来ていた“商人”の服を脱ぎ捨てるのも致し方ないという奴でしょう。



「というかアデ様ッ! なんで町の中は行っちゃダメなんですかッ! ベッド! ベッドで寝たいッ! 野宿やだやだやだ!!!」


「いやでも内に入ってたら喰われてましたでしょう、性的に。」


「そうだったッ……!!!」



顔を両手で覆い嘆く彼女。


実はと言いますか、国外逃亡決めてから約13日間ずっとフルで働き続けているんですのよね。えぇ、町の中で一度も休んでないんですの。つまりずっと野宿なんです。初日辺りは生活基盤整えるためにずっと忙しかったですし、最初の町に付いた後は“戦争”に間に合うよう超特急で移動する必要がありました。……まぁ途中休めるタイミングはありましたが、急いだほうがいいかなって。


そして先ほどの町も、明らかに町長さんがジェーンを狙っていたため色々と危険。そもそも“殺してでも奪い取る”される可能性があったため、逃げる以外の選択肢はございませんでした。


……まぁ確かにお布団が恋しくなる気持ちは解りますが、春ですし暖かい方でしょう? まだまだ野宿でも何とかなりますわ!



「それはアデ様だけですぅッ!!!」


「はいはい、じゃあ次入る町では久しぶりにゆっくりしましょうか。」


「ほんとですかッ!? う、嘘だったら承知しませんよ! 今度こそほんとに見捨てて逃げますからねッ!」



はいはい、解りましたって。ここまでかなり頑張って下さりましたし、流石に何の報酬無しも無しで扱き使うのに罪悪感を覚えていた所。しっかり休ませて上げることにしましょう。……そう言えばあの反逆者どもを断頭台に上げた後、この子の働きに報いねばなりませんね。何あげましょうか。爵位? 土地? あぁそうだ。ワタクシを皇帝化して、ちいさめの王国上げるってのもアリですわよね。


ジェーン、どれがいい?



「いらない、休みくれ」


「即答ですわね。……さて、茶番もこれまでにして。どれだけ稼げたのか教えて頂けますか?」


「全然茶番じゃないんですけど……。畏まりました。」



今回ワタクシたちが剥ぎ取って持ち込んだ品は3000人分の武器防具です。しかしながらそのすべてが完品というわけではなく……、そのまま流用できそうなものは500程。それ以外な何かしらの穴だったり凹みだったりがあるモノでした。


無論修理すれば元通り使える品になるでしょうが、その分コストがかさむのも事実。それだけ買い取り価格も下がってしまう事でしょう。



「なので大半は武器防具としてでなく、屑鉄としての販売になってしまいました。比較的まだ形を保っていたものは“装備品”として売りつけることが出来ましたが、あまり値段はよくありません。それと……」


「あちらの許容量ですか?」


「えぇ。どうやらあまり余裕が無かったらしく。」



今回お邪魔した都市は、ドンエーニュ王国。つまりこの前Aとしていた国です。攻め込まれている方ですね。


彼らとしても戦場が近かったことから『敵が攻めてくるかもしれない』という恐怖に追われているわけです。その分武器防具、そのもととなる鉄は欲しかったのでしょうが……。そもそも“町”というのは、どこかの貴族や王族の“持ち物”です。


戦争が起これば人を集め、物資を集める。その方法は決して取引によるものではありません。人も物も言ってしまえば領主の持ち物であるため、貴族たちは自由に動かすことが出来ます。戦争となれば数を集めるため、補給を整えるために多数の徴用を行ってもおかしなことではないでしょう。そしてその数は、前線に近ければ近いほど大きくなります。



「なにせ輸送コストがかさみますものねぇ。だったら近場で補給すべきですわ。」


「はい、そのため確保できた硬貨は金貨3枚ほど。残りは物々交換で済ませました。捌けたもの1000程で、鉄屑1500、完品500の在庫が残ってしまいました。……まぁここで並んでいますのでご理解して頂いているとは思いますが。」



そう言いながらワタクシたちが視線を向けるのは、何両も連なったいくつもの馬車たち。そしてそれを引くお馬さんたちです。


町長さんたちが選択したのは、まだ使えそうな屑鉄たちを修理し再利用するという選択。お金が無くて完品を中途半端にそろえるよりは、屑鉄を買って武器に転用。余ったら町の資材にしてしまおうって魂胆なのでしょう。ま、何かと鉄は入用ですからね。なんら間違った選択ではありません。


けれどまぁそれでもお支払いには足りなかったらしく……。



「かなりぼろいですが馬車5台と、荷馬ですらちょっときつそうな老馬7頭。それと大量の備蓄食料との交換。金貨も3枚分あるにはありますが、銀貨や銅貨の寄せ集め。無駄に重い奴です。」


「ちょっと損した感じかしら?」


「相場を考えればその通りかと。しかしあの場ですぐに数をさばけたと考えれば、釣り合いは取れると思います。」



ま、そんな感じですわね。


まぁこの屑鉄はやろうと思えばどこの町でも売りさばける品です。分けておいてあるどこかの貴族の品、先祖伝来っぽい品や紋章が刻まれている奴は分けていますが、それ以外はいつでも換金可能。運ぶのにワタクシかお馬さんが酷使される以外は問題ない感じですわ。



「お気に召して頂いて何より、です。……んで? どうするんですかこれから。最初の目標だったお金稼ぎはこれで終わりですよね?」


「えぇ。」



銅貨が日本円換算で100円ほど、百進法で銀、金へと移り変わっていくため、金貨3枚は300万に値します。無論文化や文明の発展具合などに差があるため正確な数値ではありませんが、現代日本でもこの世界でも結構な額。


新しい“何か”を始めるのにはちょうどいい金額でしょう。


そしてちょうどいいことに、現在この大陸では“戦”が起きています。先に観戦したドンエーニュ王国とリーアン王国の戦はそろそろ下火に向かいそうですが、どちらかが落ちれば叩きに行く国はあるはずです。この世は弱肉強食、弱い者を食い散らかすのは人の理。戦はまだまだ続くでしょう。



(成り上がりには、これ以上ないタイミング。ふふっ、感謝など欠片もしたくありませんが、このタイミングで“クーデター”してくれたことには礼を言わねばなりませんね。)



んじゃ、気合を入れて……。



「まずは“貴族”になりますわよッ!」





〇“殺してでも奪い取る”


ロ〇ンシングサガのア〇スソード……、ではなくこの世界ではよくある現象。基本的に倫理があまり機能していないため、『欲しいものは奪った方が早くね?』と考える者が多い。今回の場合、アデ様たちが町の中で休んだ瞬間、『今ならさっき払った代金だけじゃなく、買えなかった屑鉄全部自分のモノにできるのでは……?』と町長あたりが考え実行する可能性があった。食事の場に招き毒を飲ませたり、寝込みを襲ったりと圧倒的な強者であろうと倒す方法はいくらでもあるのだ。


……まぁ暗殺に慣れているアデ様に通用するわけがないので、実際にコトを起こしてしまえば町がその日のうちに消滅する可能性があった。


自分への攻撃はまぁ許容して差し上げますけど、ジェーンは現状ただ一人の私の民にして付き従ってくれている臣下ですわ! 手を出すってことは……、解ってますわよね???







誤字報告大変ありがとうございます。

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